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イーライリリー 抗体治療薬 モノクローナル抗体 トランプ大統領

2020年11月30日 08時10分32秒 | 新型コロナウイルス


一躍脚光を浴びたモノクローナル抗体治療薬 トランプ大統領の治療に使用
 2020年10月2日、トランプ米大統領が新型コロナウイルス感染して、重篤化して、首都ワシントン郊外のウォルター・リード軍医療センターに入院した。入院前にはホワイトハウスで酸素吸入を受けていたと報じられた。その後、症状が改善し、米東部時間10月5日午後6時40分頃に退院した。主治医による経過観察と治療はしばらく継続されるというが、わずか中3日の超スピード退院である。
 トランプ氏の医師団は様々な薬剤を使用して治療に当たったが、その1つが「モノクローナル抗体(中和抗体)カクテル」と呼ばれる臨床試験段階の未承認薬である。まだ臨床試験データが揃っていないため、安全性や効果がまだ十分に立証されていなが、人道的見地からの特例措置として使用が認められている。医師団の中には不安の声も上がっていたという。一方で、医療専門家は、トランプ氏の症状は、それでも投与したほうが良いと考えるほど深刻だったのではないかと指摘する。
 トランプ大統領に使用されたのは、米製薬大手リジェネロンが開発している「モノクローナル抗体(中和抗体)カクテル」の「REGN-COV2」で、効果があったとする見方が出され、抗体治療薬に対する関心が一気に高まった。
 リジェネロン社によると、人道的見地からの特例措置としてREGN-COV2の投与を受けた人はトランプ大統領だけではなく、これまでに「まれで特例的な状況」にあった10人未満がこの治療薬を投与されたという。
 医療上のプライバシーのため、同じく新型コロナ陽性と判定されたメラニア・トランプ大統領夫人や政府高官らがREGN-COV2を投与されたかどうかは明かせないとした。

トランプ大統領 新型コロナに感染 ペンス副大統領側近も

モノクローナル抗体とは?
 抗体医薬品では、モノクローナル抗体が注目されている。
 ヒトの体内のウイルスに感染した細胞やがん細胞などの「異物」(抗原)に対して、免疫細胞のB細胞がこれらの異物(抗原)を攻撃するために、特定の「目印」を持つ「異物」(抗原)に結合する抗体をつくる。
 たとえば、ほとんどのがん細胞は他の正常な細胞にはない特定の目印を持っている。 「もし、その特定の「目印」だけに結合して攻撃する抗体を大量に作成することができれば、治療薬として期待できる」という発想から生まれたのがモノクローナル抗体治療薬である。
 モノクローナル抗体は、ただ1種類のB細胞が作る抗体のコピー、つまりクローンです。モノは「単一」、クローナルは「混じりっけのない集合」を意味する。





出典 中外製薬 HP

 モノクローナル抗体は、新型コロナウイルスに対する素早い反応を免疫系に促すと期待されている。考え方としては新型コロナ回復者の血漿を用いる治療法と似ているが、モノクローナル抗体は単なる血液からの抽出物ではなく、バイオ技術によって人工的にに作られる点が異なる。
 抗体は、免疫系が病原体に反応して作り出すY字型のたんぱく質で、重要な役割は2つある。
 1つは、ウイルスに取り付き、ウイルスが細胞に侵入して複製するのを防ぐこと。もう1つは、病原体に目印を付け、免疫を担う他の細胞やたんぱく質が退治できるようにすることだ。
 ワクチンは体に抗体を作らせる。一方、モノクローナル抗体や回復者の血漿を用いた治療は、患者の体内に直接、抗体を送り込む。どちらもウイルスと闘う免疫系にアドバンテージを与えるのが目的だ。
 新型コロナ回復者の血液から抽出する血漿には、様々な種類の抗体が含まれる可能性があるのに対して、モノクローナル抗体は特定の抗原(ウイルス)を攻撃する。新型コロナウイルスを対象としたモノクローナル抗体は、鼻や口でウイルスが生存できないようにし、肺に到達して深刻な症状を引き起こすのを防ぐ。
「理論的には、『そもそも肺に行けるようなウイルスがいない』という状態を作りたい」。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の感染症専門医であり、COVID-19予防試験ネットワーク(CoVPN)を率いるマイロン・コーエン氏はそう説明する。「心配すべきは鼻への感染ではなく、下気道への感染です」
 米製薬大手イーライリリーをはじめとする多くの企業は、新型コロナ回復者の血液を調べて抗体の開発に役立てようとしている。リジェネロン社の場合は、ヒトの免疫系を持たせたいわゆるヒト化マウスに新型コロナウイルスを感染させ、抗体を作り出すヒトの免疫細胞を抽出した。
 その中から、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質に最もよく結合する抗体を作れる細胞がどれかを調べる。スパイクたんぱく質は、ウイルスがヒトの細胞に侵入する際に鍵の役割を果たす。
 こうした選別過程を経て、特定の1種類(モノ)の抗体のみを作るクローン細胞の株が生み出される。それを使って作られるのが「モノクローナル」抗体だ。
 リジェネロン社ではハムスターの卵巣由来の細胞を用いて抗体を大量に生産している。巨大なタンクの中で細胞を培養し、そこから抗体を抽出する。(米紙ワシントン・ポスト)
 最終的にでき上がるREGN-COV2には、新型コロナウイルスへの結合のしかたが少しずつ異なる2種類のモノクローナル抗体が含まれる。エイズウイルス(HIV)に対して複数の抗ウイルス薬を併用する「カクテル」療法と同じように、この抗体の「デュオ」もウイルスに対してより効果的だと考えられている。

