俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

6月18日(土)

2011-06-18 11:17:02 | Weblog
★紫陽花を抱え魚屋に魚を選る  正子
紫陽花と魚と、意外な取り合わせのように思いましたが、こんなこともありますね。道すがらきれいな紫陽花を買われたか、あるいは頂かれたか、腕に抱えながら今夜のおかずの魚を選ばれる、主婦の日常の一端をいきいきと詠まれていると思います。 (黒谷光子)

○今日の俳句
透かし見て蛍袋のがらんどう/黒谷光子
「がらんどう」がいかにも蛍袋らしく、読者に夢を見させてくれる。蛍をいれれば、幻想的な美しいあかりとなるだろう。(高橋正子)

○夏椿
六月、近所を歩くと、姫沙羅(ひめしゃら)の花が咲いているお宅がたくさんある。大方は、門の脇が多い。夏椿よりも小さい二、三センチの花が地面に落ちているので、花が咲いていると気づく。百日紅のようにつやつやした幹で、幹に映えて小ぶりの葉は、さわやかな緑。姫沙羅は、三大美幹木の一つにあげられるとのこと。あと二つは、白樺と青桐。たしかに庭に植えるとロマンティックな色と樹形で都会的な印象である。

歩いていると、たった一軒だが、夏椿にも出会う。夏椿は、夏に椿のような花が咲くので、その名が付いている。ツバキ科ナツツバキ属。落葉樹。夏椿は愛媛県の砥部動物園へいたる道に植えられている。紫陽花と並んで、咲くともなく咲いている。
夏椿は別名を沙羅(シャラ)、沙羅木(シャラノキ)という。沙羅(シャラ)の由来は、インドの沙羅双樹(サラソウジュ)と夏椿を日本人が間違えたことに由来しているとのこと。やがて、沙羅双樹からサラノキ、シャラノキ、シャラと変わっていったとのこと。

平家物語の「沙羅双樹の花の色」とあるが、夏椿を沙羅双樹としてそのころ、寺の庭に植えていたらしい。
インドの沙羅双樹は、ヒマラヤのふもとからインド中西部に分布する高木でフタバガキ科。釈迦が沙羅双樹の下で悟りをひらいたということで、聖木として大切にされる。葉の形がハート型で先がすっと尖っている。日吉の金蔵寺には、白雲木があるが、この木も葉が丸みを帯びたハート型であって、沙羅双樹として寺などに植えられているとのこと。花ではなく、葉の形で選ばれたものであろうと私は思う。

夏椿をシャラといったり、サラといったり、サラノキといったり、シャラノキといったり、ああ、ややこしい。白雲木まで沙羅双樹に見立てられたり。夏椿、姫沙羅ともに、一日花で朝咲いた花は夕べには散る。花の可憐さゆえに、いっそうはかなさを感じるのだろう。生者必衰、諸行無常。

葉の連想で言うなら、ついでに加えよう、ハート型の葉で美しいのは桂。これも高木になる。桂は京都平安神宮に立派な木がある。神奈川では、四季の森公園のシンボルツリーとして入り口に植えられている。桂は、月桂樹ではない。月に聳える桂の樹なんて思っちゃいけない。月桂樹はローリエ。栄者の冠となる。

ひめ沙羅の落つほど咲ける花の数 正子
紫陽花ときそわず咲いて夏椿  正子

◇生活する花たち「夏椿・姫沙羅・白雲木」(横浜日吉本町)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする