いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

サッカーの豪州戦・・・いい試合でしたが、通訳とインタビューはイエローカードです。

2012年06月13日 22時54分05秒 | 日記

 サッカーのワールドカップ最終予選、日本とオーストラ
リアの試合は、素晴らしい好ゲームでした。
 でも、主審は、ちょっとひどかったですね。
あれはないでしょう。

 ただ、きょうは、試合の話ではありません。
 試合後の監督と選手へのインタビューの話を書きます。

 この話は、前にも一度書きましたが、もう一度、書かざ
るを得ません。
 なにかというと、監督と選手へのインタビュー、もう少
し上手に出来ないものかーーということです。
 それと、監督の通訳の問題です。
 
 まず、ザッケローニ監督の通訳の問題からやりましょう。
 私はイタリア語は分かりませんが、この通訳さんは、明
らかに問題があります。
 ザッケローニ監督が、インタビューに答えて話したこと
の60%ぐらいしか、通訳さんは、日本語にしていないの
です。
 この通訳さんは、去年のアジアカップのときは、もっと
ひどくて、たぶん、ザッケローニ監督の話の半分以下しか、
通訳していませんでした。

 これは、通訳として、失格です。
 
 というのは、通訳というのは、その人が話したことをす
べて忠実に伝えるのが、なによりも大前提だからです。
 通訳は、話した人になりきる必要があります。
 話した人が「 I LIKE THAT PLAY」と
言ったら、通訳は、「私はあのプレーが好きだ」と訳さな
ければなりません。ところが、しばしば、「えーっと、彼
は、あのプレーが好きだと言っています」と言う通訳がい
るのです。
 これは、素人の通訳です。
 というより、通訳失格です。
 通訳は、その人本人になりきらなければなりません。

 わがサッカーチームの通訳さんは、今回、さすがにそれ
はありませんでしたが、ザッケローニ監督の話したことを
忠実には訳していません。

 今回の試合後のインタビューで、ザッケローニ監督は、
興奮さめやらぬという感じがあり、インタビューアーが初
めに質問したのに対して、そこからずっと1人でしゃべり
続けました。
 かなり長くしゃべっていました。
それなのに、通訳さんが話す日本語は、明らかに短いの
です。
この通訳さん、かなりはしょってましたね。
 これでは、通訳として、完全に失格です。

 通訳にもよるのでしょうが、ノートを持って、通訳する
相手の話す内容をノートに書き留め、それを見て確認しな
がら日本語にする通訳さんがいます。そういう通訳さんは、
信頼できます。
 しかし、ザッケローニ監督の通訳さんは、ノートやペン
を全然持っていませんでした。それはテレビにはっきり映
っていました。
 ザッケローニ監督があれだけ長くしゃべったら、それを
ノートに書き留めておかなければ、しゃべった内容をその
まま忠実に通訳するのは不可能です。
 だから、結果的に、はしょった通訳になってしまうので
す。

 こんなこと、例えば、日米首脳会談の記者会見でやって
しまったら、大変なことになります。
 サッカーだから、スポーツだから、いいんだということ
はないでしょう。

 私たちファンは、ザッケローニ監督が何と言ったのか、
それを、ちゃんと聞きたいのです。
 通訳が勝手に短くしたのを聞きたいとは思いません。

 イタリア語はメジャーな言語ですから、通訳さんはたく
さんいるでしょう。
 サッカー協会は、この通訳さんをやめて、ちゃんとした
通訳さんを雇うべきです。

          ***
 次に、選手へのインタビューです。

 インタビューで一番まずいのは、
 「いまのお気持ちは?」
 「現在の心境を教えてください」
 という質問です。

 今回のオーストラリア戦後のインタビューでは、さすが
に、ストレートにそう質問する場面はありませんでした。
 しかし、それと似たような質問が多かったですね。

 長谷部選手へのインタビューでは、
 「3試合終わって2勝1分けという結果になりました。
そのへん、どう思われてますか?」
 と聞いていました。
 ただ単に「3試合終わって、いまどう思われますか」
 と聞くよりは、はるかにましです。

 しかし、せっかく、「3試合終わって2勝1わけという
結果になりました」と前置きをしているのですから、そこ
で「そのへん、どう思われますか」はないでしょう。
 この試合のインタビューは、これがひとつのパターンで、
せっかく前置きをしながら、「そのへん、どう思われますか」
と聞いてしまうインタビューばかりでした。

