作曲家・趙 顕市の「愛別釜山港」

私が作詞・作曲した「愛別釜山港」「野ばらあなたたち」の紹介。歌は韓国の「ソン&リー」という姉妹歌手が歌っております。

歌に耳澄まし、思い出して涙(火傷の魔の接吻その3)

2010-04-11 11:29:44 | Weblog
 書きたい事は沢山あるんですけれど、日々の仕事と、アルコールの飲みすぎで、中々書けません。ああ、本当に自由になる時間が沢山あれば良いのですが。次に書き記します文章は、約2年ほど前になるでしょうか、朝日新聞社様の「声」の欄に掲載して頂きましたものです。お読みくだされば、はなはだ幸甚です。

  精いっぱい生きてきた。
  日本に生まれ育った在日朝鮮人3世として。
  寝室で一人演歌を聴く。
  川中美幸さんの歌声がなぜか胸に切なく響いてくる。
  思えば人生は短い。いつしか私も老境の入り口にいる。
  歌声に耳を澄ませば様々な思い出がよみがえる。
  2歳で足に大やけど。あとが残った。
  低学年のときの身体検査、
  初恋の人からのつらく悲しい言葉。
  半パン姿の運動会は嫌だった。
  朝鮮人としての目覚め。
  幾度かの失恋。
  幾度かの素晴らしき出会い。
  妻との運命の出会い。

  優しい母親だった。かなりぼけてしまったが。
  母のキムチの味が忘れられない。
  大根の葉のみそ汁、サケの頭、ご飯のごま油いため、卵だけの茶碗蒸し。
  怖い父親だった。よく拳で殴られた。
  凍てつく夜。家の前で罰としてさせられた腕立て伏せ。
  近所では「仏の哲っちゃん」。家では「鬼の哲ちゃん」。
  幾度泣かされたことか。
  今夜は娘が焼肉をおごってくれた。
  民族学校の教員だ。
  珍しく私は酔っ払ってしまった。
  ひと粒、ふた粒、涙がこぼれ落ちる。