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ゆっくりかえろう

散歩と料理

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下天は夢か 三

2014-01-26 | 読書
津本陽氏著 三巻は浅井朝倉滅亡から 叡山焼き討ちまで

浅井長政の叛逆によりいよいよ信長の行動は 誰にも止められなくなっていきます。
信長の思考が何もかもおかしいとはいえませんが 誰も信用しない彼は、神になろうとしたのです。
仏像を焼いても宗教者を殺しても平気です。彼の目的は天下統一から、人間界の支配へ移ります。
彼の異常性格が表れ、残虐行為が普通になります。
 彼を高く評価して英雄視する風潮がありますが 私は好きではありません。
 恐怖政治を行う者の末路は もっと惨めであるべきです。彼は敵からも味方からも、部下からも恐れられ憎まれる存在になります。まともな人程 危機感を感じる結果になるのは自明の理です。なにより人を信用しない者は誰からも信用されません。人は嫌いな人に命を捧げたりしないものです。
彼にとって部下はおらずひたすら道具としての家来がいるだけです。

美しい食べ方

2014-01-21 | 読書
エイ出版社 本屋で購入しましたが 所謂コンビニ本(だと)思います。前に読んだきれいな食べ方とよく似た内容の字より絵の方が多いハウツー本。 内容は小学生でも理解できます。 中身は実用的で役に立つことが多く 文庫本並みの価格なので CP値は高いと思います。
レストランで困らない 特別な席で恥をかかない 家庭料理を失礼なくなどのマナーから 美しい食べ方というのは 正しいマナーに近づく一歩なのです。 読んでて一番参考になったのは 美しい食べ方より してはいけない間違って覚えているマナーや行為です。読んでいて自分の普段の行為を思い出しひやっとしました。 後半は料理別の正しい食べ方 日本料理を初め インド料理や韓国料理 寿司屋や蕎麦屋の作法 もっと実用的な料理別まで実に親切丁寧です。 新しく日本に入って来た料理は 最初から知らないのですから 知りようがないのです。ミルフィーユなんて食べ方知ってました?
お呼ばれでなくても 人は食べる時観察されています。それは食べ方で人柄や育ちが出るからです。デートや宴会で困らない一冊です。

かぶいて候(そうろう)

2014-01-16 | 読書
 隆慶一郎氏著

 ずっと昔読んだのに 古本の文庫をてにとってみたのは他に読んでいない作品が載っていたからです

 そういえば かぶいて候を最初に読んだときは ハードカバーでした。

 文庫にすると こんなにコンパクトになるんですね。

 対談集や裏話 作家自身が書いた 身の上話など興味深く読めます

 傾く(かぶく)とは戦国期から江戸初期にはやった言葉で 歌舞伎の語源になった言葉で ぐれるというか世間に反発するというか 微妙な言葉です。
 ただしぐれるといえば 人に迷惑をかけるニュアンスが大きいですが かぶくといえば体勢に対する反抗とか 常識に流される風潮の批判とかの 大きな意味です。

 お話は骨太な漢のお話 しかも世間に知られている定説とは違う異説が語られてゆきます。

 作者の話は あくまで空想にしか見えませんが どれもしっかり裏付けがとってあり

 古文書や歴史資料など入念に調べた上での物語り展開なので無理なく読めるのです
 お話は歌舞伎で有名は「幡随院長兵衛」の敵役「水野十郎左衛門」の生涯

 隆作品ではおなじみの 徳川家光 おせんの方様 徳川秀忠など 他所では善人役が 隆作品ではみんな悪役なのです。

 テーマは「侍とは死ぬこととみつけたり」です。

 こないだ読んだ「さむらいとは死ぬことと見つけたり」から一歩進んで 殿様に命を捧げるのではなく 自分が自分の主人という境地に行き着きます。

 間違ったことをいう主人には従わない しかし切腹をして諫言をする

 それは今の時代の人には理解できないことです。

 当時の人でも ここまで出来る人は稀です。


 ストーリーは 映画にでもすれば 気持ちがすっとする バイオレンスロマンです。


 他にもう一編「猿が辻の変」に材をとった作者にとってはめずらい幕末ものもあり。

とり残されて

2014-01-15 | 読書
宮部みゆき氏著
見事な短編集。現代ものは初めて読みますが、時代ものに負けない読み応えがあります。

生き霊ものにダブった タイムスリップものなど とても複雑で それでいて 読む側はちゃんと理解できる 分かりやすいストーリー展開は作者の頭の良さが光ります。

最後の作品 たったひとりは 恒川光太郎氏の秋の牢獄のアンサー編みたいな感じ(こちらの方が先かも?)です。

表題作は怖くて不思議で 寂しく辛く切ない 最高傑作です。



本能寺六夜物語

2014-01-06 | 読書
岡田秀文氏著

本能寺の変外伝 あの事件の周辺の生き残った人々の証言から 事変の周辺に迫っていく物語

事変の真相は最後に語られますが 新説といえる程インパクトの強いものではありません。異説 異聞といったところでしょうか。

でも案外事実とは そんなものかもしれません。

お話は本能寺の変後 三十年あまり経ったある日 案内人をいれて七人の人が山の中のお寺に集まり 百物語のように 本能寺の変の昔語りをすることで変の秘密を解き明かしていきます。

