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ゆっくりかえろう

散歩と料理

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うわん 七つまでは神のうち

2014-05-26 | 読書
 小松エメル氏著 一鬼夜行シリーズの作家の新作書きおろし
 一鬼夜行よりずっと深刻な妖怪退治のお話ですが 男性作家のような勧善懲悪ではなく あくまでも家族のために戦う女性主人公が勇ましくてリアルで素敵。  

 ただ真面目過ぎるのは 読んでいてやや疲れますが 物語に入り込んだら面白いと思います。私は丁寧な心理描写が疲れました。所々息抜きがあれば良かったの
…ともうすこし書きましょう。女医者真葛は病に倒れた医者の父青庵にかわって代診の毎日なのですが 患者さんの何割かは妖怪がらみの病が多く忙しい毎日です。父の具合が悪く弟も様子がおかしいのは 弟に憑いた妖怪がらみで 父と弟の正気を取り戻したら明るく楽しい妖怪退治になるかも。
続きはもう少し明るい話に期待します。エメルさんでもってお話はとても面白くて素敵なのだから。

小夜しぐれ

2014-05-12 | 読書
 高田郁(みゆき)氏著。  人気シリーズ第5作目 少しずつ少しずつもつれた糸は解けていきます。大店のお嬢様美緒さんの初恋も終わりを迎えました。  話を読んでいた読者が納得出来てきれいな終わり方でした。三角(四角かも)関係というドロドロしたものも さり気なく美しく優しく自然に終わりました。 でも澪の場合生半かではない障害が幾つも有って どれも越えられるとは思えません。自分の恋 友人を苦界から助け出すこと 御寮さんのこと 潰れた料亭の再建 でも物語はゆっくりゆっくり でも確実に悩みは解決して行きます。読者はそう信じるしかないのです。  料理のほうはプロらしい料理が沢山出てきました。  どうやら作者は古い文献を見ながら研究されているようです。だんだん作品は池波正太郎さんや平岩弓枝さんの世界にも迫る郁ワールドを築きつつあります。 作品はお涙頂戴物語ではなく 骨太の文学を感じさせます。 ただし主人公は過去を振り返りすぎ 同じようなパターンを繰り返すと やがて読者はせっかくの自然なドラマに作為の匂いを感じ取り良くないと思います。

鬼きり丸

2014-05-09 | 読書
 高橋義夫氏著 本格時代劇。短編集なので飽きずに読めます。

 東北のある町に 引退隠居した元忍者の主人公が住み、様々な事件に立会い解決していく一話完結のドラマ。

 
鬼きり丸は架空の刀の名前です。

刀をめぐるエピソードとちょっとした事件の解決編。

刀の話はこれ一編で いずれも読みやすく読み進めるのは早いです。

軽いのが好みの人にいいかも。

今朝の春

2014-04-29 | 読書
 高田郁氏著 みをつくし料理帖第4弾 
伊勢屋の我が儘娘美緒に大奥勤めの話が持ち上がり 澪に料理指南を頼まれますが素質も何もない美緒に困り果てる澪。

話は二転三転して意外な方向へ。相変わらずの人情話ですが 今作はコミカルな話です。
お嬢さんのひたむきな姿が却って可笑しい。
 育ちがいいので意地悪にならず もの知らずなところも素直で邪気がないのは美点です。

想い雲

2014-04-25 | 読書
 高田郁氏著  みをつくし料理帖シリーズ第3弾 また登龍楼に居て辞めさせられた元板長の末松の妨害で危機に陥るつる家。
澪は周囲のスタッフに支えられながら商売の誠と人の道を教わっていきます。
 ある時は御料さん ある時は口入れ屋のご隠居りうさん よし家を巡る人達はみんな澪の先生で相談相手で身内同然の人ばかり。だけど相変わらず澪は運が無い。

物語には一癖ある人ばかりが登場しますが 敢えてそのままお話しは進んでいきます。それはメインテーマが料理であり伏線は今のところ 謎のまま伏せて後の楽しみに取ってあるようです。

 お話は長くなりそうですが、腰を据えて読む気にさせる小説です。
 物語の中の料理は巻末にレシピがあり それも楽しみのひとつです。
 

本能寺・男たちの決断

2014-04-13 | 読書
細谷正充氏編 歴史に残る本能寺の変に関わった人達の 人間模様を書いた作品の作品集。赤木駿介 瀧口康彦 永井路子 他 それぞれの作家の短編の中から 光秀 秀吉 家康 他の人々のその時の行動を探っていきます。

