★鎌倉へ合歓の一樹の花盛り 正子
合歓の木は随所に見られますが、普段はほとんど目につかず、花が咲いて初めて「ああこんなところに合歓が!」と嬉しくなることが多いかと思います。鎌倉へ行かれるご用事の道すがら、一樹の花盛りを見つけられた作者の気持ちが読者にも浮き浮きと伝わってきます。(河野啓一)
○今日の俳句
紫陽花の軒端に雨水たっぷりと/河野啓一
紫陽花が咲く軒端に雨水がたっぷりと溜まっている。たっぷり溜まった雨水がゆたかで涼しい。(高橋正子)
○月見草(待宵草)
[待宵草/横浜日吉本町]
★月見草灯よりも白し蛾をさそふ/竹下しづの女
★待宵草の黄花を空へくっきりと/高橋信之
★月見草の大きな花にさよならを/高橋正子
「月見草」と「待宵草」は、本来違うものであるが、俳句では、いずれも季語「月見草」として詠まれてきた。最近の歳時記では、季語「月見草」の傍題に「待宵草」を取り上げている。「月見草」は、3、4歳上の上級生からその名をよく聞いた。上級生は小学校の高学年から中学1,2年生だったから、竹下夢二のような少女らしいものに憧れる年齢だったのだろうと今思う。しかし、「待宵草」や「宵待草」は上級生の口からは聞かなかったと思う。そして上級生から「月見草」と教えてもらったものは、「大待宵草」ではなかったかと思う。もともとの月見草が白い花であるということは、調べて知った。植物学上の名前と、俳句の季語とは同じではない。俳句の季語にはこうしたものが結構ある。竹下夢二の「宵待草」は、「待宵草」のこと。
マツヨイグサ属には黄色以外の白、紫、ピンク、赤といった花を咲かせる種もある。標準和名では、黄花を咲かせる系統は「マツヨイグサ」(待宵草)、白花を咲かせる系統は「ツキミソウ」(月見草)と呼び、赤花を咲かせる系統は「ユウゲショウ」(夕化粧)などと呼んで区別しているが、一般にはあまり浸透しておらず、黄花系統種もよくツキミソウと呼ばれる。しかし黄花以外の系統がマツヨイグサの名で呼ばれることはまずない。なお黄花以外の種は園芸植物として栽培されているものが多い。開花時間帯についても、ヒルザキツキミソウなどはその名のとおり昼間に咲く。英語では夜咲き種は evening primerose、昼咲き種を sundrops と呼び区別している。黄花系統種のうち、マツヨイグサ O. stricta やコマツヨイグサは、花が萎むと赤く変色するが、オオマツヨイグサやメマツヨイグサはそれほど赤くはならないので、こういった点でも種を区別できる。
ツキミソウ(月見草、Oenothera tetraptera、つきみぐさ)は、アカバナ科マツヨイグサ属に属する多年草である。メキシコ原産で江戸時代に鑑賞用として渡来した。花期は6 - 9月ごろで、花は夕方の咲き始めは白色であるが、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色となる。同属種であるオオマツヨイグサ、マツヨイグサ、メマツヨイグサなどのことを「月見草」と呼ぶこともある。また、「月見草油」というサプリメントが流通しているが、ほとんどの場合、本種ではなくマツヨイグサかメマツヨイグサ由来である。
マツヨイグサ(待宵草)は、アカバナ科マツヨイグサ属の一年生または多年生草本植物で、この語は主にマツヨイグサ属に含まれる植物について種を特定しないで呼ぶ場合に使用される。標準和名マツヨイグサは学名 Oenothera odorata で呼ばれる種を指すが、こうした用法では滅多に使用されない。マツヨイグサ属にはおよそ125の種が含まれており、14節が構成される。どの種も南北アメリカ大陸原産であり他地域には産しない。日本も例外ではなく、野生のものは帰化植物か、逸出した園芸植物のいずれかである。原産地では種により海辺や平野から高山に至るまで幅広く分布するが、パイオニア植物なので、自然状態では平地では河原、砂浜や砂漠、山ではガレ場や、山火事の跡などの荒地や痩せ地に、人為的にかく乱された環境下では鉄道路線沿いや路肩、耕作放棄された畑や休耕田のような場所に生え、他の植物が成長してくると姿を消す。日本では造成中の土地や未舗装の駐車場でもよく見かける。本属植物は、メキシコ北東部からアメリカ合衆国のテキサス州にかけての地域が発祥の地と考えられている。
種としてのマツヨイグサ O. stricta も、原産地はチリやアルゼンチンといった南米で、嘉永年間(1848年〜1853年)に日本にもたらされ、当初観賞用として植えられていたものが逸出し、昭和30年代に同属のオオマツヨイグサ O. erythrosepala とともに空き地などに大群落を形成した。しかし近年はこれも同属のメマツヨイグサ O. biennis に押され、姿を見る機会は減った。草丈は種により異なり、チャボツキミソウのような高山植物では高さ10cm程度、低地産の O. stubbei では3mにまで成長する。葉は開花軸に対して螺旋形に付き、鋸歯を持つか、または深く裂ける(羽状中裂)。花は多くの種において黄色い四弁花で、どの種も雌しべの先端が4つに割れる特徴を有する。一日花であり、多くの種が夕刻に開花し夜間咲きつづけ、翌朝には萎む。これが「月見草」や「待宵草」の名の由来である。
◇生活する花たち「紅かんぞう・オカトラノイ・立葵」(横浜・四季の森公園)
合歓の木は随所に見られますが、普段はほとんど目につかず、花が咲いて初めて「ああこんなところに合歓が!」と嬉しくなることが多いかと思います。鎌倉へ行かれるご用事の道すがら、一樹の花盛りを見つけられた作者の気持ちが読者にも浮き浮きと伝わってきます。(河野啓一)
