今日は朝から冷たい雨の降る、生憎の天気の日曜日となりました。そんな中、今日は自宅でひたすら練習していました。
実は来月に合唱団との本番があり、先日その演奏会の楽譜が送られてきたのですが、その中にあるのが、

フランツ・シューベルト(1797〜1828)の《ミサ曲第2番 ト長調 D167》です。最近の本番はかつて演奏したことのある曲がほとんどだったのですが、今回は久しぶりにお初の音楽です。
《ミサ曲第2番 ト長調 D167》は、シューベルトが18歳だった1815年の3月はじめに作曲したミサ曲です。1週間もかからないスピードで書き上げられたこのミサ曲は、3曲の小ミサ曲やミサ・ブレヴィスのうち最も広く知られている作品でもあります。
この前年の1814年にはシューベルトの教区教会で《ミサ曲第1番 ヘ長調 D105》が披露されて、大成功を収めていました。その時に、オーストリア宮廷作曲家でありシューベルトの師でもあったアントニオ・サリエリ(1750〜1825)はシューベルトを抱擁して
「君は私にもっと多くの名誉をもたらしてくれるだろう」
と言ったのだそうです。
そして、翌1815年の3月2日から7日にかけて《ミサ曲第2番ト長調 D167》が書かれました。恐らくはこれもシューベルトの一家が通うリヒテンタールの教区教会での演奏を念頭に置いての作曲だったと思われています。
しかし、楽譜はシューベルトの死後数年経った1845年まで出版されず、信じ難いことですが、その時まで作曲者の知られない楽曲のひとつでした。あまりに無名なため、初版はプラハの聖ヴィート大聖堂で音楽監督を務めたロベルト・フューラーという人物が自作と偽って発表していたほどでしたが、時とともに真の作曲者がシューベルトであることが明らかにされ、現在でもシューベルトの宗教音楽の中で人気を博しています。
《ミサ曲第2番ト長調 D167》はミサ・ブレヴィス(略式ミサ)のスタイルで書かれたシンプルな編成の音楽ですが、そこは歌曲王シューベルトのミサ曲らしく、親しみやすく美しい旋律が随所にちりばめられています。ソプラノのためのパッセージ群を別にすると差し挟まれる独唱は控えめで、シューベルトの性格として祈祷的な雰囲気に満ちたミサ曲です。
《ミサ曲第2番ト長調 D167》は元来ソプラノ、テノール、バス独唱と合唱、弦楽合奏とオルガンのみを必要とする、小規模な編成の作品でした。しかし、1980年代にシューベルトの総譜よりも新しい日付の記されたパート譜がまとまって発見され、作品の最終的な構想がトランペットとティンパニのパートを加えて全体に細かい修正を施された、より大きな規模のものだったことが明らかとなりました。
これを受けて、管打楽器を加えた増強版の総譜が出版されました。またこれとは別に、シューベルトの兄のフェルディナントが作品の人気に応える形で木管楽器、金管楽器とティンパニのパートを書い加えている版も存在しています。
そんなわけで、今日はシューベルトの《ミサ曲第2番ト長調 D167》をお聴きいただきたいと思います。今回は管打楽器を伴わないシンプルな弦楽合奏版の演奏で、美しいシューベルトの祈りの音楽をご堪能ください。