 「その辺、どう思われますか」と聞くのは、なんのこと
はない、「いまのお気持ちは?」と聞くのと、本質的には
同じことです。

 では、どうすればよかったのか。
 せっかく「3試合終わって、2勝1分けという結果にな
りました」と前置きして聞くのだから、
 続けて、たとえば、
 「きょうはオーストラリアに勝って、3勝したかったで
すね」とか、
 「でも、きょうの試合は、勝てた試合でしたね」
 「きょうは勝ったと思いましたが、引き分けで残念でし
たね」
 と質問したらいいのではないかと思います。

自分がだれかにインタビューを受けると考えてみてくだ
さい。
 インタビュアーに
 「そのへん、どう思われますか」
 と聞かれたら、
 「え? どう思うかって? うーん、どう答えようか」
と考えてしまいます。
 あるいは、
 「どう思うかって、なんだか、めんどくさいなあ」と思
うかもしれません。
そうなんです。
 「どう思いますか?」と聞かれたら、答えるのがめんど
くさいんですよ。
 答えるのがめんどくさいインタビューは、決して、言
い答えを引き出せません。

 「きょうも勝って3勝したかったですね」とか
 「勝ったと思いましたが、引き分けで残念でした」とか
聞かれると、聞かれたほうも、答えやすいのです。
 「3勝したかったですね」と聞かれると、 
 「いやー、そうなんですよ。ほんと、残念でした」とか、
 「ぼくらもね、きょうはもらったと思ったんですけどね」
という答えがでてきます。
 ごく自然な感情が出てくるのです。
 長谷部選手だって、くやしそうに、そう答えるかもしれ
ません。

 ところが、それを、「2勝1分けとなりました。そのへ
ん、どう思われますか」と聞いてしまうと、
 長谷部選手も
 「うーん。まあ、2勝1分けならいいんじゃないですか」
というような、感情が出ない答えになってしまいます。

 それになにより、インタビュアーの気合い、気迫の問題
があります。
 最初にインタビューに登場したのは本田選手でした。
 本田選手は大阪出身ということもあって、相手の気持ち
をそらせずに、ちゃんと答えようとする姿勢があります。
そのへんは、かつての主力、中田英寿選手とは大違いです。
中田選手は、まさに木で鼻をくくるという態度でしたから
ね。
 しかし、その本田選手は、試合が終わったばかりで、し
かも、フリーキックを蹴る前に終了の笛がなるという変な
終わり方をしたので、テンションの高い状態で、インタビ
ューに登場しました。
 すると、インタビュアーのアナウンサーが、もう、ハナ
から、本田選手に気おされているのです。
 はっきりいえば、インタビュアーが、びびっています。
 なんだか、本田選手に、こわごわインタビューしている
のです。腰が引けている。それが、画面からも伝わってき
ます。
 これではだめです。
 結局、質問も、
 「おつかれさまでした。試合を終えて、率直なところを
教えてください」
 という、まことにつまらないものでした。

 では、どうすればよかったか。
 試合直後、ハイテンションでインタビューを受けにきた
わけですから、
 たとえば、
 「いやー、残念でした。勝ったと思ったんですが」
 と切り出せば、本田君のことですから、
 「いや、ほんと、残念です。くやしいね」
 ぐらいのことを言い始め、そのまま、ひとりでいろいろ
話してくれたのではないでしょうか。

 あるいは、
 「いや、すごい試合でした。最後のフリーキックなんか、
無茶苦茶な笛でしたね」と聞くのもいいと思います。
 そうすると、彼は、
 「うんまあ、審判にあまり言いたくないけど、こんなの
初めてでしたね」ぐらいのことを言ったかもしれません。
 インタビューには、そういう感情、表情を引き出してほ
しいのです。
それには、インタビュアーに、本田選手に負けないぐら
いの気合いと気迫が必要です。
 インタビューする相手と切り結ぶぐらいの気構えがほし
いのです。
そうでないと、相手の気持ちを引き出せません。

 インタビューは、アマチュアでは出来ません。
 インタビューは、プロの仕事でなければなりません。
 
 通訳も、インタビューも、イエローカードでした。
 通訳はサッカー協会に、
 インタビューはテレビ局に、
 それぞれ、猛省を促したいですね。