【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

水の中の 出来事 。

2007年01月09日 14時42分46秒 |  【 踊り妓 】   
    


目覚めた時ぃ 直ぐにぃ

昨夜ボギィーママぁに、強引にぃ約束させられた
今日の夕方にぃ観に行く 「踊り」 のコトが、頭に浮かんだ。
出来ることなら、此の侭ぁ、明日の朝まで寝続けていたかった。 
布団の中で、悶々ッと為って、愚図愚図ぅっとしていた。
布団、頭から被って、ワザとな一人寝たフリぃやった。

寝起きの耳が、微かなぁ、アパートの狭い階段を、駆け上がってくる音ぅ拾った。
足音は、運動靴。 毎日ぃ今頃の時間にぃなるとぉぅ聴こえるぅ
聞々ぃ慣れたゴム底のぅ靴の音 っと、固いぃ木ぃが軋む音ぅでした。
二階の廊下ぉぅ、軽やかにぃ走ってきていた。

近づいた足音ぅが止んだら、自分の部屋の小さな玄関から音が。
薄いベニヤ作りの 開きの扉の、金属の郵便受け蓋が、内側に開く音。
続いて、夕刊新聞紙が、土間に落ちる音。
っで、扉の横の呼び鈴(ブザー)ボタンが、乱暴に二回叩かれる音。
二回鳴ったブザーの音が消える間にぃ、足音、遠のいて行った。

「チッ! 」 舌打ちして、起きました。



チャリンコ(自転車)で夕方頃ぅ、ママぁの店にぃ着いたらぁ、Fが居った。
今ぁ 起きたぁみたいな、ツンツンって跳ねた髪の毛してる。
開店前のぅ、店の掃除のぉ お手伝いしてたぁ。
自分は、店の妓が入れてくれた、珈琲啜っりながら
持ってきた夕刊広げて、読んでる振りぃしてた。
時々ぃ腕時計、盗み見しながらやった。

おっちゃんが、未だやったから。

やっぱしぃ、酒の上の約束わぁ、アンガイぃ守れんもんなぁ!
って、想っていたら、店の白い扉が開け放たれた向こうから、聞こえてきた。
店の前の裏路地の向こうの、通りにぃ、トラックが急停止する音が。

路地に、ジィーゼルエンジンの音が響いて、重たいドアが閉まる音。
大声で、ナニやら礼ぉぅ、怒鳴ってるようなぁ ・ ・ ・ ・ !
直ぐに、乱暴に地面蹴る靴音。 走ってくる靴音。
おっちゃん、安全靴踏み鳴らして、走って来はった。

大きな風呂敷包みぃ 抱えてっ!


「わぁ~! マッまにおうたかぁ? 」

黄色いヘルメット、カウンタァ~に置きながら息整えてる。

「なにぃ、急いでるんねぇ! 」 今はまだ、化粧ッけのマッタクない、能面顔のママ。
「なにぃ、言うてるやぁ~ママ!っ、みさちゃんの踊り観るんやでぇ!
  間に合わんかったら、あかんやろぉ! 」

「!ッ、ふぅ~ん そうかぁ、でぇそれえなんやねんなぁ? 」
「これかぁ、これなぁ ・ ・ ・ ! 」


喋りながらぁ、大事そうにぃ風呂敷包みのぉ、結び目ぇ解いたぁ。
広げたら、見るからに仕立ての良さそうな、上等なぁ礼服がぁ! ・ ・ ・ 出てきた!!
真更なぁ、ピカピカにぃ磨きこんだ、革靴もぉ!
踝のところにぃ、アルファベットの崩し文字がぁ刺繍された、靴下もぉ!
襟がキッチリ立ってる、真っ白なぁワイシャツぅ~!


「此れにぃ着替えるさかいになぁ 」 

腰のぅ安全帯ベルトぉぅ緩めて、ニッカズボン脱ぎ始める!

「あんたぁ、ウチかてぇ女なんやでぇ~! 」

笑いながらママぁ、目配せぇ こっちに飛ばした。


走りましたわぁ! 近くの貸衣装屋さんまでぇ!
行くって、ママがぁ電話で言っててくれてたさかいにぃ
直ぐに取って帰って 裸ぁ~!
掃除してた店の妓たちぃが、おおハシャギ!

