【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

赤い爪の女 【バーテン】

2006年04月26日 02時03分42秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 


 【苛立ち】


突然っ 急に声をかけられると 言葉に詰まります。 っけど
同時に、自分でも思いがけなく 何かに向けての怒りの気持ちも生じます。
此の時にも 知らずに湧いた怒りで自分、戸惑いました。



「ちぃふうぅ。 真二さんなぁ  あ奴ぅ遣るんかぁ∼? 」
「 ぇ!っ  なにがやぁ 」

自分、物思いに耽っていましたから
赤い爪の女に突然 聞かれましたから戸惑いました。

 倶楽部の中は、静けさがっ でした。

時折、後のボックス席の潜々声 背中が聴きます。
冷や汗みたいに粘ついてる感じ 背中していました。
何時も爪を赤く塗っています、此の店の女のバーテン。
ただ、左の小指の爪だけは まるで金箔を貼り付けた様な

 綺麗な金色していました

以前、「何で そっちの小指だけぇ 金やねん? 」 って
   「教えんっ! 」 答えは 一言。


「決めよるんやろぉ 」
「 そやさかいに、なにがやっ! 」
「みんな言ってるよぉ 真二は遣る時はやるやろぉ って 」
「 くっ ! 」

先ほどカウンター席 右端、何処かの中年男の連れの女が 
紫煙細く吐きもって サファイア色のカクテル。

 っを、ご注文  っと、聞いた彼女。

手慣れた身の熟しで 背後のバックボードから
カクテル材料の洋酒の瓶 幾本かをカウンターまで。
其れ、流麗な手捌きでシェーカーに注ぎ キャップ蓋閉じ
クローム鍍金のシェーカーキャップに添えた右親指 額の眉間の高さに。
其の両肘、水鳥が水面すれすれを舞い飛ぶ様にぃ 開き閉じ
手首 彼女独特のリズムでシェーク。

振り終わる動作の流れで 客の目の前
清く磨かれたカクテルグラスに キッチリ注ぎます。
細いグラスの脚 摘み、綺麗な二指で押します。
 女の客の目の前まで

「 どぉぞっ 」
 っの 声添えて


「聞いてぇわるかったみたいやねぇ、聴かんかったことにしてぇなぁ ごめんなぁ 」
シェーカー屈んで洗いながら 顎上げて

「ぅん。えぇがなっ 此れおかわりしてかぁ 」
「 ぅんっ  堪忍やでぇ 」
「    ぇえっ 」

みんなが知っている。っといっても、多分 仲間内の事やろかなぁ
けどっ此の噂 何処まで? っと、少し焦りました。

「かきちゃん昨日なっ 多分あいつやと思うん来てたで 」
「 ぇ? あいつって誰や 」
「   なぁ、自分とは昨日今日の付き合いちゃうやろっ なっ 」
「 !っ あぁ 」
「なぁ、そんなら聞くけどなっ 何で教えてくれへんのん? なぁ 」
「 なにぉやぁ? 」
「真ちゃん、どぉするんねっ? 」

真直ぐ見詰めてくる 微動だにしない女の瞳 
自分の後ろの ホールの天井で輝くミラーボールの光 映してました。
 瞳がキラキラ光っていました。

女が吸う細長い亜米利加煙草 
赤いマニキュアの細い指に挟んで、此方を見据えながら 時折口元に運ぶ時。 
小指の金色爪 カウンター上のダウンライトで浮かび 光りました。
首ぃこっちに伸ばして、まぁるく窄めた唇から 吐き出しました。

 まぁるい輪っかの煙をぉ

輪っか、広がりながら自分の顔を過ぎて行きました。
自分、堪え切れずに目線 逸らしました。

「こらっ! かきぃ どぉゆぅ了見してるんやっ 」
「はぁ!っ りょリョウケン? 」
「 阿保に晒すんやったら ナンボでもしてえぇんやっで! こらっ! 」

此れ、決して大声で言ってるのでは無いです。
唇 ほんまに動かさないで 微笑んで言ってます。
煌く眼 笑わんと据わってますから 十分に伝わります。此方に。

煙草持つ腕 綺麗に伸ばして再び口元へ

「ねぇ∼ かきちゃんっぅ 教えてくれはってもえぇんとちがうぅ∼ 」

 もぉ堪らん位の猫撫で声でした。

喋り終えると、躯ぁ斜めに構えて顎引いて 細指ぃうなじの髪に突っ込み掻き揚げます 
目線逸らさずに。剥き出しの 白い脇が見えました。

 自分、目の遣り場がぁ∼!

「 なぁ、頼むからなぁ 似合わん事せんといてかぁ 」
「似合わんって 誰におっしゃってますんかぁ? 」
「あんたやっ!前にも言うたけどなぁ
  わてぇそないなぁ趣味ぃ 無いさかいになぁ 」
「あっ そぉかぁ  まぁカンニンして差し上げますがな もぉ!っ 」
「なぁ、なにもなぁ隠してるん違うんやでぇ 此れはなっ真二さんの問題やねん
  そやさかいにな、他人のわしらが どぉこぉぅ言う事とちやうねん
  其れぇ 解ってくれるかぁ? なぁ 」

其れから暫くは お互いに黙っていました。
バーテン女は 前を離れカウンターの洋酒の瓶を お片づけ
時間は、そろそろかなぁ? でした。

「かきちゃん、うちなぁ 心配やねんっ 」
「なぁんやぁ!っ ぅん? 」

顔上げて見たら バーテン女の眼に涙がぁ   !ぅ
自分、気分が滅入って来たけど 胸、高鳴るのがぁ   ! ぁかんっ 

「真ちゃん、此の事でぇ どっかに往ってしまうんちゃうかなぁ って 」
「 ま、まぁさかぁ! 」
「 泣きとぉなってくるわぁ∼! 」


泣きたいのは自分もやで っと
そやけど、仕舞いました。

 言葉を