○今日の俳句
紫陽花の軒端に雨水たっぷりと/河野啓一
紫陽花が咲く軒端に雨水がたっぷりと溜まっている。たっぷり溜まった雨水がゆたかで涼しい。(高橋正子)
○月見草(待宵草)
[待宵草/横浜日吉本町]
★月見草灯よりも白し蛾をさそふ/竹下しづの女
★待宵草の黄花を空へくっきりと/高橋信之
★月見草の大きな花にさよならを/高橋正子
「月見草」と「待宵草」は、本来違うものであるが、俳句では、いずれも季語「月見草」として詠まれてきた。最近の歳時記では、季語「月見草」の傍題に「待宵草」を取り上げている。「月見草」は、3、4歳上の上級生からその名をよく聞いた。上級生は小学校の高学年から中学1,2年生だったから、竹下夢二のような少女らしいものに憧れる年齢だったのだろうと今思う。しかし、「待宵草」や「宵待草」は上級生の口からは聞かなかったと思う。そして上級生から「月見草」と教えてもらったものは、「大待宵草」ではなかったかと思う。もともとの月見草が白い花であるということは、調べて知った。植物学上の名前と、俳句の季語とは同じではない。俳句の季語にはこうしたものが結構ある。竹下夢二の「宵待草」は、「待宵草」のこと。
マツヨイグサ属には黄色以外の白、紫、ピンク、赤といった花を咲かせる種もある。標準和名では、黄花を咲かせる系統は「マツヨイグサ」(待宵草)、白花を咲かせる系統は「ツキミソウ」(月見草)と呼び、赤花を咲かせる系統は「ユウゲショウ」(夕化粧)などと呼んで区別しているが、一般にはあまり浸透しておらず、黄花系統種もよくツキミソウと呼ばれる。しかし黄花以外の系統がマツヨイグサの名で呼ばれることはまずない。なお黄花以外の種は園芸植物として栽培されているものが多い。開花時間帯についても、ヒルザキツキミソウなどはその名のとおり昼間に咲く。英語では夜咲き種は evening primerose、昼咲き種を sundrops と呼び区別している。黄花系統種のうち、マツヨイグサ O. stricta やコマツヨイグサは、花が萎むと赤く変色するが、オオマツヨイグサやメマツヨイグサはそれほど赤くはならないので、こういった点でも種を区別できる。
ツキミソウ(月見草、Oenothera tetraptera、つきみぐさ)は、アカバナ科マツヨイグサ属に属する多年草である。メキシコ原産で江戸時代に鑑賞用として渡来した。花期は6 - 9月ごろで、花は夕方の咲き始めは白色であるが、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色となる。同属種であるオオマツヨイグサ、マツヨイグサ、メマツヨイグサなどのことを「月見草」と呼ぶこともある。また、「月見草油」というサプリメントが流通しているが、ほとんどの場合、本種ではなくマツヨイグサかメマツヨイグサ由来である。
マツヨイグサ(待宵草)は、アカバナ科マツヨイグサ属の一年生または多年生草本植物で、この語は主にマツヨイグサ属に含まれる植物について種を特定しないで呼ぶ場合に使用される。標準和名マツヨイグサは学名 Oenothera odorata で呼ばれる種を指すが、こうした用法では滅多に使用されない。マツヨイグサ属にはおよそ125の種が含まれており、14節が構成される。どの種も南北アメリカ大陸原産であり他地域には産しない。日本も例外ではなく、野生のものは帰化植物か、逸出した園芸植物のいずれかである。原産地では種により海辺や平野から高山に至るまで幅広く分布するが、パイオニア植物なので、自然状態では平地では河原、砂浜や砂漠、山ではガレ場や、山火事の跡などの荒地や痩せ地に、人為的にかく乱された環境下では鉄道路線沿いや路肩、耕作放棄された畑や休耕田のような場所に生え、他の植物が成長してくると姿を消す。日本では造成中の土地や未舗装の駐車場でもよく見かける。本属植物は、メキシコ北東部からアメリカ合衆国のテキサス州にかけての地域が発祥の地と考えられている。
種としてのマツヨイグサ O. stricta も、原産地はチリやアルゼンチンといった南米で、嘉永年間(1848年〜1853年)に日本にもたらされ、当初観賞用として植えられていたものが逸出し、昭和30年代に同属のオオマツヨイグサ O. erythrosepala とともに空き地などに大群落を形成した。しかし近年はこれも同属のメマツヨイグサ O. biennis に押され、姿を見る機会は減った。草丈は種により異なり、チャボツキミソウのような高山植物では高さ10cm程度、低地産の O. stubbei では3mにまで成長する。葉は開花軸に対して螺旋形に付き、鋸歯を持つか、または深く裂ける(羽状中裂)。花は多くの種において黄色い四弁花で、どの種も雌しべの先端が4つに割れる特徴を有する。一日花であり、多くの種が夕刻に開花し夜間咲きつづけ、翌朝には萎む。これが「月見草」や「待宵草」の名の由来である。
◇生活する花たち「紅かんぞう・オカトラノイ・立葵」(横浜・四季の森公園)
「紫陽花の軒端に雨水たっぷりと」の句を7/3の今日の俳句におとり上げくだされ、ありがとうございました。プランター植えの額アジサイが大雨のあとで十二分に水を得たように見えた朝の一句です。
★鎌倉へ合歓の一樹の花盛り 正子
合歓の木は随所に見られますが、普段はほとんど目につかず、花が咲いて初めて「ああこんなところに合歓が!」と嬉しくなることが多いかと思います。鎌倉へ行かれるご用事の道すがら、一樹の花盛りを見つけられた作者の気持ちが読者にも浮き浮きと伝わってきます。