横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

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なぜ、私がオープンソースGISを支援するのか(第2部)

2009年02月19日 00時26分41秒 | OSGeo/FOSS4G
 第1部でも書いたが、日本でGISが普及するためには、ベンダーによるアプローチだけでは全然不十分である。だからオープンソースのGISツールの普及を通して、本当の意味で誰にとっても自由な普及展開を行うのが望ましい、と私は思っている。

 さて、そのオープンソース側であるが、「本当に使えるの?」という心配の声を未だに聞くことがある。そういう人たちは、GoogleやYahoo!のサービスのバックエンドが、オープンソースツールによって構成されている時代に生きていることを考えてもらえれば、と思うのだが...
 
 オープンソースのGISツールといっても、大きく分けてサーバー側のツールとデスクトップ側のツールがあり、それぞれについて状況がやや異なる。しかも、一口に”オープンソースGISツール”といっても、今や数百種類も世の中にあるので、玉石混淆だ。大変信頼性の高いものもあれば、逆にそうでないものもある。だから、「オープンソース」は不安定で、「商用ブランド品」は安定しているとかの比較論はあまり意味を持たない(当然商用製品にも秀作と愚作がある)。

 オープンソースのGISツールの普及は、サーバー側が進んでいる。MapServerやGeoServerなどのマッピングエンジン、PostGISのような空間データベース拡張ツール、OpenLayersのようなWebクライアントライブラリは、事業用に採用しても何ら問題のないパフォーマンスを提供してくれる。そればかりか、国際標準への対応やツール間連携の面では、商用ブランド品よりも圧倒的に対応が網羅的で早いため、GIS分野でサーバー側ツールにライセンス料を支払うこと自体のメリットが客観的に消滅してしまっている。

 一方、デスクトップGISツールの方だが、サーバー側ほどは進展が早くないのが実情である。それは「オープンソースコミュニティ」の進展が、インターネットの進展と共にやってきたことにも理由があって、開発者達が力を注いだのがサーバー側のツールだった。

 デスクトップGISツールの開発プロジェクトはGRASSがUNIXの時代から継続されているが、これは例外とすると、他のプロジェクトのスタートはそれほど古くはなくて、サーバー側のツールの開発プロジェクトと同じくらいか、むしろそれよりも遅かったりする。そんなこともあってか、「デスクトップGISツール=GRASS=Linuxでしか動かないし難しい」(注:今はLinux以外でも動く)というイメージも流布してしまっている。

 GRASSはラスターデータ解析ツールとして開発されたこともあり、そもそも汎用のGISツールではない。で、汎用のツールはというと、QGISuDigOpenJUMPgvSIGなど、ちょっと乱立気味なくらいカラフルな選択肢ができている。もちろん、いずれもWindowsで動作する。

 これらのツールは、Shapeファイルなど、既存のデータ資産をそのまま読み込んで表示・編集できるだけでなく、WMSやWFSなどの外部レイヤへのアクセス、PostGISなどのデータベースアクセスなどをほぼ標準で装備するなど、データ資産継承とシステム展開性に大変優れている。しかも、どれもベースは国際化対応されている。

 だが、QGIS以外の3種は、Shifr-JIS対応が未完了のようで、日本語のShapeファイルのラベル表示がうまくできない。この部分を「よし、やってやろう!」という人が現れれば、それほどの手間はかからないのではないだろうか。40万円もする商用のデスクトップツール数本分くらいのコストで済んでしまうものも多いだろう。私自身も、プロジェクトのチャンスに恵まれれば、その実現に貢献したいと願っている。またOSGeo財団があるので、ボランティアを募るのも手だろう。

 ともあれ、デスクトップGISツールも、オープンソースが”普通に使える”時代が現実あるいは実現寸前になってきている。開発の歴史が古い著名商用製品に比べると、提供機能は足りなかったりする部分ももちろんあるが、特にここ1~2年の進展はめざましく、まもなく沸騰点に達しそうだ。私が初めてオープンソースのGISのことを知った2003年始め頃に比べるとまさに隔世の感がある。

 オープンソースGISツールは、誰もが自由に、ほとんど制限を受けずに、利用、配布、改変ができる。しかも、用途や好みに応じた選択肢を提供してくれる。今まで、特定の商用製品の世界だけが「GIS」だと思いこんできた(思いこまされてきた)多数の人たちが、徐々に目を覚まして呪縛から解放されるだろう。

 市場としてのGISを考えてみると、”ライセンス料”が市場の根っこにあるようなモデルが何となく続いている。そのライセンス料がとても割高な日本では、市場が萎縮してしまっている。そうではなくて、多数の人が利用するからこそ、裾野の広い様々なビジネスが展開できるのだ。

 私の狙うところ、それは自由な利用によりGISを幅広く普及させることである。ソフトウェアツール、という視点から考えると、その鍵を握るのはオープンソースツールなのである。

 


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4 Comments

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こっちでも (かやま)
2009-02-19 01:16:30
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/build/1217571053/l50

mixiの情報で2chでGIS「フリーソフト」をめぐってののしりあいしているのを夕べしりました。
うちの会社はここのスレッドにもとりあげられないような同業者なんです。

ネットの発達とオープンソースの隆盛は従来型のクローズな技術によるビジネスとはパラダイムが違うんじゃないかと私は感じています。オープンソースプロダクトの品質が高くなり、それを利用する人の利益が高くなること、そのような状況を作るための動きに参加できないかか。

普通のネット系サービスやってるとこの基盤でオープンソースプロダクトを使ってないとこのほうが少ないのではないでしょうか。情報家電やら携帯電話のソフトウェアもオープンソース系が増えているわけでオープンソースは社会のインフラになっているといってもいいんじゃないかな。

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乗り遅れ (moritoru)
2009-02-20 00:00:26
「オープンソースは社会のインフラ」
かやまさんのコメント通りです。
なのに、”GIS”業界は10年くらい前の常識をまだ引きずっていると思います。競争の程度がIT業界と違って甘いので、保守的なところがあるんだと思います。その結果、ユーザーと業界全体が損をしているように思います。
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でもね (でもね)
2009-03-07 19:55:41
オープンソースGISは表示は問題がないかもしれないが、データ品質はどうだろうか?

 GDALと商用製品と比較すると細かいところで見劣りがする。これを解決するにはヒトとカネ(fund)が必要?
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Unknown (まーくん(レンタルサーバー研究者))
2009-03-08 22:29:43
まーくん(レンタルサーバー研究者)
です
またいいサーバーが出たみたいですね
ブログしか作れない人には関係ない話ですが
ブログよりホームページのほうが成約率、反応率は高いです
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