【読売新聞・論評】
「清水の舞台から飛び降りるような決断だった」。嘉田知事は5月20日の記者会見で、栗東市の産業廃棄物処理会社「RDエンジニアリング」(破産)の処分場で確認された汚染土壌やドラム缶などの処理工法を決めた際の心境を、そう表現した。
知事は15日の県議会環境・農水常任委員会で、地中に遮水(しゃすい)壁を設置し、廃棄物層を覆う対策を講じる方針を表明した。具体的な工法について知事が明言を避けた住民説明会から、わずか4日後の方針表明だった。
有害物の全量撤去を求めていた周辺住民は、強く反発した。しかし、知事は会見で決断の時期の是非について「皆さんが判断すること」とするだけ。これでは説明不足だと思う。
知事は2006年12月、法的には設置義務がないRD最終処分場問題対策委員会を“肝いり”で新設した。学識経験者や住民代表らで構成する同委は15回の審議を重ね、4月に全量撤去を推奨する答申を知事に提出した。
結果的に答申を無視する形になった知事は、悩み抜いた末の決断だったことを強調するが、住民らは「最初から結論ありきだったのでは」と疑心暗鬼になっている。
政策決定過程などに対する住民の不信を払拭(ふっしょく)することが、RD問題解決の第一歩だ。今こそ、住民目線に立った「対話」が求められているのではないか。(井戸田崇志)
【関連ニュース番号:0805/111、5月22日;0805/112、5月22日、0805/113、5月22日など】
(5月23日付け読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20080522-OYT8T00732.htm