ゆっくりかえろう

散歩と料理

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匂い12

2015-12-12 | フィクション

 「華岡さん あれでもう車は 夜中に消えないんですか?」

 「ああ、大丈夫 あれはもう夜遊びしないよ」

小松がまだ震えている。余程怖かったようだ。

「そろそろあの車の因縁を話そうか」

 俺は小松に知ること全てを話した。

最初ガレージで車を触ったとき 生暖かく生き物の感触があった。

それでダッシュボードを探ってみても書類の入るスペースが全くない。

こいつは車ではない。

 なまものだ

しかし敵意が感じられない。

思い切ってクルマに話しかけてみると クルマは一匹の黒猫に化けた。

というより、猫がクルマに化けていたのだ。

その時物影から 更に大きな三毛猫が現れた。

 「あんた何者だ?」

大きな三毛猫は人間の言葉を話した。そしてこんな話しをしてくれた。

 ひと月前に社長の愛車のオープンカーが整備工場から盗まれた。

それを知れば 社長夫人が悲しむだろう事を 心配した猫たちが化けて あそこにいたのだ。

彼等は化け猫の術で 順番にクルマに化けて 日替わりでクルマになりすましていたのだ。

昼間はいいが 、夜は猫の集会があるから 真夜中は留守がちなのだ。

幾日ものあいだ 猫の親玉は盗まれたクルマの行方を探し やっと昨日探し当てて取り返し 今日「納車」したわけだ。

 「それで本物の車がガレージの外へ出ていたのですね」

 「ああすれば またクルマが朝帰りしたように見えるからね」

 「僕が先に上へ行っていた間に そんな話があったのですか」

 「それで どうしてあれが猫だと分かったんですか?」 

 「それはほら 猫のニオイがしたからさ」

俺の特技はニオイ当てだから。おかげで 気ままでいられる。サラリーは少ないけど。

「それであのネコは何物なのですか?」

「あの大きな三毛猫は 猫又といって 百年生きた猫の化け物さ」  小松がまた怖そうに身震いした。

 

車は首都高を抜け 一般道から会社に向かっている。

そろそろ 常務の待つ本社に着く。



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