話としては面白いですが 事変の真相を知りたいという目的を持って読むと ちょっと違うようで物語として楽しめる内容です。

七つの怖い扉

2013-12-31 | 読書
阿刀田高他共著 芝居脚本の為の書き下ろしミステリー集

いずれ劣らぬ売れっ子作家の競作集 阿刀田氏は起承転結のお手本のような話でしかも最後の落差が大きいタイプ。

宮部さんは実直正攻法 鈴木光司氏はおどろおどろしい。

乃南アサさんは気味が悪い。高橋克彦氏は不安を募らせ 夢枕獏氏はぞっとさせてくれます。

小池真理子さんは悲しみと愛しさの混ざったドラマ仕立てでした。

どの作家も上手過ぎて甲乙付けがたい出来上がりです。今後の読書の参考にするには 絶好の競作集です。

ほんまにオレはアホやろか

2013-12-05 | 読書
水木茂氏著
漫画家 水木茂氏のエッセイ とても面白い。規格に嵌まらない

我が道をゆく自己に 自信を持っておられる。

楽天的というか 結構努力しておられるのに それを自慢もせず 悲観もせず
生かされている実感を感じ 感謝し信じ自然体で生きておられます

人柄に 何か徳のようなものを感じます。
  アホどころか 記憶力の確かさには舌を巻きます 作品の名前 人名
 年代 地名など正確さに驚きます。

水木先生には 本当に妖怪が見えるのではないかと ふと思います。

下天は夢か 二

2013-12-03 | 読書
津本陽氏著 二巻は美濃攻めから 北近江攻略の姉川の合戦勝利まで。

信長に敵対する者は次々増えて行き、仕舞いには信長が庇護者としてまつりあげてある足利義昭までが陰で敵に廻ります。

信長は弱い相手には 力攻めで倒し、強いと観るや卑屈なまでに下手にでて 巧みに領土を増やし 上洛に向かって進んで行きます。

相変わらずの残忍性と人を道具としか考えていない性質ですが この時点ではまだ家臣の諫言とりなしは聞く耳を持っていたようです。

そこに信長の人間らしさの欠片が残っているのを見ます。信長は幼児性の強いひとではなかったのかと ふと思いました。

二巻のキーワードは 木下藤吉郎 (秀吉)そしてまた蜂須賀小六 前野少右衛門という地侍です。
秀吉は二人の陰働きと 自身の調略で信長を随分コントロールしていきます。

信長の策謀は必ずしも適切とはいえず難航する場面もありますが 秀吉はそこを上手く操縦しています。
まだ主従はそれなりに 対等だといえます。後の安土時代のように誰の歯止めも聞かない頃とは違い 家臣の(命懸けの)諫言は聞きます。

