今日は朝から空一面に雲の広がる、日差しの乏しい一日となりました。気温も予報ほどには上がらず、肌寒さを感じる陽気となりました。
ところで、今日3月17日は

ショパンの《ピアノ協奏曲第2番ヘ短調》作品21が初演された日です。
《ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調》は、ポーランドの作曲家であり音楽教育家でもあったユゼフ・エルスネル(1769〜1854)の元で《ピアノソナタ ハ短調》や《ピアノ三重奏曲》を書いて経験を積んだショパンが、ピアニストとして名を挙げるために満を持して作曲した作品です。第2番とありますが、実際には第1番よりも先に書かれたショパン初のピアノ協奏曲です。
初めての大作ということもあって曲は第1番よりも自由な構成を持つ一方で、随所に様々な創意がこらされています。現在では《夜想曲第20番(遺作)》として有名な作品《レント・コン・グラン・エスプレッシォーネ》にはこの協奏曲の第1楽章や第3楽章からの断片的なモチーフが引用されていますが、《ピアノ協奏曲第1番 ホ短調》に比べて演奏回数はやや少ないのが現状です。
ショパンのピアノ協奏曲では、第1番同様にオーケストレーションの貧弱さがよく指摘されています。この点についてはショパンのオリジナルではなく、管弦楽法に長じた他者により新たにオーケストレーションが施されたためだ…という主張があります。
その証拠としては、現存する自筆スコアの管弦楽部分が他人の筆跡で書かれていてショパンの直筆はピアノパートのみである点が挙げられていますが、ショパンが友人らと一緒に写譜したものである可能性もあるので断言はしにくいものとなっています。しかし、第3楽章の弦楽パートにコル・レーニョという特殊奏法を取り入れていることなど、ショパンがオーケストレーションにあたって自分なりに創意工夫を凝らしたことは明らかです。
《ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調》は1830年に完成され、同年の3月17日にワルシャワで作曲者のピアノ独奏により初演されました。作品は、パリで親交を結んだデルフィナ・ポトツカ伯爵夫人に献呈されています。
第1楽章はマエストーソ、ヘ短調 4/4拍子の協奏風ソナタ形式。
オーケストラによる提示部は、問いと答えのような第1主題、オーボエによって提示される変イ長調の第2主題からなっています。ピアノソロがドラマティックに登場すると、熱い音楽が繰り広げられていきます。
第2楽章はラルゲット、変イ長調 4/4拍子
の三部形式。
この楽章は、当時ショパンが恋心を抱いていた、コンスタンツィヤ・グワトコフスカへの想いを表現したと友人ティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛ての手紙で述べています。中間部は変イ短調に転じ、弦の刻みの上にユニゾンで激しいレチタティーヴォ風の音楽が展開されていきます。
第3楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ、 ヘ短調~ヘ長調 3/4拍子のコーダを持つロンド形式。
ポーランドの代表的な民族舞踊であるマズルカが基になっていて、中間部は弦楽器に弓の木の部分で弦を叩くコル・レーニョ奏法が指示され、ピアノもユニゾンとなります。コーダはヘ長調に転じ、ホルンのファンファーレによって明るく華やかに終結します。
そんなわけで、今日はショパンの《ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調》をお聴きいただきたいと思います。アルトゥール・ルービンシュタインのピアノ、アンドレ・プレヴィン指揮によるロンドン交響楽団の演奏で、第1番と並ぶショパンの名作協奏曲をお楽しみください。