★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男(37)

2010年05月19日 | 短編小説「義腕の男」
 俺の疑問を察知したのか准将が話を続けた。
「私は、わが連邦国軍の准将を務めているが、『バランサー』という組織のメンバーでもある。ザビ国のスパイではない」
「バランサー?」
「バランサーとは超国家平和組織で、普段は表には出てこない。世界の力の均衡、すなわち平和のバランスが崩れかかった時、それを守るために発動する闇組織として世界各国に存在している。中尉には悪かったが、今回その一翼を担って活動してもらった。」
 すっかり騙されていた訳だ。
「中尉には今後もバランサーの一員となって活動してもらいたいのだがどうだ」
「・・・もし断ったら?」
「残念ながら、今回のミッション中に死亡、ということになる」
 なるほど、有無を言わさずということか。
「ひとつ質問していいですか」
 右腕が係わっていることに小さな疑問を感じた。
「俺が右腕を受け取った後、不具合が解消されていないのでジャックに点検してもらっている。ジャックがマイクロチップに気が付かないはずがないのだが、本当にこの腕にチップが入っているのですか」
 准将はちょっと表情を曇らせながら回答した。
「ジャックには、バランサーの活動を説明し新たに協力者になってもらった。ずいぶん悩んだようだが結果的にチップは君の腕の中にある」
 なるほど、あの時のジャックの徹夜明けのような顔は、そのせいだったのか。