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リープの科学は、滅菌するように、あらゆる人間の苦しみを殺していった。産みの苦しみから解放された人類は、わたしという存在によって、不死への可能性も見たのだ。わたしというものが、これからどういうことになっていくのかを、リープ人はつぶさに研究していくつもりだった。どれくらいの長い間生きるのか、どれくらいの厳しい環境に耐えられるのか。
実際わたしは何度か、砂漠の環境に一人取り残されて、自分だけで生きるということをやらされたことがある。最初のうちわたしは、何もない砂漠の環境の中で途方に暮れたが、やがて自分の中である種の変化が現れるのを感じた。
水も飲まないのに、わたしは渇くことがなかった。尿を排出することもほとんどなくなった。わたしの体内の中で、わたしが生きるのに必要な水が、作り出され始めたのだ。不滅因子は見事な機能を、わたしの中に作っていた。
またわたしは、三日間も海の中に沈められるという経験もした。最初のうちは、息ができないことにもがいたが、体はすぐに慣れた。体内で不滅因子が活動し、呼吸に必要な大気の成分を作り始めたのだ。見事なものだ。
研究が進むにつれ、わたしの不滅性は確実なものになっていった。怪我をしても、わたしの肉体は尋常ではない速さでそれを修復した。また癌細胞などを作る因子は徹底的に排除されていたので、内臓疾患になる可能性も低かった。
父にとって、わたしは、まさに理想の生命体と言ってよかった。父は常にわたしを愛してくれていた。わたしは、父の望みのために、研究が課すあらゆる試練に耐えていこうと思っていた。愛していた。あの人が、父が、わたしは世界で一番好きだった。
(つづく)