関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を地元町民はどう考えているのか。電力供給を受ける関西圏からも大きな関心を集める中、判断材料の一つとなる住民説明会が26日夜、おおい町総合運動公園体育館で開かれた。町民からは「予想を上回る地震が起きたらどうなるのか」「あまりにも拙速」など安全性への不安を訴える意見が相次いだ。一方で、長期停止に伴う地域経済の地盤沈下を心配する声や、脱原発を主張する関西圏の首長らへの強い不満も聞かれた。(伊豆倉知、野田勉、山川竜平)
有権者の1割近い約540人が集まった。柳沢光美経済産業副大臣は「東京電力福島第1原発事故の教訓を生かした安全対策を次々と講じた」と述べ、大飯原発が福島のような地震、津波に襲われても燃料損傷は起こさないと説明。夏場の電力需給面からも再稼働は必要と理解を求めた。
質疑で町民からは「地元として再稼働に協力したい」という声もあったが、安全対策が不十分との意見が大勢を占めた。特に防波堤かさ上げや免震事務棟の建設といった中長期対策が未実施なことへの不安が強かった。
大飯原発がある大島地区の男性は「想定外は許されない。万が一があるかもしれないから(再稼働には)免震事務棟がいるのではないか」と国の姿勢を批判し、経済面と安全面は切り離して判断すべきだと訴えた。
「言いたいことを言わないと、シナリオ通りに再稼働になってしまう」と取材に答えて会場入りした農業を営む男性(41)は「(中長期対策がなくても)大丈夫と言われても不安が募る」と語気を強めた。
消費地と供給地の意識に温度差があるとの指摘も。女性の参加者は「立地地域が悪いような報道がされている。国が責任を持って納得を得られるよう説明を」と求めた。原発関連の仕事をしていたという男性は「仮に原発が迷惑施設ならば、利便を受ける者が『どうかお願いします』というのが道理ではないか」と力説。電力供給地としての自負心が傷つけられている心境が垣間見えた。
一方、取材に対しては「再稼働やむなし」の声も多かった。建設業の男性(49)は「再稼働しなければ地元住民の大多数が職を失い、地域経済は終わってしまう」と強い危機感を口にした。
「原発あってのおおい町」と語る看護師の女性(26)は、電力不足にも懸念を示し「病院での停電は命に直結する」と再稼働の必要性を指摘。ただ「大飯で福島のような事故が起こらないのか少々の不安は残る」と複雑な思いものぞかせた。
主婦の藤沢静代さん(65)は「原発の恩恵を受けてきたので声を大にして反対はできない」と消極的な賛意を示した。
市町村合併で立地地域となった名田庄地区の横井瑞生さん(75)は「(定期検査が終わり)仕事がなくなっている。安全対策をしっかりして、なるべく早く再稼働してほしい」と話した。
「国の説明は分かりやすかったが、不安が解消されたかと言われればそうではない。後は議会と町長の判断に任せたい」と、人口8800人の町民に判断が委ねられたかのような状態への困惑も聞かれた。
(4月27日付け福井新聞・電子版:同日付け朝日・福井版電子版なども報道)
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/34426.html
http://mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000001204270001