goo blog サービス終了のお知らせ 

ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

応用力って、なんだ? - OECD テストを見て

2007-12-05 18:03:26 | 教育
OECD の、十五歳を対象にした、国際学力調査で、日本の順位が下がったそうだ。「知識」より「応用力」を調べるテストで、「科学的応用力」「数学的応用力」「読解的応用力」の三部門で、前回、三年前の順位である、2、6、14 位から、今回、6、10、15 位に落ちたとのこと。

渡海文科相は、「率直に残念」とコメント。教育関係者や専門家も、少なからずショックを受けていて、「応用力」の向上を求める声が、強いらしい。

しかし、本当に、「応用力」は、低下しているのだろうか?

今日の、朝日新聞朝刊に、「科学的応用力」の問題が、二つほど載っていた。その一つは、酸性雨に関する問題。問い一は、大気中の硫黄酸化物や窒素酸化物が生じた原因。問い二は、大理石を、一晩、酢につけると、気泡が出てくるが、その後、大理石の質量が減るか、増えるか、答えさせる。問い三は、問い二の実験の対照実験として、大理石を、一晩、蒸留水につけたのだが、それはなぜか。

ここで、一番目と二番目は、「応用力」というより「知識」の問題であると思う。少なくとも、酸性雨や化学についての知識がある子供の方が、断然、有利である。

三番目は、出題者の意図が、伝わりにくい、設問である。蒸留水の実験が、大理石から気泡が出ることへの対照実験なのか、大理石の質量が減少することへの対照実験なのか、はっきりしない。

酸の影響で、大理石の彫像がボロボロになるという最初の説明文から、質量減少を問題にしてるようだが、それなら、問題文中に、もう少し、はっきり書くべきだ。こういう「空気を読む力」が、「応用力」だという発想は、万人が納得するものだろうか?

もう一つの問題は、温室効果に関するもので、科学的ディスカッション能力とでも言うべきものが、試されている。しかし、そういった能力を、ペーパーテストで測るのは、やや無理があるような気がする。正解を定めなければならないために、どうしても、議論を、一方向に固定しすぎている感を否めない。出題者が、暗黙の「常識」を、回答者に強いている、そういう感じである。

これらの問題だけで、全体を判断することは出来ないが、「応用力」が、的確に点数に反映されるテストなのか、若干、疑問を感じた。

「応用力」という概念は、誰もが「ふんわりと」理解できるが、では、具体的にどういうものなのか、定義するのは、難しい。ましてや、「応用力」を測る、ペーパーテストを作るのは、さらに難しい。真剣に議論し始めると、学会が一つ出来そうなくらいだ。

今回のテストには、57の国と地域が、参加している。「応用力」の定義の曖昧さと、それを測る難しさを考えると、日本の順位は、さほど大騒ぎするレベルではないと思う。OECD事務総長が言うように、テストの目的は、「ランキングをみることではない」。教育を考える際の、一つの参考として捉えるべきだろう。

確かに、順位を出されると、一位になりたいのは、人情かもしれない。しかし、各種の国際調査ごとに、一喜一憂して、指導要領を変えていたのでは、何一つ良いものは、生まれてこない。

「ゆとり教育」も、十年にも満たないで止めたために、賛成反対以前に、その全体像すら、見えてこなかった。日本の教育の方向は、テストの結果ではなく、「どういう市民社会を作るのか」など、高い理念から、長期の展望に立って、デザインして欲しい。

ちなみに、ノーベル賞学者を最も多く輩出しているアメリカは、前回も、今回も、「科学」「数学」の、どちらの部門でも、二十位以内に、入っていない。しかし、アメリカの教育関係者が、これで科学大国アメリカの足元が揺らぐと、大騒ぎしているという話は、ついぞ聞かない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お雑煮ショック ~ 逆「秘密のケンミンSHOW」

2007-12-04 21:24:10 | Weblog
小学校まで、兵庫県の西宮市に住んでいたのだが、お正月の雑煮は、丸餅に、カツオでとった澄まし汁だった。具は、大根、人参、鶏肉を、少量入れる程度で、みつばを散らして、食べていた。この地域では、どこの家庭でも、同じような雑煮を食べているのだと、無邪気に思っていた。

ところが、大学生の頃、親戚一同で、有馬温泉の旅館で年末年始を過ごしたとき、元日の朝、出てきた雑煮を見て驚いた。

「なんで、汁が白い?」

不審そうに椀をのぞき込んでいると、白味噌を使っているのだと、叔父が教えてくれた。有馬温泉は、西宮からは、目と鼻の先である。なるほど、本来は澄まし汁なのだが、旅館ということで、特別の演出なんだろうと、勝手に合点して、飲んでみた。

「なんじゃこりゃー!?甘い、甘すぎる」

白味噌が甘いことを、その瞬間まで、知らなかった。当然、みそ味なんだと、思い込んでいた。人間の脳は、こういう味だと思って口にした物が、まったく予想外の味だと、強烈なダメージを受けるようで、吐き出しそうになるのを必死で我慢した。

あまりにも甘いので、絶対に砂糖を後から入れてる、そう言い張ったのだが、年配のひとたちから、元々、こういう味の味噌なのだと言われた。どっちにしろ、人生の中で食べた、一番甘いものである。ブラジルの黄色いお菓子くらい、甘いんじゃないかと思う(笑)。

