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共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はディニークの誕生日〜ハイフェッツ独奏による《ホラ・スタッカート》

2025年04月03日 15時55分51秒 | 音楽
今日も神奈川県は冷たい雨の降る、生憎の天気となりました。この雨で心配される桜の花の状況ですが、とりあえず今のところ花散らしにはなっていないようです。

ところで、今日4月3日はディニークの誕生日です。

『…誰?』

と思われるかも知れませんが



グリゴラシュ・ディニーク (1889〜1949) は、ルーマニアのヴァイオリニスト、作曲家です。

ディニークはクラシック音楽とポピュラー音楽の両分野で活躍し、



ヴァイオリニストのヤッシャ・ハイフェッツ(1901〜1987)からは

「今まで聴いた中で最高のヴァイオリニスト」

と評されました。また、ロマ(ルーマニア・ジプシー)の権利向上に尽力し、ルーマニア・ジプシー(ロマ)総連合の名誉会長を務めた人物でもあります。

1889年4月3日にブカレストの音楽一家に生まれたディニークは、1902年から1906年までブカレスト音楽院にて学びました。1906年から1908年には公教育省(日本でいう文部省)付属オーケストラのヴァイオリニストを務めたほか、ブカレスト・フィルハーモニー管弦楽団のソロ・ヴァイオリニストやブカレスト・プロムジカのヴァイオリニストとしても活躍し、1906年から1946年にかけてポピュラー音楽コンサートの監督も務めました。

ディニークはイギリス、フランス、ベルギー、アメリカなどへ演奏旅行を行い、ホテルやレストラン、ナイトクラブやカフェでも演奏していました。ディニークは「芸術音楽」と「大衆音楽」を区別することはせず、自身のリサイタルでは古典派やロマン派の作品とならんでルーマニアの伝統音楽も演奏しました(ディニークの演奏はいくつか録音が残されています)。

また、ディニークは20世紀初頭のルーマニアにおけるロマ(ジプシー)の解放運動の中心人物でもありました。1933年10月8日に開催されたルーマニア・ジプシー総連合の第1回大会では、同連合の名誉会長に任命されました。

そんなディニークの誕生日である今日は、代表作《ホラ・スタッカート》をご紹介しようと思います。タイトルだけだと何のことだか分からない方も多いかと思いますが、少なくとも大人の方ならどこかで耳にしたことのある曲です。

ディニークはルーマニア民謡を採集していて、それらの民謡を用いたヴァイオリンとピアノのための作品を何作か残しました。その中でも特に有名なのは、ブカレスト音楽院を卒業する1906年に作曲した《ホラ・スタッカート》です。

1929年にブカレストのカフェを訪れた際、ディニークによる《ホラ・スタッカート》の演奏を聴いたハイフェッツは16,000ルーマニア・レウ(現在の日本円で約52万円)で曲の権利を買取り、共同製作者というクレジットのもとで編曲版を出版する契約を結びました。ハイフェッツ編曲版は1932年に完成し、以降ハイフェッツのレパートリーとして有名になりました。

ハイフェッツが何度も《ホラ・スタッカート》を演奏したり録音したりした結果、この曲はヴァイオリンのためのアンコール曲として親しまれるようになりました。ハイフェッツの編曲で特筆されるのは、多くは32個ほどの音を一弓でスタッカートで鳴らす『ワン・ボウ・スタッカート』の指定があることで、その指定がアップ(上げ弓)でもダウン(下げ弓)でも出てくるのがヴァイオリン奏者の悩ませどころです。

なお、《ホラ・スタッカート》はヴァイオリン以外の楽器でも演奏されていて、フルート編曲版やサクソフォーン編曲版、チェロ編曲版が存在しています。この曲をチェロで弾いた奏者の一人が



アメリカの名手リン・ハレル(1944〜2020)で、1984年頃の動画を観るとアップでもダウンでもニコニコしながら弾いていて驚かされます。

そんなわけで、今日はディニークの《ホラ・スタッカート》をお聴きいただきたいと思います。ヤッシャ・ハイフェッツによる超絶技巧が光る独奏で、軽妙洒脱なディニークの名曲をお楽しみください。



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