鏡花水月紀。

日々の言の葉、よしなしごと。

京ことばで語る源氏物語、良かったです(^^)

2016-12-28 | 日々のこと。
山下智子さんをお招きしての「京ことばで語る源氏物語」。
古くからの友人というより先輩のマスノさんからお声掛け頂き、
金沢、能登の2会場の運営をお手伝いさせていただきました。

100年前の京ことばで訳された源氏物語。
前段で物語のあらすじ、時代背景、風習などのお話。
そして語りに入る前に三昧琴というお皿上の楽器が静かに鳴らされ、
澄んだ響きが私たちを語りの世界へいざなっていきます。
錦の布に包まれた台本を掲げると、そこに先ほどの音色が光となって降りそそぎ
物語の登場人物が訪れたかのよう。
訪れ=音連れ。
それから語られた物語は、生き生きと目の前に物語の光景が浮かび上がってくるのでした。

語りのあいだのようすはありませんが、
語りの会のあと金沢会場で味わったお菓子とフライヤーで雰囲気をご想像ください(^^)






能登の語りの会場は「じんのびーとの家」です。「じんのび」は能登の方言でゆっくり、ゆったりという意味。
語りの会を企画したマスノさんが福島原発事故による子供たちの健康を憂い保養キャンプ*を考え、
その活動に共感を覚えたGさんが提供くださったお宅なのです。
 *ふくしま・かなざわキッズ交流キャンプ

大工さんだった先代が建てられた家は、能登の風雪に耐えるようがっしりとした造り。
柱や長押などには拭き漆もかけられ、まだまだ現役で活躍してくれそうな広くて立派なお宅でした。



能登の語りの会は二部構成。
第一部は金沢同様に山下さんの語りの会で、「若紫の巻」が語られました。
金沢語り会の「夕顔の巻」では、夕顔の死や鳥辺野でのさまざまな骸を見た源氏はすっかり穢れ=気枯れにふれ体調を崩します。若紫の巻では、体力がやや回復したのち、北山にあるお寺へ出かけ、そこで源氏は若紫と出会います。
山下さんの解説によると、北山で見かけた鹿や溌剌とした幼い若紫は自然や野生の象徴とのこと。
それを聞いて、なるほど~!夕顔の巻で気枯れた源氏は、若紫の巻で自然にふれ気を満たしたのかと合点がいきました。
源氏物語、とても面白い!!!

一部のあとは谷口製菓さんの「おだまき」で一服。
かつて中能登地方では苧麻栽培がさかんで近江に出荷されたり、それを用いて能登上布が織られていました。その苧麻を紡いで巻いたようすを模してある餅菓子がおだまきです。こし餡、ゆず餡、くるみ餡、緑茶風味、イチジク餡などなど。とても美味しかったです。

場が和んだあと、第二部はお聞きしていたかったのですが、途中で帰宅されるおばあちゃま*をご自宅近くまで送って行ったり、座談会後の夕食の準備に台所に立ったりで、殆どお聴きすることができませんでしたが、ちらちらとお聴きしたことを以下に。

パネラーのお一人高市さんは、今から20年ほど前に取材でお伺いしたことがありました。
能登でブルーベリーの栽培に最初に着手したのは高市さん。公務員を止め、「生業」をこの地に作りたいと思い自営業者に。国のパイロット事業で栗を植えることになった際、山野を削り栄養を取り払った土地で行ったために事業は失敗、それで荒れ地でもできる作物ということでブルーベリーを植えたのだそうです。
世界農業遺産なんてもらっても躍起になっているのは行政だけで何も変わっていないとか。今はまたヤーコンを栽培し新商品を販売。昔にお会いした時以上に熱い情熱をお持ちでした。

遠見さんと直接お会いするのは初めてでしたが、石巻の茅葺き屋根工事(有)熊谷産業さんから3.11のおりに石川県に一時避難される際にお世話をいただいたとお聞きしていました。北上川のヨシを賞状に漉く指導を毎年行っていたご縁だそう。そんなお話をお帰りに少しだけさせていただきました。







*余談
座談会が盛り上がって予定時間を超えてしまい、途中で帰りますというおばあちゃまお一人。
時計は5時を少し過ぎたころでしたが冬至前なうえ、雨が時おり降っていたため既に外は真っ暗闇でした。
じんのびーとの家は高台に建っていて、街灯のない坂道を下りていかねば県道にでることができません。
「足が都合悪いし傘をついてきたんや。こんなに遅くなるなら懐中電灯もってくればよかった」とおっしゃられるので、
お送りすることにしました。

おうちは近いのですかとお訊きすると、道の向いとおっしゃられる。
向いなら歩いていけばいいかと気軽に思い、腕を組んで二人並んで歩きながら坂道をおりていきました。
県道まででたところで、おうちは?ともう一度お訊きすると、あそこやと指を差される。
目をこらすと直線で300メートルほど離れた杉林の丘陵を背に寄り添う民家が数軒。
確かに向いだけど・・・思っていた以上の距離でした。

そして家はまっすぐ先に確かに見えるけれども、県道添いに川が流れ、
おばあちゃまの家にいくには、300メートルほど県道を歩いた先にある橋を渡らないとたどり付けないのでした。
県道も街灯がなく、暗い夜道を車がびゅんびゅんスピードを出して走り去ります。
「車も危ないけど川に浮かんように歩いていかんなん」とおばあちゃまがいうので(苦笑
さらにご一緒することにしました。

問わず語りでお話を聞いていると、現在は一人暮らし。冬になると関東で暮らすお子さんのお宅へいかれるのだそう。
「今年もクリスマスのあたりに行くんや。去年のお餅もまだ冷蔵庫にあるわ」
「私らは年金は少ないけど、野菜やらなんやら自分で食べる分は作れるから暮らしていけるの」等。

おばあちゃんを送っているつもりが「あんた、もういいから帰りなさい、ちゃんと帰られるか?」って心配されて(笑)
ちょっと良い時間をもらいました。

またじんのびーとの家に行きたいなあ。
そしておばあちゃまにもまた会いたいなあ。