今日はゴールデンウィーク後半戦の初日、憲法記念日です。1947年に施行されてから78年経ちますが、そろそろ戦勝国押し着せ憲法から脱却してもいい頃だと思っているのは私だけでしょうか。
ところで、折角の祝日になんですが、今日はビーバーの祥月命日です。

ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644〜1704)は、代表作《ロザリオのソナタ》などで知られるオーストリアの作曲家でヴァイオリニストです。
ビーバーは、ボヘミアのヴァルテンベルクに生まれました。若きビーバーは、作曲家でありオーストリア最高のヴァイオリニストと称されていたヨハン・ハインリヒ・シュメルツァー(1623〜1680)と早くから親交があり、そのシュメルツァーに作曲を学んだと考えられています。
ヴァイオリン音楽は当時イタリアが国際的に高い評価を獲得していて、オーストリアでもイタリア様式のヴァイオリン音楽が支配的でした。しかしビーバーはそれを覆す活動を行うことに成功し、当代最高のヴァイオリニストとしての評価を不動のものにしたのでした。
ビーバーは1671年からはザルツブルクで活躍していて、1679年には副楽長、1684年には宮廷楽長に就任し、以後亡くなるまでこの地位にありました。死後になりますが1690年には貴族に叙せられていますから、余程その信頼は厚かったのでしょう。
そんなビーバーの祥月命日である今日は、《レクイエム ヘ短調》をご紹介しようと思います。
ビーバーは《レクイエム》を2曲作っています。1687年に作られた15声部の《レクイエム イ長調》は編成も大きく演奏時間は40分以上かかりますが、今回ご紹介するもう一つの5声部の《レクイエム ヘ短調》は編成はよりコンパクトで、演奏時間は30分もかかりません。
このヘ短調のレクイエムは、どのようなきっかけで作曲されたのか分かっていません。聴いていると分かりますが、全体的に短調ならではの重苦しい雰囲気が漂っています。
「入祭唱」では和声的なホモフォニーの部分に挟まれて多声的なポリフォニーの部分があるという対称的な構成となっていて、さらに「キリエ」と「アニュス・デイ」とでは使われているテーマがともに短調の音階をそのまま使うというシンプルさで全体的な統一が図られています。そこに劇的な「ディエス・イレ」やメロディアスな「ベネディクトゥス」などが加わり、音楽的に非常に充実したレクイエムとなっています。
そんなわけで、今日はビーバーの《レクイエム ヘ短調》をお聴きいただきたいと思います。アンサンブル・オルランド・フリブールの演奏で、静謐な響きのレクイエムをお楽しみください。