昨日の夜半、一通のメールが届きました。発信元は私が現在弾いているヴィオラの元の持ち主のお身内。
嫌な予感が駆け巡りました。
恐る恐る開いてみると、やはり元の持ち主の訃報でした。しかも、他界されたのは何と今月8日で、葬儀告別式等は故人の遺志によって近親者のみで執り行われており、納骨まで終わっていました。
ALSのように徐々に全身の運動機能が失われていくという進行性の難病に罹られたのをきっかけに、まだ意思疎通が出来るうちにと私に愛器を託して下さいました。それから何度かお見舞いにも伺ったのですが、今思い返しても決して十分に伺えたわけではありませんでした。日常に忙殺されていたこともありましたが、伺う度に症状が進んでいく姿を目の当たりにすると、かつてアグレッシブに動いておられた御当人に何と声をかけていいものか分からなくなってしまったことも、足が遠退いてしまった一因でもありました。
思えば先輩とは、いろいろなところで演奏を御一緒しました。あちらのオケ、こちらのアンサンブル、交響曲やオペラにも一緒に参加して、プルト(二人一組で座るオーケストラでの弦楽器の席配置)で隣になったことも何度もありました。練習帰りにはプチ打ち上げもし、楽しいお酒を呑んだことも何度もありました。
二周りほど年の差があったこともあり、御一緒する中でいろいろなことを教えて頂いたこともありました。まだ私が若い時分には、ともすると熱くなりがちな私を年長者として諌めて下さったこともありました。あの楽しかった日々は、私が此岸に住まう限り、もう再び訪れることはありません。
よりにもよって明日は来月のガラコンサートのゲネプロの日なのですが、正直なところ、こんな時にどんな気持ちでモーツァルトのあの明るいフルート四重奏曲をすればいいのか分からなくなっています。メンバーには悪いけれど、とてもあのルンルンな曲を演奏出来るような気分にはなれないのです。
でも、そんなことを言っていたら絶対に先輩に叱られてしまうことも分かっています。何とか明日までに打ち沈んだ気持ちを、出来るところまでジャッキアップしてみようと思います。
結びに、これまでの私の音楽人生の一番濃密な時期に関わって下さった故人に最大限の感謝と哀悼の念を贈らせて頂きたいと思います。
本当に有り難うございました。
合掌。