国、安全性を強調「不安残る・・・」の声も
関西電力大飯原発3、4号機を巡り、地元のおおい町で行われた26日の住民説明会。政府から直接説明を受けた参加者らに終了後、感想を聞くと、安全性に対する不安は残る一方、再稼働は必要という切迫した声も目立ち、原発を<生活の糧>としてきた地域の複雑な思いが伺えた。
説明会には計713人が事前に申し込み、当日は雨の影響などもあり出席者は計546人。柳沢光美経済産業副大臣が約30分間、安全性などを力説した。
同町尾内の無職男性(74)は説明会終了後、「福島の事故を踏まえた対策になっていることがよく分かった」と納得したが、農業男性(58)は「内容が広範囲にわたり、中身も難しいので、安全だと言い切る自信がない」と不安な様子だった。自宅でテレビを視聴した元小学校校長の早川治さん(74)は「今までの政府の説明の繰り返し。福島の事故の究明はまだで安心できない」と指摘。関電の協力会社役員の女性(52)は「内容は難しかった」としながらも、「安全だから責任を持って動かすという国の意欲が伝わった」と肯定的に受け止めた。
大飯1、2号機は運転開始から32年。同3、4号機は19、20年。雇用や豊かな財源は若者の人口流出に歯止めをかけた。それだけに、長男(24)とともに原発関連企業に勤務する男性(61)は「息子の将来を考えると不安になる。雇用確保のためにも再稼働してほしい」と迷わず語る。協力会社に40年間勤務して5年前に独立した男性(60)も、原発機器の点検業務が仕事の9割を占めるといい、「我々には死活問題だ。早く再稼働してほしい」と訴えた。
観光施設職員の男性(51)は「原発を再稼働しなければ町は活性化しない」と危機感を持つ。「放射性廃棄物や使用済み核燃料の最終処分先が決まらないと、反対派が納得しない。そういった問題点の解決策も国が示してほしい」と話した。
26日の説明会では、国への要望も相次いだ。質問に立った女性が「消費地と原発立地で温度差がある。立地が悪者みたいな報道が続いている」と悔しい胸の内を語り、国に原発の必要性を説くよう求めた。そうした訴えに、うなずく参加者も。原発関連の仕事を請け負う建設会社経営、荒木和之さん(58)は「再稼働は安全が第一。経済や雇用の問題は二の次でいい。会社のために危険を冒していいなんて誰も思っていない」とした上で「30年間、都会の便利な生活を支えてきたことが理解されず、さみしい」と語った。
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会場となった町総合運動公園の入り口では、降りしきる雨の中、午後5時頃から、関西中心の反原発団体約80人が「原発反対」などとシュプレヒコールを繰り返し、「30年以上皆さんに危険を背負わせて申し訳ない」と声を張り上げた。説明会が始まった約10分後の午後7時40分頃、男性数人が「中に入れろ」と柵を乗り越えると数十人がつめかけ、警備員や警察官ともみ合いになり、説明会が終わる午後9時頃まで騒然とした状態が続いた。
(4月28日付け読売新聞福井版・電子版)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukui/news/20120427-OYT8T01219.htm