あと信長自身人を信じない代わり スパイをよく使いました。
信長は浅井氏が敵に回ったことで いよいよ狂っていきます。

下天は夢か 一

2013-11-26 | 読書
津本陽氏著  全巻四冊 織田信長に興味があって読みましたがなかなか面白い本です。

膨大な資料をよく調べてあり とくに登場人物の話し言葉によく留意してあり 感心しました。

氏は歴史の裏表どちらも詳しいようですね。今まで読んだ信長の話の中で 一番しっくりくるドラマになっていると思いました。

特に信長の性格から家来の性格など上手く書き出してあり 今までの私なりの歴史の疑問が幾つも解けました。

実際のところ四巻だけ読むつもりだったのですが 面白いので一巻から読み直しました。
一冊約400ページはなかなか読み応えがあります。

一巻は信長の生い立ちから 親戚 兄弟を破り 桶狭間の戦いを経て 小牧の戦い前まで、
信長の強さの秘密が異常なまでの猜疑心と残忍さ用心深さであると知れます。

人材登用の上手さは 裏を返せば門地身分さえ信じない 自分だけしか信じない誰も愛さない信長が人を道具としか思わない半面がでたものと思われます。

その公式を当てはめれば 彼の一生の謎は解けます。一巻のキーワードは蜂須賀小六 そして秀吉(木下藤吉郎)です。見ようによっては 哀しい物語です。

織田信長

2013-11-18 | 読書
今 信長に興味があって幾冊かの本を平行して読んでいます。

こうした読書の仕方は私にとっては初めてで その目的は角度を変えての人物達の動き信長や武将達の気持ちがしりたかったからです。

読み進めれば読み進むほど謎は増えていき、見えていないものがうっすら見えて来た部分もあり 自分なりに楽しんでいます。

歴史の謎のひとつ本能寺の変も起こるべきして起きた不思議でも何でもない事変であると知りました。

信長という暴走車を止めなければならないと思っていた人々の怨嗟の声が形になったのです。

光秀の恨みによる犯行といわれていますが 私は違うと思いますし 黒幕にいたっては 複数人いると思います。

綺譚集

2013-11-12 | 読書
津原泰水氏著
こういう発想は どこから出てくるのでしょう。

スプラッタ系の奇談は苦手ですが この作品は嫌ではありません。

絵やアニメで表現したら とてもじゃなく 耐えられませんが 美的表現に独自世界があり 一見の価値があります。

しかしかなりマニアックですから 万人受けするものではありません。

直接的な表現は使わず 同性愛や近親愛 などを扱う作品

殺人 屍体愛などテーマは難しいですが、文体の精緻を極めた表現は 難しいものを無理なく読ませてしまう力があります。

作者の力量は計り知れないものがあると知らされる作品集

ただし読む側も或る程度の理解力と注意力も必要だと思います。

細かい言葉までしっかり読み込まないと 一行一文で 意味が逆転する所があります。

旅猫

2013-10-28 | 読書
写真集+エッセイ  新美敬子氏著

以前読んだものとまた違うもの 中身は前のよりエッセイの部分が多く

見ても 読んでも楽しめます

猫好きにはたまらない本ですが そうでない人も 世界の古い街角などが ふんだんに写っており それも楽しみです

野良猫についての 作者なりの意見が書いてあります

可愛い可愛いばかりの写真は少なく 風景に溶け込んだもの

人に抱かれたものなど 生活感があります

私は何かの弾みに 作者の名前の読み方を間違えて あらた みけこと読んで
「なるほどなあ 猫好きらしい名前だなぁ」と感心しておりました

笑い話じゃなく・・(普通に読めばそんな読み方はしないのにね)

どこか好きな一ページを任意で開けてみて そこから読むもよし 眺めるもよし

手元においておきたい本です  



人体模型の夜

2013-10-24 | 読書
中島らも氏著 著者は度々メディアに露出があり のんびりしたスローモーな話し方は失礼ながらぴりっとしない印象がありますが 本作品集はそんな先入観を感じさせないシャープでブラックな短編集に仕上がっています。

私は正直 驚きを持って読みました。上手なストーリー展開 意外な落ち しっかり怖い読後感は計算をつくしたもの 安心して読めます。

物語はは二重構造を持っていますが だからこそ どことも知れない誰とも特定出来ない自由さを持って 話に没頭出来るのです。

私はいい意味で期待を裏切られる快感を味わいながら楽しんで詠みました。

風の呪殺陣

2013-10-22 | 読書
隆慶一郎氏著
ずっと昔、氏の著作物をまとめて読んだ時期があり その時判らなかった事が時が経って解るようになりました。中味はいわゆる本能寺信長暗殺外伝の一冊です。
隆氏らしく伝奇ものからのアプローチで 異能者二人のダブルキャストです。信長の比叡山焼き討ちの復讐を狙う学僧昇運は 怒りから外道の異能力を手に入れる修行を積み 信長の呪殺を図ります。
一方同じ恨みを持つ比叡山僧兵知一郎は生まれ持った異能者としての力を磨き上げ 同じ異能者集団の一員として 信長に抵抗を試みます。
隆氏の著作物は彼の急逝を理由に 未完成のものが多いのですが、この作品は完結しており 安心して読めます。本能寺モノは 歴史ミステリーとして人気があり ひとつのジャンルがあるくらい沢山の本を見ます。光秀の個人的恨みや 朝廷公家黒幕説 秀吉黒幕説から一向宗が関係しているとか 徳川黒幕説 果てはキリシタン説や堺衆黒幕説などです。最近でも漫画「ひょうげもの」では秀吉が暗殺者でした。現代人は 信長を英雄ととらえますが当時は危険人物です。恨まれていました

十六夜長屋日月抄 飯綱颪

2013-10-15 | 読書
仁木英之氏著
僕僕先生 千里伝などの中国ドラマでお馴染みの作家の江戸時代劇。

骨太のドラマと活劇人情劇が幾つも並行して進みます。

舞台は下町深川 記憶を無くした謎の大男が 気のいい町人に拾われます。

彼を中心に信州松代藩のお家騒動に巻き込まれていく長屋の人々は

大平の世にあって苦悩する陰に生きる定めの人達との交流を通して

人の生きる意味を問い掛けていきます。

話はスーパーヒーローもの並みの活劇あり江戸町人の人情劇ありと盛り沢山です。

そこにあるのは 嘗ての日本時代劇映画の緊張と緩和の方式が盛り込まれ

飽きさせることが有りません。

最初は展開がやや遅いですが 半分くらいから 話は駆け足になり 結末まで走ります。

最近女性作家さんの本ばかり読んで その流れでやや草食気味になっている自分が

この作品を読んで肉食の醍醐味を思い出させてくれるきっかけになりました。

流行りの文章表現に流されず 独自の文章とストーリーの組み立ては 新鮮です。

中身はこれ以上書かない方が これから読む人の楽しみになりますね。