Fだけがぁ、静かにしてたなぁ。
なにがぁ? 始まるねん? やった。

着替えたら、ママが言うたわぁ!
まぁ~! 普段見ぃひん格好ぉ、見れたわぁ! って。

 ニヤニヤぁ、お笑いでんねん。



「えぇ! コッ、此処? ・ ・ ・ ぉぅ! 」

 格ッ好ぅ、キッチリお決めのぅ、オッチャン。 花束ぁ抱いてます。

「そぉうやぁ~、何ッ処にぃ行くぅ想うてたん? 」

 ママぁ、涼しく言い放ちました。

「!ッ おぅ! えッ!ぇ ・ ・ ・ ・ 何でぇ? 」
「何でってぇ、何ッ処にぃ行く想ってたん、日劇かぁ?市民会館かぁ?あんたぁ 」
「ソッそやけどぉ、此処ってぇ! ぁあぁ~ぁぃやぁ~! ほんまかぁ!ぁ 」
「なに虚ってまんねん!アンサン! さぁ~入るでぇ 」
「あぁ! いやっ、うん! ワッわかったわぁ!しゃあないわぁ! 」


入って、一番後ろ付近の席にぃ座って、開演時間待ちぃ。
キッと日頃は、職人相手にぃ、タブン怒鳴り散らしてるかもなぁ おっちゃん。
静かにぃ座って、落ち着きなくぅ太腿ぅ 揺すってる。

ママぁわぁ 消えはった。 仕方ぁないわなぁ!
Fわぁ、物珍しそうにぃ アッチこっちぃ見回してた。


みさこはん、此の世界でわぁ 新人さん。
だからぁ、演目の一番最初が 出番やった。

灯りが消えて、琴乃音。
舞台のぅ両袖の上辺りからから、虹色のスポットライトが走りました。
其れが消え、小さな劇場内が真っ暗になたら、舞台の真上からのぅ光の柱ぁ!

眩しい光の中にぃ、赤色だけのぅ、簡素な浴衣姿の女はん!

煌びやかな扇で隠して、伏せてた顔ぅ上げたら
昨晩にぃ見たぁ みさこはんとわぁ 違う顔してた。
元の顔が判らん位にぃ、舞台化粧がケバかった。
細いぃ首筋にぃ真っ白な、白粉がぁ~!

けど、みさこはんでした。
自分、眼の遣り場にぃ ・ ・ ・ ・ !ッ

おっちゃん、横目で視たらぁ顔ぅ 下にぃ やった。
自分、肘で思いっクソぉぅ! 突いた!
おっちゃん。 呻いた!


「観てやらんのんなぁ ! 」
「 ぇ!・ ・クゥ~イッタァ! ・ ・ 」
「なにしにぃ来たんやぁ! ボケッ!帰れ! 」
「ッ! ・ ・ ・ ッテ 」
「観な、失礼と違うんかぁ! 観ぃひんかったらぁ帰れやぁ! 」
「ワァ、わかった! 観るがなぁ! 」


みさこはん、踊りながらぁ客席のぅ 真ん中までのぅ
張り出し舞台にぃ 滑るようなぁ脚さばきでやって来るぅ!


綺麗なぁ 乳房ぁしてたぁ!
綺麗なぁ 肩ぁしてる!
綺麗なぁ 腹 ・ ・ ・ ・ ぁ!
綺麗なぁ お尻ぃ してるねんやぁ !

踊りぃ お世辞にも上手くなかったぁ
それでもなぁ 一生懸命にぃ 踊ってはった!

一曲終わって 直ぐに場内が少し明るくなった。
客席がまぁまぁ、見渡せる程度のぅ灯りぃ。
続けて、次の曲ぅ。 みさこはん、踊りながら客席見て、捜す様な視線。

突然!Fが、持ってる花束ぁ持ち上げて、振り回したぁ!
おっちゃんもぅ 揚げた。 釣られて、わてもぉ!


他のお客さん、なんやぁって、こっち観だした。
まぁ~! ・ ・ ・ ぁ ワイらぁ 浮いてたわなぁ。
礼服着てるん わてらだけやでぇ!


おっちゃん、ナにぃ想うてかぁ、舞台めがけて小走りぃ!
自分、連れ戻しにぉ追いかけた!
追いついたら、おっちゃん、舞台の直ぐ下で、精一杯ぃ背伸びぃして見上げ
花束ぁ渡そうとして、捧げ持ってる。

みさこはん、驚いてた!

「みさこはん、綺麗やでぇ!ほんまにぃ綺麗やでぇ~! 」

おっちゃん、花束ぁ渡しながら言ってた。

「うん! ありがとうぅ!! 」
「これも、とってんかぁ 」

Fがぁ、おっちゃんのぅ肩越しにぃ、視線外しながら渡した。

「ぅうん、ありがとぉ! 」 泣き声やった。

わい、なぁんもぅ見えん様になってきた!
全部ぅ 水の中での出来事みたいやった。


慌てて席に戻った。

戻りかけに場内入り口見たらぁ、ママがぁ警備員と話してはった。
ママぁ、引き止めてくれてたんやぁ!


公演が全部終わって、劇場出る時ぃ
同伴出勤の、倶楽部の女はん達に見つかった。
なりが悪ぅて悪うて、ホンマニィたまらんかった!