話はフィクションでありますし 作品は連作でもないのですが 編集者の好みが入っている為か それぞれ作家が違うのに まるで一人で書いた作品のようです。事変に対する ものの見方が似た作品を集めたからでしょう。

話は大きな破綻もなく 安心して読めます。それぞれの作家さんの試読としても いい使い方だと思います。私の好みは永井路子さんの短編。本当の主人公である光秀の娘を通した筒井順慶を描いたもので 歴史的興味より、弱小大名の立場の危うさを描いた佳作です。

花散らしの雨

2014-04-11 | 読書
 高田郁氏著  
 人気書き下ろし人情時代劇の二作目 とにかくお涙頂戴、優しい気持ちになります。料理をメインに置いて、でもお話もちゃんと不自然なく出来ています。 ストーリーをこねくり廻さず、すっきりしています。
ちゃんと計画的に大きな流れが出来ていてしっかり話が進んでいるのだと思います。これは書き下ろしだからこその良さです。
それに登場人物の説明を何度もやらず 水増しページが無いのも潔いです。

出てくる料理は、私でも作れると前に書いた覚えがありますが とんでもない私の思い上がりでした。
作中の料理はよく考えられ工夫された素晴らしいもので勉強になります。
 胡瓜の下拵えの50℃洗いなどは最新のやり方で経験に基づいているからとはいえ 科学的なやり方が披露された時は驚きました。

葵の御紋のエピソードの話しは確か 江戸落語ですね。
関西だからこそ分かるネタ 反対に江戸だから分かるネタ上手く使われています。私が見て痛快と思うということは 江戸ものにはやや悔しい話しになるのではないかと 心配しています。

いつも江戸ものをしもてにおかず、上方が負けているエピソードも書いてくれれば 江戸ものの溜飲も下がるのにと思います。このままでは江戸ものは田舎もののままですから。

タコの話しは柔らかもの好きの上方もの 硬いもの好きの江戸ものの習いがあるので 柔らかいタコを喜んだという話しは少し疑問です。
食べ物の好みは案外頑固ですから素直に認め無いものです。

作中の料理が豊かなことから 江戸の町人の食事の豊さを知りました。大阪商人の食事の内容の質素なこととは対照的です。

作中の料理はどれも美味しそうで 匂いたつような感覚を覚えます。それと人情話は泣けて泣けて大変です。一冊読み終えるまで止められない力の強い本です。

銀二貫

2014-04-02 | 読書
 高田郁氏著 
 大阪の書店の組合のイチオシで、この春の某国営放送の大型時代劇の脚本元であります。よく出来た人情時代劇です。舞台は大阪、もとい大坂、時代は天明 寛政の頃。

この頃は政治腐敗 天候不順と賄賂横行 飢饉 打ちこわし 百姓一揆 藩取り潰しと幕府政治は行き詰まり 百姓町人は困窮を極め大いに乱れた時代です。
大坂の商人は 正直 感謝 信仰心を信条に度重なる 天災人災にもへこたれず 度重なる大火に何度も立ち上がり奮闘する姿を描きます。
東京の人や東北の人などは 大坂商人というと見下げて盗人の一種のようにいう人が多いですが、事実は違います。親切丁寧正直を信条にひたすら日々暮らしていたのです。そうでなければ 何百年の老舗は続きません。人を踏みつけ欺いては商人は続けられないのです。

考えても見て下さい、江戸時代実質武士たちは 何も作らず働かずただ遊んで暮らしていたのです。百姓町人は税を武士から取られ、ひたすら汗水たらし働いていたのです。

武士たちは政治を行っていたと言いますが、それはあくまで自分たちの都合でしかありません。


封建制というのはいかにもそれを正当化し固定化するシステムなのです。この物語は真実の大坂商人を描いています。ストーリーは放送に差し支えますので 敢えて書きませんがよく錬られた構想  時代考証  専門知識 土地考証など手間ひまかかった作品になっています。

私はたまたまこの物語の舞を知悉しており、天満 深草郷 伏見 果ては島上郷 原村まで 人の二倍三倍楽しめました。

妖怪アパートの幽雅な日常 9

2014-03-30 | 読書
香月日輪氏著
人気シリーズ 高校生最後の文化祭の様子を描く9作目。例によって女性漫画というか少年漫画の原作的テイストの作品。私的には今の若者とは少し時代がズレているように感じます。人物設定や 若者の考え方に ひと昔前の匂いを感じ取ります。
とはいうものの 私には懐かしく甘酸っぱい思い出を匂わせて 楽しい作品です。

大人達にも読者が多いのかな。
ただ、今の若者には説教臭さを感じるかもしれません。

9巻ともなると タイトルからは大きく外れ妖怪アパートファンとしては 淋しい限りです。
もっとアパートの妖怪達の登場場面を増やして欲しいところです。

ダースベーダーとルーク(4才)

2014-03-23 | 読書
ジェフリー・ブラウン作 とみながあきこ訳
絵本
シリーズを知ってるからこそ楽しめる 大人の絵本
子供には分からないかも。
とても楽しい絵本です。
楽屋オチ ストーリーオチが満載です。あなたは幾つ笑えるかな?

