いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

民主党を見て「どうせ政治なんて」と思うのは危険です・・・政治には「政局」と「政策」があります。

2012年07月01日 01時17分55秒 | 日記

 小沢一朗氏が離党するかどうかをめぐり、民主党のご
たごたが続いています。
 そこに、政権復帰を狙う自民党と公明党が絡みます。
 もううんざりだというみなさんも多いでしょう。
 テレビのニュースで街頭インタビューをしているのを見
ていても、
 「私たちと関係のないところでやっている」とか
 「もういい加減にしてほしい」
 「政治家同士が何をやっているんだ」
 という答えばかりです。

 本当に何をやっているのでしょう。
 しかし。
 これで、
 「政治はこんなものだ」とか
 「どうぜ政治なんて」
 と思うのは、大変危険です。

 ここは、政治を、
 「政策」と「政局」に分けて考えてほしいのです。

 政治には、政策と政局があります。
 その違いは何でしょうか。

 会社帰りに「軽く食べようか」「軽くやりますか」とい
うことになったとします。
 そこでこんな会話になります。
 「小沢一朗はなかなか新党を作らないねえ」
 「うん、今度は慎重だね」
 「小沢派の議員って、1年生が多いんだろ。次の選挙は
落ちる人が多そうだから、新党作っても、続かないという
心配があるんじゃないの」
 「だけど、輿石幹事長って、小沢派なんだろ」
 「うん、そういうことになっているけどね」
 「それと、鳩山さんは、どうするのかね」
 「増税法案には反対したけれど、離党はしないというん
だろう」
 「だけど、仮にも、元首相だからね。党の方針に反対す
るというのは大変なことだよ」
 「野田さんも大変だね」
 「それと、自民党はどうするのかなあ」
 「石原幹事長って、軽いよなあ」

 どうですか。
 いかにもありそうな会話でしょう。

 普段からちょっとニュースに関心がある人なら、このぐ
らいの会話は、簡単に出来てしまいます。
 この会話には、ひとつ、大きな特徴があります。
 なんでしょうか。

 それは、会話の中に、必ず、「人」が出てくることです。
 小沢一郎氏、輿石幹事長、鳩山元首相、野田首相、石原
幹事長と、この短い会話の中に、これだけの人が登場しま
す。
 これが、政治の話のひとつの特徴です。

 では、「人」が出てくるというのは、どういう意味があ
るのでしょうか。 
 「人」が出てくると、話がおもしろいのです。
 有名な政治家は顔も知られていますから、顔と名前が一
致します。顔と名前が一致していれば、イメージしやすい
し、なじみもある。
だから、「政治」の話は、しやすいのです。
 しやすいし、なによりも、おもしろい。
 政治家というのは、ひとり一人、キャラクターがおもし
ろいから、話のネタになりやすいのです。

 これが、「経済」だと、そうはいきません。
 やってみましょうか。
 「おい、EUの金融危機ってさあ」
 「そんなこと、聞かれたって、分からないよ」
 「だけど、ドイツがさあ」
 「ドイツって、あの女性の首相だろ」
 「ドイツが危機感持っているということなんだけどさ、
これって、EUだけで解決できるのかねえ」
 「さあねえ」
 「アメリカや日本はどうすればいいのかね」
 「そんな難しいこと、聞くなよ」 
 「うん、まあな」
 「そんな話、メシがまずくなるじゃないか」
と、こんな感じになってしまいます。
 全然、話がはずまないのです。

 なぜ、「経済」は、話がはずまないのでしょう。
 それは、「人」が出てこないからです。
 いまの例では、唯一、ドイツのメルケル首相が出てきま
すが、それだって、女性の首相だから話題になるだけのこ
とです。

 会話は、「人」が出てこないと、おもしろくないし、は
ずまないのです。
 人のうわさ話って、おもしろいでしょう。

 そこへ行くと、「政治」はおもしろいのです。
 政治家という「人」が登場する「政治」は、おもしろい
のです。

 しかし、ここで、ちょっと待ってほしいのです。
 ここに、大きな落とし穴があるのです。

 小沢一郎氏の離党をめぐる騒ぎ、そして、次の選挙をに
らんだ駆け引きは、政治家と政治家、人と人の争いであり、
ひとことでいえば、
 「権力闘争」
 です。

 そして、この権力闘争を、
 「政局」
 と呼ぶのです。

 「政局」は、政治のひとつの側面にしか過ぎません。
 政治には、もうひとつ、重要な側面があります。
 それが「政策」です。

 政策とは何でしょう。
 たとえば、
 日本は今後、原発をどうするのか。
 太陽光発電など代替エネルギーはどう開発するのか。
 大震災で避難している人の生活をどうするのか。
 大震災からの復興をどう進めるのか。
 長い不況に沈む日本経済をどう立て直すのか。
 日本の電機産業をどう再建するのか。
 中国と韓国との外交をどうするのか。
 EUの金融危機に日本はどう対応するのか。
 超円高にどう対処するのか。
 財政赤字をどうするのか。
 
 そういうのは、すべて、「政策」です。
 政策は、どうしても経済面のテーマが多くなります。

 ここに例示した「政策」は、いずれも、日本にとって重
要なテーマです。
 こうしたテーマに解答を出すのが、本来、「政治」の重
要な役割であり、「政治家」の使命です。

 原発を太陽光発電など代替エネルギーに替えていく。
 原発で行くのか、代替エネルギーで行くのか。
 その選択は、ものすごく重い決断となります。
 その決断、つまり、「政策」を選択する決断をするのが
政治家の使命であり、それが本来の政治なのです。

 官僚は?
 たとえば、「原発で行くのか、代替エネルギーで行くの
か」というテーマであれば、最後に選択する役割は、あく
まで政治家の役割です。
 官僚は、
 ・原発で行くならメリットとデメリットがある
 ・代替エネルギーで行くなら、やはり、こんなメリット
があり、こんなデメリットがある
 ーーという基礎的なことをしっかりと調べ、まとめて、
政治家に提出するのが、本来の役割です。
 だから、財務省にも経済産業省にも、外務省にも、すべ
ての省庁に、大臣という名前の政治家が、トップとして存
在するのです。
 官僚は、「政策」を決める基礎を調べ、作る役割です。
 そして、そのうえで、政治家が「政策」を選択氏、決断
するのです。
 政策を決めるのは本来、官僚ではないのです。

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 「政策」を決めるのは、政治家であり、それが「政治」
なのです。
 ところが、実際には、政治家は「政局」ばかりやってい
るように見えるのです。

 だから、国民は、「政治なんて、しょせん」という反感
を持つのです。

 それはもちろん、「政局」ばかりに熱中する政治家が悪
いのです。
 しかし、私たち国民が、それを政治のすべてだと思って
しまうと、私たちの目の前から「政策」がどこかへ消えて
いってしまいます。

 それがいちばん危ないのです。
 
 政策というのは、国の針路にかかわる重要なものです。
 私たち国民が「政治」というのは「政局」のことだけだ
と勘違いしてしまうと、この国にとって本当に重要な「政
策」が、どこかへ行ってしまいます。
 私たち国民が、日本という国の「政策」に無関心になっ
てしまったら、それは、大変危ないことです。

 政治には「政局」と「政策」があります。
 「政局」だけが政治ではないということを、決して、忘
れないでほしいのです。