  

夜が深まれば ・ ・ ・ ・、 心もぅ !

2007年01月09日 11時07分09秒 |  【 踊り妓 】   
【 続きですぅ 】




暗い夜道ぃには、気安さが生まれます。
夜の暗さが、お互いにぃ人を近くに感じさせます。
そしてぇ、今までどぉうしても 届かんかったもんでもぅ
摑めるようなぁ気ぃにぃ、させるかもぉ ・ ・ ・ ぅ。 

けどぉぅ ・ ・ ・ 、ナンかぁ ナンかぁ知らんけどぉ ・ ・ ・ ぅ。
ぅん 解ってる。 けどぉぅ、口にぃ出して言うとぉ
何ッ処かにぃ、何ッ処かにぃ
逃げて逝ってしまう かもなぁ ・ ・ ・ ・!ッ



大人の男のぅ躯から、力の抜けてしまった、お人さん。
此れほど運び難いもん! あんましぃ

ないでぇ~!


店の前の狭い裏路地から、タクシー停まってる道まで運び
乗せて、座らせて、シートにぃ倒れんように支える。
車内わぁ、煙草のヤニ臭いのと、饐えたようなぁ変な酒精の臭いがぁ~!
自分、あんまし酔っぱらてなかったけど、気分が悪く為ってきそうやった。
運ちゃんは、お慣れかしれんけどやぁ~!


運ちゃん、深夜晩くまで輪ッパ握って、酔い客乗せ
いい加減、嫌になってるんやろなぁ!
投げ遣り、問いかけみたいやった。

「どちらぁまでやぁ ? 」 っと。


「競馬場方面やってかぁ 」 知らん振りぃの わい。
「えッ!ぇ、知ってるんですかぁ? 」 Fぅ支えている女。
「うん、知ってるでぇ 」
「さっきぃ お店で知らないって 言ってましたやんかぁ? 」
「うん。 ママぁかて、知ってて言ってるんやでぇ 」
「ふぅ~ん ・ ・ ・ そうねぇ、わからんとぉ、うちぃ 」
「何処ぅ、国(故郷)ぃ? 」
「長崎ですぅ 」
「うん、えぇとこみたいやなぁ! 」
「ぅんぅ ・ ・ ・、 でもぉ ・ ・ ・、 いぃやぁよかとこですとぉ 」
「なんやぁ? どないしたん? 」
「うん、何でもないですぅ 」


Fのアパートまで、其れ以上 喋らんかった。
時々ぃ聴こえる音量絞ったタクシー無線とぅ、ワイパーが硝子ぅ擦る音ぅ
止まんかったですぅ、じっとぉ、降りるまで聴いてましたぁ!
近い所がぁ 永く乗ってるみたいにぃ感じましたぁ 。


よれよれなぁ Fぅ背負って、古いぃ木造襤褸アパート
外付けで雨で濡れた鉄の階段、滑らんようにぃ登って
漸くFの部屋の前。 Fぅ扉の反対側の、柵に背中をぅ。
F顎落ちで、首の後ろのぅ ボンの窪みが視えてた。

自分、息ぃ喘がせながら言いました。

「じゃぁ、カッ帰るなぁ~! ぁんたも早ぁにぃ寝るんやでぇ 」
「えぇ~! 晩いからぁ泊まっていってくださいぃ 」

っと、薄暗いぃ部屋の前で、バックの中にぃ手ぇ突っ込んで掻き回し
部屋の鍵ぃ捜してた、娘がぁ。


仕方がないので、玄関框に運び込んでやった。
其処にぃ、寝かせた。

「ぅん、えぇ。 タクシー待たしてるさかいにぃ、じゃぁ 」
「そぅですかぁ、でもぉ此の人ぉ、此処でよかやろかぁ! 」
「うん。 ナンならなぁ、毛布でも掛けてやってかぁ 」
「ぇ! ・ ・ ・ぁ、 はいぃ、ありがとうございましたぁ ! 」

「うん、じゃぁ」


ドア、背中で閉めた。
濡れた鉄の階段、静かに下りた。

ほんとうわぁ、部屋の中にあがって、布団に寝かせてやりたかったんやぁ~!
でもぉぅ あいつの生活ぅ見るのが、わいにわぁ 耐えられんかったぁ!
そやさかいにぃ、逃げてきましたんやぁ!


タクシ~ィ 何ッ処かにぃ消えていた!
コナイナ時間やから、車も人もぅ ・ ・ ・ ・ ・ チクショウって呟いたぁ!
歩きました。 濡れてしまうけど、仕方がないなぁ っと。

夜明け近くにぃ自分のぅ 寝ぐらにぃ!
靴下ぁ、ビショビショにぃ 濡れてましたぁ~ぁ!!