厳めしいダースベーダーが幼いルークスカイウォーカーと悪戦苦闘しながら 遊んでやる姿が 微笑ましいです。

子守をするダースベイダ-が 愉快です

妖怪アパートの幽雅な日常 8

2014-03-22 | 読書
香月日輪氏著
主人公夕士は 高校三年生になり、就職組から進学組に進路変更します。

夏休みのある日 出掛けたイベント会場で テロ事件に巻き込まれ 図らずもあの魔法の力を担任の先生に見られる事になり、いよいよ正念場を迎えます。

人気シリーズも 初期から話が学園ドラマに変わり 学校の中のドラマへと展開が変わってきます

 この卷は外伝ともいえるような感じですね

八朔の雪

2014-02-08 | 読書
 高田郁氏著  人情時代劇 見事な書きぶり 目前に場面が浮かぶような静かな抒情詩はページごとに 涙腺の弱い読者を泣かせる名作。

 大阪育ちの天涯孤独な主人公澪は、江戸で老いた店主に代わり 料理屋を任されて料理修行 そして店の経営まで勉強してゆくストーリー。

 上方料理に慣れ親しんだ主人公澪は 江戸の好みにとまどいながらも 両方の良いところを習いながら成長してゆきます。

 澪は江戸の味付けを馬鹿にせず 大阪の良いところ江戸の良いところを探りながら 人情に触れてひとつずつ難関を越えてゆきます。

 ここに登場する料理は シンプルですが 実際に作るものにしかわからない 現実味があります。

 味や匂いや温かささえ伝わるような筆力は見事ですが それをさらっとさりげなく書くところは奥ゆかしい限りです。

 物語は結構波乱万丈で 主人公はくじけそうになったり また気を振り絞って元気を取り戻したりで 一向に飽きさせないストーリー展開です。

 物語はスリルもサスペンスもないし ファンタジーも推理ドラマもなく 唯一のスパイスは料理だけですが 読者はページから目が放せません。

 久々に隠し味のない けれんみのない 正攻法の人情ドラマを読みました。

 私の読書は古本や図書館の借り本で 基本成り立っていて 蔵書にしたいけど新本でしか手に入らない時だけ買い求めるスタイルですが、このシリーズだけは古本が手に入らなくて続きを読みたいときは 新本を買いそうです。

 順番に物語を追って読み進めたいそんな物語です。

 大阪の書店ではこの作者の作品を褒めちぎっているところを多く見かけますが 成る程肯けるはずです。

 また言葉使いが現代若者大阪言葉のような 荒っぽいぞんざいなものではなく 声に出したいような美しい上方言葉で綴られていて(御料さんの話し方など)嬉しくなります。

 また庶民の江戸弁も 活き活きしていて気持ちよく楽しめます。

 ・・・と手放しで誉めている 感想文ですが 最初の感激から離れない様しっかりと読み勧めたいと思います。

 とにかく素直に泣けます。ポジティブになれます。

下天は夢か 四

2014-01-27 | 読書
津本陽氏著 四巻は長篠の戦いから本能寺の変まで

いよいよ信長は狂ってしまいます。頭の狂ったコンピューターのはじき出す答えは皆殺しです。

津本氏はここでは家康にはあまり興味がないようですが、秀吉贔屓だと感じる文章が多く 山岡荘八氏や隆慶一郎氏の家康びいきとはまた違うところです。

ただし秀吉はまともな武将ではなく アウトロー達の棟梁達の頭目的色合いが濃く書かれています。彼の姿は活き活きしていて魅力的です。 


光秀が狂気の信長を殺さなくても 秀吉が信長を倒したでしょうし 誰かが信長という殺人兵器を止めたでしょう。

信長は踏んではいけない地雷を自ら進んで踏んでしまったのです。家来が主人に命懸けで忠誠をつくすのは信頼関係があるからで、それが無くなれば主従関係は成り立ちません
  「是非もない」信長自身わかったからこそ気がついて出た言葉です