★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(21)

2011年11月06日 | 短編小説「彗星の時」
 兵士たちは、なにかおかしいと思いながらも、目の前を逃げていく獲物を逃がしてはなるまいと本能的に追っていく。
 影の薄くなったケインたち本物は、兵士のいなくないった門をすばやく通り抜けまんまと町内に入り込んだ。
 シアークの町は、近隣の町の中ではかなり大きい部類に入る。オアシス自体が大きいことと、大きな街道が交差している交通の要所であることから交易の町としても栄えていた。
 太陽が照らし始めた街は、伸びでもするかのように建物の影を長く地面に映し出し、徐々に目覚めていく。
 三人は、ヤーコンが先頭となり足早に大きい通りの端を進んだ。通りの両側には大きな商家が並んでいる。ヤーコンは、周囲に気を配ってから、人が一人ギリギリ通れるような建物の間の路地に入り込んだ。
 しばらく行くと、路地に面した建物の扉が開き中から一人の男が三人を見つめていた。ヤーコンは、その男に相槌を打つと、後に続く二人に目配せし扉の中に入っていった。