効果と安全性は?
 REGN-COV2は効果と安全性の確認がまだ取れていないため、試験段階にある治療薬ということになる。米食品医薬品局(FDA)は、回復者の血漿や抗ウイルス薬「レムデシビル」と違い、REGN-COV2に対しては緊急使用許可を出していない。
 あらゆる治療法は、臨床試験において検証が行われるのが原則だ。患者を、その薬を投与するグループと、効果がないとされるプラセボ薬を与えるグループにランダムに振り分け、結果を比較する。リジェネロン社のREGN-COV2は、こうした試験の初期段階にある。完全な結果がまだ公表されていないこともあり、この治療薬の使用を懸念した医療関係者もいた。まして大国のリーダーに使うとなるとなおさらだ。
 リジェネロン社は9月29日に投資家およびメディア向けの会見を開き、最初の275人の患者に実施した臨床試験の暫定的な結果を発表した。それによると、自分自身の抗体が十分に作られていなかった患者に対し、REGN-COV2を8グラム投与(血管に注入)したところ、鼻の中のウイルス量が減少した。また、症状が軽減する傾向も見られたが、統計的に有意な差が出るには至っていないという。同社はなるべく早い時期に正式な結果を発表したいとしている。
 リジェネロン社と提携してREGN-COV2の予防的治療薬としての効果を検証しているCoVPNのコーエン氏は、今のところモノクローナル抗体の安全性に問題はなく、「安全でないと考えるべき理由もありません」と話す。ウイルスのスパイクたんぱく質を攻撃するものですので、どう考えてもヒトの組織には干渉しないとする。
 しかし、抗体治療には懸念材料がつきまとう。その1つが、特定の状況下ではかえってウイルスがヒトの細胞と結合する能力を高めてしまい、病状を深刻化させる可能性だ。
 抗体依存性感染増強(ADE)と呼ばれるこの現象は、少なくともREGN-COV2を用いた動物実験では見られていない。ただし、この結果を記した論文はまだ査読を終えていない。
 リジェネロン社のボウイ氏によれば、これまでに2000人以上が臨床試験に参加し、データを追跡している独立した委員会で安全性への懸念が示されたこともないという。「安全性は私たちの最大の関心事であり、常に注意深く見守っていますが、今のところ問題は起きていない」としている。
(要約 「解説:トランプ米大統領に投与、モノクローナル抗体とは」 National Geographic 2020年10月6日)


米イーライリリー社 抗体治療薬の臨床試験で被験者の登録を停止
 米製薬大手イーライリリー社は13日、新型コロナウイルス感染症(COVID19)抗体治療薬の臨床試験で被験者の登録を停止したことを明らかにした。安全性への懸念が理由。広報担当は電子メールによる発表文で、米政府の支援を受けて進めている臨床試験は、独立したデータ安全性監視委員会(DSMB)から停止の勧告を受けたと述べた。データ委員会が停止を勧告した理由について詳しい情報は明らかにしていない。
 広報担当キャスリン・べイザー氏は「当社は今回の臨床試験に参加する被験者の安全性を慎重に確保するという独立DSMBの決定を支持する」と述べた。
 今回中断されたのは、カナダのアブセレラ・バイオロジクスと共同開発するモノクローナル抗体薬「LY-CoV555」の治験。ウイルスを中和する2種類の抗体を組み合わせ、重症者に注射する。米国立衛生研究所(NIH)が主導する、新型コロナの入院患者を対象とした治験を実施中だった。
 同社株は13日午後の米株市場で一時3.8%下落した。(Bloomberg 10月13日)

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2020年11月1日
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廣谷 徹
Toru Hiroya
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代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
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