いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

記者会見のパソコン・・・相手の顔を見ず、パソコンばかり見ている記者が増えました。これは心配です。

2012年07月04日 23時03分12秒 | 日記

 民主党の内紛で、記者会見が増えています。
 首相会見のような大人数が入る会見から、離党した議員
の個人的な小さな会見まで、いろんな会見があり、テレビ
でも会見の様子をよく流しています。

 それを見ていて、これはちょっとまずいなと思うことが
あります。
 パソコンです。
 会見場に記者がパソコンを持ち込み、会見での発言や質
疑を、その場で、パソコンに打ちこんでいるのです。

 記者が、会見している人の顔を見ず、黙々とパソコンに
向かっている。
 これは、おかしいでしょう。

 きのうでしたか、小沢派の議員がひとりで会見をしまし
た。
 普段なら、議員がひとりで会見することはまずありませ
んが、いまは、離党するのか、新党に入るのか、ひとりひ
とりの議員の行動が重要になります。
ですから、個人の議員の会見でも、記者が出ます。
 ただ、そうはいっても、こじんまりした会見です。テレ
ビで流れている会見風景は、どこかの会議室を使った少人
数の会見でした。
長い机の端に会見する議員がひとり座り、机の両方に各
社の記者が並んで座っています。記者同士が、机を挟んで
向かい合って座る格好です。
 それが、異様なのです。
 机をはさんで向かい合って座っている記者が、みな、パ
ソコンを開き、会見する議員の発言を打ち込んでいる。
 議員は一生懸命しゃべっているのですが、記者たちは、
みな、パソコンの画面に没頭していて、会見する議員のほ
うを、だれも見ていない。

 これは、いったい、何なのでしょう。

 記者会見は、たとえば、記者の質問に対し、会見する人
がどんな表情で答えるのかを見て、回答の裏を探るのです。
 会見する人が、無表情にしゃべっているのか、笑顔で答
えているのか、怒って答えているのか、それによって、解
答の意味がまるで違ってきます。

 記者会見は、会見する人と、記者が、切り結んでいかな
ければなりません。
パソコンの画面ばかり見ていたら、相手と切り結ぶのは
無理です。

 実は、首相の会見でも、最近、一生懸命、パソコンを打
ち込んでいる記者が増えてきました。
 彼らは、首相の顔を見ていない。

 どうしてこんなことになったかというと、パソコンに会
見者、たとえば野田首相の発言内容をそのまま打ち込んで
いくと、会見の原稿を書くのが速くなるのです。

 会見に出る記者は、ノートやメモ帳を机の上に置き、会
見する人の発言をボールペンでノートやメモ帳にメモして
いくというのが、本来のスタイルでした。

 会見が終わったら、ノートに取ったメモを読み返しなが
ら、どういう原稿にしようかを考えて、それからパソコン
に向かって原稿を書くというのが、スタイルでした。
 もちろん、パソコンの普及前は、パソコンではなく、原
稿用紙に原稿を書いたのです。

 ところが、いつのころからか、ノートにメモを取るなら、
直接パソコンにメモを取ったほうが、便利だという考え方
に変わってきました。

 まあ、みんな、パソコンのキーボード操作が速くなった
ということも、背景のひとつでしょう。

 そうなると、「取材ノート」というものがなくなって、
なんでもかんでもパソコンに打ち込んでしまう。
 記者会見で、パソコンに没頭する風景は、そうやって始
まりました。

 でも、これは、異様です。
 パソコンを使うなというのではありません。
 そうではなく、人が話をしているときぐらい、その人の
ほうを向けーーというのです。
 それが、エチケットでもあり、話をする人への礼儀でも
あるでしょう。

 記者会見のとき、記者は相手の顔を見て、相手と切り結
んでいかなければなりません。
 パソコンと切り結んでもしようがないのです。