4月から、全国の中学1、2年生の保健体育の授業で武道が必修化された。県内では市町立、県立計100校の8割近い77校が、柔道を必修にする。各市教委などは、体育教諭向けに安全講習会を開くなど、事故防止対策を進めているが、県内では3年前、愛荘町立中柔道部の男子生徒が部活動中に負傷し、その後に亡くなる事故があっただけに、保護者だけでなく教諭側からも不安の声が上がっている。(矢野彰)
草津市教委は3月、市立新堂中で県柔道連盟の役員を招いた講習会を開いた。役員は、参加した保健体育の教諭や講師ら約20人を前に「生徒にけがをさせないよう、発達段階に合わせた指導が重要だ」と強調。受け身の取り方や技をかける際の注意点なども教えた。
しかし、初めて指導するという女性講師(29)は取材に「柔道は学生時代以来。安全には最大限注意するが、不安もある」と打ち明けた。
昨年度までは、中学では武道かダンスの選択制だったが、2006年改正の教育基本法に「伝統と文化の尊重」が盛り込まれ、両方を必修にするよう学習指導要領が改定された。
県教委によると、柔道の他は剣道が25校、相撲が1校(柔道との複数選択を含む)。授業時間数などは、各校の事情に合わせて決められ、内容についても、受け身など基礎だけにとどめてもよい、としている。
文部科学省は3月、「頭を打たない・打たせない」「大外刈りなどの投げ技は、必ず取りあげる必要はない」など、注意点をまとめた手引書を全国の中学に配布した。
県内では09年、愛荘町立秦荘中柔道部の1年生だった村川康嗣君(当時12歳)が練習中に意識を失い、亡くなる事故があった。
大津市立中に娘が通う母親(43)は「授業中であっても、子ども同士がふざけて技を掛け合わないかが心配。何をしたら危険なのかをしっかり教えた上で、授業を進めてほしい」と話す。
県教委は授業が本格化する5、6月に、スポーツの専門医らを呼んで脳損傷の危険性などを学ぶ講習会を開く。また、県柔道連盟は、万一、頭を打った際に注意が必要な症状や対応をまとめ、ホームページに掲載している。
県教委スポーツ健康課は「部活動で求める技術と授業とは別。危険な技を教えなくても、礼儀や相手を思いやる心など武道の精神は学べる。教師の力量も踏まえ、無理のない指導を心掛ける」としている。
(4月8日付け読売新聞・電子版)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20120407-OYT8T00921.htm