【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

夜の玄人 

2006年04月04日 00時58分50秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 


【先輩真二】


真二とは、此の時に知り合ってから、四年余りの付き合いです。

元々は、自分が此の世界に飛び込んだ 未だ駆け出しの頃に 
他店で始めて勤めだした時からの、知り合いです。

実は其の当時。自分と真二とはお互いに、反りは合っていませんでした。

此の世界で右も左も解らない自分を、最初に雇ってくれた某倶楽部店では、
此の真二が先輩でした。店では 真二、威張っていました。可也。
歳は 多分。 自分とはあんまり変わらないのかも?
っと言いますのも、未だにお互いの歳は知りません・・・・多分 真二も・・・
自分は昔から若く見られる方だし、真二は老け顔だからぁ・・・・
自分が入店してから少し経って、もぉ少しで店がハネる時間に
真二が厨房に入ってきて 誘ってきました。

「ぼぉやっ 慣れたんかぁ?」
「ぁ、はいぃ」
「そぉかぁ じゃぁ今から飯喰いにいこかぁ」
「ぇ!・・・・」

自分 嫌でした。此の男となんて。っと・・・・でした。

此の夜の世界では 兎も角。実力が物を言います。
 真二は、仕事が出来ました。

毎晩 店に遊びに来る、多様な客の扱いも巧かったし、
夜働く女達のアシライ方も慣れた者でした。
倶楽部の経営者も、真二を頼りしてました。
当時 店で働いてた男は、自分を含めて七人 。
カウンターと厨房で三人、ホールで四人でした。
自分は厨房で洗い方専門番で、滅多と其処からは出させては貰えません。
日毎、皿洗いの毎日が続いてました。
荒れてきていました、手が。洗剤焼けで、カサカサ状態
皮膚が粉吹き ひび割れ、赤切れしていました。

偶に、当時のチーフに用事で呼ばれ 厨房からカウンターに
其処からは、薄暗いホールのボックス席が丸観えでした。
真二さん。テキパキとされていました。
羨ましい程の身のコナシで テーブル席の間を泳いでいます。

 笑顔で・・・・客の前ではね、何時でも笑顔でした



先輩に誘われたら 絶対です。
況して此の世界、実力ある先輩の言う事は 聞くのが当たり前。
 自分、直ぐに諦めました。

店がハネてから仕方なく、真二さんの背中を見ながら付いていきました。
飯屋、路地裏にです。看板も上がっていません。
真二さん 慣れた手つきで軋む引き戸を開け、入ります。
自分も、入りました。煮しめた様な木の色の くの字カウンターだけの店でした。
薄座布団が載ってる腰掛に座り、黙っていても 丼飯と味噌汁お椀が目の前に。
頼みもしないのに、大瓶ビール、二人の間に。
当然の如く真二さん、自分の目の前にビヤグラス 突き出します。空の

自分この時。真二さんの顔を観ない様にして、酌注ぎしました。
自分の心、穏やかでは無くなり掛けていました。
「お前も飲め」 っと言われて手酌しました。
乾杯も何も無く、真二さん。イッキしました。

 追う様に自分もでした。


 自分、此の時
先に酔う方が勝ち っだと・・・・。勝手に思い込んでいました。
 っけど 其の読み、

 キッチリ外れました。見事に。