ハンナ・バチェラー
画家の経歴は不明だが、かなり若い画家らしい。
今の時代の幽霊を何の疑いもなくそのまま描いている。
これは、嘘で全部自分を作った人の末路の一例である。
人から顔を盗み、形どころか色や性質まで、全部作り変えてしまった人間が、年をとるとこういう感じになってくるのだ。
まるで仮面のようだろう。顔が今にもとれそうだ。
舞台から下りれば、この人間は猿のように小さく汚いものになっているのである。
全部盗みで自分を作り、人に自分をやってもらい、自分は何もしなかったにもかかわらず、ひどくいい人生を味わったからだ。
何もしなかったがゆえに、中身が変容し、それゆえに顔がむやみに馬鹿になってしまったのである。
馬鹿になったとは、要するに、人間の運命を作る何かが崩れてしまい、自分の運命ががたがたにくずれてきたということだ。それゆえに顔が地震を起こしたかのように崩壊したのである。
まるでホラー映画に出てくる妖怪のようだ。この顔を見て、ぞっとしないものはいまい。
人間が嘘で自分を作りすぎると、こうなることがあるという、良い例を教えてくれる絵である。