ところが、後になって、関西地方では、白味噌の雑煮が一般的だと知って、驚愕した。澄まし汁の雑煮を食べていたのは、うちの家だけ。向かいも、両隣も、三軒先も、町内全部、白味噌の雑煮だったかもしれない。そう考えると、長年の親友に裏切られたような、切ない気分になった(笑)。

それにしても、よくあんな甘い物、食べられるなあと、今でも感心する。香川にいたっては、白味噌のうえに、餅にあんこまで、入ってるらしい。どんだけーー、甘い物好きじゃ(笑)。

最近、日本テレビで、「秘密のケンミンSHOW」という番組を、放送している。各県に特徴的な、慣例や、食べ物などを、紹介する情報バラエティである。面白いので、結構見ているが、私の雑煮は、その逆バージョンみたいなものである。どちらかというと、テレビ東京の「お茶の間の真実 - もしかして私だけ!?」に、出した方がいい。

ちなみに、私の祖父と祖母は、九州の出身で、そのことが、澄まし汁の雑煮と、関係しているかもしれない。九州の雑煮について、ちゃんと調べたことがないので、断言は出来ないけど。

みなさんのお家の雑煮は、本当に、お隣の雑煮と同じですか?確かめてみた方が、いいかもしれませんよ(笑)。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北京五輪野球最終予選、一発勝負の難しさ

2007-12-03 23:19:33 | Weblog
オリンピック出場、おめでとうございます。10対2で、台湾に勝ちました。ダルビッシュがよく耐えて、最後は、上原が抑えました。

昨日は、一点差で、韓国に勝利。今日の台湾戦も、前半は、きわどい接戦。簡単には、勝てません。韓国、台湾が力をつけてきて、日本との実力差がなくなりつつあるのは、間違いないですね。

一方で、一試合で勝負を決めるという方法だと、野球の場合、番狂わせが起こりやすいという面もあると思います。全体としての地力で優っていても、相手側に、良いピッチャーが一人いると、なかなか打てない。さらに、良いバッターが一人いると、うっかりホームランを打たれて、負けることもある。一流のプロといえども、初めて対戦する、メジャー級ピッチャーの球を、わずか三、四打席で、見極めるのは難しい。

例えば、アテネ五輪で、日本は、オーストラリアに負けましたが、やはり相手投手を打ちあぐねてる間に、うっかり点を取られるというパーターンでした。オーストラリアは、確か、国内にプロリーグすらないはずです。

ところが、サッカーを見ていると、下位チームが、上位チームを、打ち負かすことが、ほとんどない。番狂わせがおこると、「奇跡」と言われる。これは、一流のサッカー選手にとって、90分のプレータイムが、相手を見極めて、戦略を立て直すのに、十分な時間であるためだと思います。

日本が初めて、ワールドカップに出た、フランス大会の初戦でのこと。対戦相手のアルゼンチンは、最初、セットプレーで、攻撃してきた。しかし、日本のディフェンスが、非常に堅くて、得点できない。

すると、二十分過ぎくらいから、ドリブルで、攻め込み始めた。作戦会議をしたわけでもないのに、みんなが、ドリブルで攻めてくる。結局、この個人プレーで、点を取られて負けた。

セットプレーがだめなら、ドリブル。それがだめなら、また別の手。相手の弱点を見つけるまで、二十分おきくらいに、誰が言うでもなく、パターンを変えて攻めてくる。地力で負けていると、どんなに緻密な作戦を立てて、試合に臨んでも、90分、守りきるのは、非常に難しい。

一方、野球は、9イニングあるけど、相手を見極めて、作戦を立て直すには、少し短すぎる。相手チームに、メジャーの選手が何人かいると、特にピッチャーに良いのがいると、全体的な地力では勝っていても、負ける可能性は小さくない。過去、日本チームが、日本の野球ファンが思ってるほど、国際試合で勝てないのは、この一発勝負制によるところが大きいと思う。

ただ、WBCのように、何とか勝ち上がって、三回以上、同一チームと対戦できれば、話は違ってくる。韓国には、最初の二戦は負けたけど、三戦目は、日本のバッターが、韓国の投手に慣れてきて、打てるようになった。

韓国は、第一戦から、惜しみなくピッチャーを投入したので、これが、日本にとっては、却って助かった。大方のピッチャーの、球筋を見ることが出来た。もし、韓国が、最初の試合を、もう第二ラウンドに行けるのだからと、捨てていたら、日本は、準決勝で負けたかも知れない。決勝で日本に敗れた、キューバの監督が言ったように、「良いピッチャーを打つのは、本当に大変」なのだと思う。

ちなみに、韓国では、野球部のある高校は、珍しいそうです。それを考えると、WBCでの、韓国チームの強さは、驚異的と言えるでしょう。

五輪本戦でも、相手をよく研究して、地力に見合う活躍をして欲しい。犠牲バントや盗塁で、こまめに得点圏に走者を進めて、「敢えてのミートバッティング」(笑)で一点づつ加点する。そういったスモールベースボールが、一発勝負に、非常に有効なのは、WBCと、今回の予選で、証明されたと思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする