【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

女と男の 昔話

2006年04月16日 00時34分24秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
    

 【聞くんじゃぁ無かった】


二人が 飯屋から居なくなってからの会話です。
 おかぁはんとの。


「あの二人、何時からやねん ? 」
「あんたぁ、ホンマに知らんのん? 」
「ぅん。知らん 」
「 ・・・・・そぉかぁ 」

おかぁはん。今夜は此処まで っと店仕舞いで 
汚れ皿を洗う手元を止め 自分の顔を暫くジッと視もって言いました。

「・・・・なぁっ、どぉなん? 」

おかぁはん目線 逸らしました。

「なになん? 」
「ほんまに知らんのんかぁ? 」
「・・・・・ぉかぁはん、なにがやぁ・・・・なぁ・・・? 」
「ぅん。ょっしゃ、わかった 」

洗い物、水切り籠に皿が割れるかとの勢いでぇ、置き
洗った布巾、無理やりのキツサデ絞り
両手で叩いて、後ろの棚並びのお皿に被せて言いました。

「ちょっと待ちっ 」 っと。

熱燗用一升瓶 流しの下から取り出し 
カウンター越しに 此方の自分に渡します。

「ほれっ 」 っと、 白い湯飲み茶碗、二つも。

カウンターから出て 引き戸に鍵をします。
陽焼けして黄色くなったカーテン 引いて閉めました。
っで、おかぁはん、自分の隣に座ります。
少し椅子を離して。自分、なんでか少し胸が高鳴りました。
 まさかなぁ・・・・! っと。

「あんなぁ・・・・なぁ、清美なぁ・・・どぉ言ぉかぁ 」

っと言い淀みながら 片手で持った一升瓶
二つの湯飲みに傾け 話し始めます。
自分 『ぁほっ、なに勘違いするねん! 』 やった。

「かきちゃん、あんたぁ口ぃかたいっ? 」
「ぇ、ぁっ、ぅん。かたいでっ 」
「絶対他にっなぁ やでっ 」
「あぁ、うん 」
「ぅんやぁないっ、誓いっ! 」
「ぁ、はいっ 」
「聞いたことぉ喋ったら 刺すからなっ 」
「!っ・・・・わかったっ 」

ぉかあはん普段から腹と胸に、白布の晒しを巻いてます。
別に妊婦帯でも無く、お腹が冷えるからでもないです。
胸の二つの膨らみ、白い晒し布で 無理やり押さえ込んでいます。

 気構えの為にです。
 生きて往く為の

其の晒しの中に、丁度今着ている前合わせの割烹着の 内懐辺りにです。
白鞘に入った 刃渡り一尺二寸程の刺身包丁、仕込んでいます。
おかぁはんの死んだ亭主が 店で愛用していた物です。
一度 おかぁはんが、カウンターの中で簀の子に躓いて 前のめり倒れた時
自分 大慌てで中に入って抱き起こしました。
其の時、思わず触れた胸の辺りに、長い硬い物がっ でした。

「ちぃ~ふぅ襲ぉたら刺されるでっ 気ぃつけやぁ 」 真二がカウンター覗き込んで。
「おぉきにっ、おおきになぁかきちゃん・・・・。シンジっ阿保ぉ言わんときぃ! 」

おかぁはん。抱き起こす自分の腕を邪険そうに振り払い 起き上がりました。
自分 見たらアカンもん、偶然見てしまった様な、感じでした。
其の時は其の侭、不自然な程 何事も何も無かった様に話の続き っでした。
おかぁはん。男勝りな此の気丈な 女将さん
今は飯屋の此の店。昔は連れ合いさんと二人で、でした。

 其の当時は和風の割烹スタンドで
    屋号は 【喜竹】

自分が聞いた噂では、ほんまに仲睦まじい
女将さんと亭主の 二人だったそうです。
今は寡婦となってしまった此の女の人の胸に 白い晒しが。
其の晒しに、刃渡り一尺二寸の刺身包丁。
何時も抱いてます 亭主の魂を 抱いているのでしょぉ。
化粧しなくっても 今でも綺麗な女の人です。

一人身になった女。独りで世渡り。
並大抵じゃぁ此の夜の世界では でしょう。
綺麗だからこその、身持ちの持ち様、生き様でしょう。
自分。此の人には、一目置いてます。
多分、あと三目くらいわぁ・・・! でした。


「清美と真二なぁ 幼馴染やねん 」
「!っ ほんまなん 」」
「ほんまやぁ 」
「ぅそっ! 」
「嘘言うてどぉするん あんたに? 」
「 ・・・・ 」

「あの二人なぁ・・・・・ほんまに他所で喋ってみぃ、刺すさかいになぁ 」
 
 眼。座ってました。
 おかぁはんのマナコぉ!



話が済んで帰ろうとしたら 外は夜が明けて来ました。
結露した引き戸の硝子越しに 早朝の表路を
通勤人が 背中を丸めて通って行きます。
外に出て上着の襟立て 振り返るとカーテン閉じてました。
バスの始発駅まで歩くのが きつかったん覚えています。

自分。こんなん聞く位なら、丼飯にビールぶっ掛けて喰った方が
未だ ましかもなぁ! っと そお時想いました。

 おかぁはんの話し聞いたから


其の晩(昼間)は、安アパートに戻ってから
生まれて初めて 記憶を無くす酔い方をしたいなぁっと・・・・ぉ
最初、幾ら呑んでも眼が冴えて眠れません。
だけど其の内にやっと、酩酊気分がぁ
自分の元々軽い頭は次第に重たくなって、卓袱台が近づいてきます。
頭が次第に重くぅなってきてます。
まるでスカスカの糸瓜みたいな脳味噌に
液体水銀が 其の隙間に染み込んで来てますぅ様ぉぅなぁ・・・! 

 お脳はズクズク水銀状態 っにぃでした。

 

  やがてぇ・・・・
想いは 何処までも、いずこへぇと
  何処までもぉ やった。