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【0906/134:絶滅危惧種】彦根城中堀のオニバス、プロジェクト立ち上げ保全活動 

2009-06-16 21:53:27 | Weblog

【毎日新聞特集「現場から記者リポート】

 ◇環境整備や観察会 自生地として貴重な存在

 彦根市の彦根城中堀にあるオニバスの生育地。江戸時代の藩政時代に堀を渡る“侵入者”を防ぐために植えたと伝えられる。二十数年前に復活し、赤紫色の花が市民や観光客を魅了していたが、ここ数年は咲いたり咲かなかったり。そこで、毎年、花が楽しめるようにと、市民グループ「彦根自然観察の会」が07年2月に「彦根城オニバスプロジェクト」を立ち上げた。生育地の環境整備や観察会を開くなど地道な活動を続けている。その取り組みを追った。【松井圀夫】

 ◇ハスとの共存は不可能--テリトリーの確保を
 戦後姿を消したオニバスの復活は、1987(昭和62)年に彦根市制50周年と彦根城築城380年を記念して開催された「’87世界古城博覧会」を前に堀の美化が行われたのがきっかけだった。堀底の泥をかき回したところ、芽が出るようになった。これを機に城山公園事務所(現・彦根城管理事務所)が生育地として保護に乗り出し、8~9月ごろに赤紫色の花が咲き、散歩をする市民や観光客らが“花見”を楽しむまでになった。

 ところが、数年前から茎の高さが1メートル以上にもなるハスが増え過ぎ、日陰になるオニバスの生育地は狭められてきた。同プロジェクト代表で樹医の渡邊輝世さん(73)=同市清崎町=によると、年によって咲いたり咲かなかったりの状況が続き、06年には数個の花が咲いたものの、07年には一つも確認できなかったという。

 そんな中で、07年2月に「彦根自然観察の会」会員や市民ら約30人でプロジェクトを発足させ、現在は約60人で活動している。市の許可を得て、金亀公園管理事務所脇の堀のハスを刈り取る作業や水質調査を続けている。また、「オニバスを知ろう」「オニバスの魅力と不思議」などをテーマに勉強会や自然観察会も開き、オニバス生育地や花、プロジェクトの活動写真などを紹介するパネル展を開くなどし、活動への参加を広く呼びかけてきた。

 07年9月には、市民ら約90人が参加してシンポジウムを開催し、「彦根城のシンボルとしてオニバスの復活を」と呼びかけた。水生植物研究の第一人者、角野康郎・神戸大大学院教授を講師に招き、オニバスとハスの共存は難しいことなどの説明を受け、今後の取り組みへの指導を受けた。パネルディスカッションでは、「オニバスが市民権を得られるよう、市民ぐるみで保全活動を盛り上げていくことが大事」といった提言があり、大きな成果があったという。

 今後の活動について、同プロジェクト事務局の中川信子さん(50)=同市安清東町=は「急激に花を咲かせることは難しいので、地道な活動を続けることが大事」と言う。渡邊代表と中川さんは取り組みとして、天敵(ザリガニ、ソウギョなど)の徹底駆除▽水質調査の継続▽堀底のヘドロの除去▽ハスとの共存は不可能なので、オニバスとハスの生育地を分ける取り組み▽オニバスの種を採取してまく▽オニバスを幅広く知ってもらうための勉強会やパネル展、広報活動▽他府県のオニバス保護団体との交流--などを挙げる。

 渡邊代表は「彦根城内では、オニバスだけでなく20種類以上の希少種を含む660種の植物が確認され、まさに植物の宝庫。無自覚のうちに滅ぼし、気付いたら姿を消していた、というようなことにならないよう、後世に伝えるのが私たちの務め。多くの人に協力してほしい」と話す。市民の関心の高まり、市民参加が今後の活動の成否を握っているように思う。

 同プロジェクトはオニバスに興味のある人や共に活動する新会員を募集している。申し込みや問い合わせは渡邊代表(0749・28・3867)へ。

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 ◇絶滅危惧2類に指定
 【オニバス】ハス、ヒツジグサなどと同じスイレン科に属し、湖沼やため池などに生育する1年生の水生植物。直径1メートルを超える大きな葉と、全体に密生する鋭いとげが特徴。関西でもよく見られたが、近年は池の埋め立てや水質汚染の進行で消滅するところが相次ぎ、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)2類に指定されている。

(6月16日付け毎日新聞・電子版)

http://mainichi.jp/area/shiga/news/20090616ddlk25040642000c.html


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