城山三郎 著。
四季劇場への往復で読みました。
私は東京方面に出かける時、復路のみグリーン車に乗る事にしています。
950円(休日は750円)で最高の読書タイム。
この日はグリーンがとても空いていたので、誰にも気兼ねせずに泣くことができました。
『夢から醒めた夢』とちょっとリンクした場面があって、余計に胸が震えたんです。
それはね、(夢から・・・の話)死んだ人はまず、霊界空港に行ってバスポートの色のチェックを受ける。
白いパスポートの人は一年に一度出発する光の国行きのロケットに乗れる。
あるおじいさんはもう12年もそのロケットに乗らずに空港にいる。
何故かというと、おばあさんを待ってるから。
おばあさんと一緒に光の国に行きたいって。
で、とうとうおばあさんが亡くなって、12年ぶりに空港で会うことができたんです。
大切な人と離ればなれになるのはとっても辛くて悲しいけれど
いつか必ずまた会うことができるんですね。
今度は英一さん(城山三郎さんの本名は杉浦英一さん)の本の話。
この本は彼の遺稿となりました。
小間切れの原稿を、娘さんと編集部が紡いで一冊の本にしたのです。
お見合い結婚が主流だったこの時代、ドラマみたいな劇的な出会いで結ばれた英一さんと容子さん。
その容子さんが病に倒れるまでの日々が愛に溢れた優しい言葉で綴られています。
こんなに仲の良い夫婦がいるでしょうか。
微笑ましくて、ほんわかしていて、クスって笑ってしまうエピソードがたくさん。
なのに、何故私がグリーン車の中で涙したか、っていうと、
娘さんの井上紀子さんが あとがきとして書いた「父が遺してくれたもの」を読み
容子さんが亡くなった後の英一さんの落胆ぶりと
最後の最後まで周りの人たちに気遣いながら逝った事実を知ったってこと。
それから、先に書いた『夢から醒めた夢』の霊界空港での老夫婦の再会のシーンが
容子さんと英一さんに重なってしまったから・・・
容子さんはきっと一人で7年間、英一さんが来るのを待っていたんだろうな、
そしてそこで 「あら、あなた、やっといらしたのね。」
なんて言いながらニコニコ微笑んでいる姿が目の前に広がって
悲しみよりも、ああ、良かった、二人はまた会えた!ってホッとして
涙が止まらなくなっちゃったんです。
「そうか、もう君はいないのか」
英一さんは何度この言葉をつぶやいたのかな。
でも今頃は光の国で またニコニコしながら二人仲良く幸せに暮らしているに違いない。