
総工費「1500億円」への疑念
“疑問”が残る新国立競技場建設計画 “混迷”はまだ続く!
“疑問”が残る新国立競技場建設計画 “混迷”はまだ続く!

新国立競技場の新建設計画 A案で決定 大成建設・梓設計・隈研吾氏グループ
12月22日、政府の関係閣僚会議(議長・遠藤五輪相)は、新国立競技場の整備で2チームから提案されていた設計・施工案のうち、「木と緑のスタジアム」をコンセプトにしたA案で建設することを決めた。
安倍総理大臣は、「新整備計画で決定した基本理念、工期やコスト等の要求を満たす、すばらしい案であると考えている。新国立競技場を、世界最高のバリアフリーや日本らしさを取り入れた、世界の人々に感動を与えるメインスタジアム、そして、次世代に誇れるレガシー=遺産にする。そのため、引き続き全力で取り組んでいただきたい」と述べた。
その後に会見した遠藤利明五輪担当相は、これまで非公表だったA案の業者は、大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏で構成するチームだと明らかにした。
日本スポーツ振興センター(JSC)が関係閣僚会議に報告した審査委員会(委員長=村上周三東京大名誉教授)審査結果は、A案が610点、B案が602点だった。A案は工期短縮の項目で177点(B案は150点)と高い評価を得たのが決め手となった。注目されるのは、デザインや日本らしさ、構造、建築の項目ではB案が上回っていることである。B案に参加した建築家の伊東豊雄氏は採点結果の妥当性について疑問を投げかけている。B案に参加した建築家の伊東豊雄氏は採点結果の妥当性について疑問を投げかけている。
また、白紙撤回された旧計画を担当した女性建築家のザハ・ハディド氏は、事務所を通して声明を発表し、「新デザインはわれわれが2年かけて提案したスタジアムのレイアウトや座席の構造と驚くほど似ている」とし、「デザインの知的財産権は、自分たちが持っている」と主張した。さらに「悲しいことに日本の責任者は世界にこのプロジェクトのドアを閉ざした。この信じ難い扱いは、予算やデザインが理由ではなかった」とし、建設計画見直しへの対応を批判した。
採用されたA案は、木材と鉄骨を組み合わせた屋根で「伝統的な和を創出する」としているのが特徴。地上5階、地下2階建てで、スタンドはすり鉢状の3層として観客の見やすさに配慮。高さは49・2メートルと、旧計画(実施設計段階)の70メートルに比べて低く抑え、周辺地域への圧迫感を低減させた。
総床面積は19万4010平方メートル、収容人数は6万人(五輪開催時)。総工費は約1489億9900万円、工期は36か月で、完成は19年11月末とした。
一方採用されなかったB案の総工費は、「純木製の列柱に浮かぶ白磁のスタジアム」を掲げ、地3階、地下2階建てで、スタンドは2層、高さは約54.3メートル、総床面積18万5673平方メートル、収容人数は6万8000人。総工費は約1496億8800万円、工期は34か月で、完成は19年11月末である。
B案は竹中工務店・清水建設・大林組の共同企業体と日本設計・建築家の伊東豊雄氏のチームが提案した。
焦点の総工費は、A案、B案とも1500億円弱でほぼ揃った。

審査結果 日本スポーツ振興センター(JSC)

(A案の完成予想図 日本スポーツ振興センター[JSC])

(B案の完成予想図 日本スポーツ振興センター[JSC])

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「1550億円」への疑念
今回の新国立競技場の新建設計画の公募の条件として記載されていたのか、総工費の上限「1550億円」であった。
一体「1550億円」はどのように算出されたのだろうか。
実は基本になっている総工費の積算根拠は2015年1月の「3088億円」が“おおもと”になっているのである。「3088億円」は、公募で選定された大成建設(スタンド工区)と竹中工務店(屋根工区)が実質的に積算したものである。
「1550億円」も「2520億」も、「3088億円」積算根拠をほとんで何も見直さず、床面積の縮小や屋根、キールアーチ、可動席、冷房装置、関連工事を取り止めたり、設置資材や労務費の値上がり分を加えるるなどしただけで、総工費の積算の基本は大成建設と竹中工務店が主導して行われた経費試算を根拠にしているのである。
つまり、総工費の積算根拠は、大成建設と竹中工務店が積算した総工費、「3088億円」と基本的に変わっていないと考えられるだろう。
「3088億円 工期50か月」はゼネコン2社の見積もり
2014年10月、新国立競技場の建設は、スタンド工区は大成建設、屋根工区は竹中工務店が担当することが「公募型プロポーザル方式」による選定で決まった。施工予定者に決まった2社は設計会社JVが行う「実施設計」に加わり、建設費の積算を施工予定者としての立場で行っていた。
しかし、「実施設計」や総工費の積算は、2社のゼネコンが主導して行われたと思われる。設計会社JVは、ザハ・ハディド案のきわめて斬新な流線形の巨大スタジアムを手掛けた経験がなく、ゼネンコン2社の力を借りざるを得なかった。「実施設計」や総工費の積算を監督する立場にある文科省やJSCは、さらに巨大スタジアムの建設を管理する専門家がいなく、ほとんど、ゼネンコン2社の“いいなり”だったのでないか。
新国立競技場の工事費の積算で決め手となる「キール・アーチ」(竜骨)は、設計会社JVも文科省、JSCも施工予定者の竹中工務店に“まるなげ”だったと考えられる。誰も建設したことがない巨額の「「キール・アーチ」の工事費は、照査できる人がいなかった。
2015年夏に、ゼネンコン2社は、問題の「キール・アーチ」や可動式の屋根を設置するザハ・ハディド案に基づいて、建設資材の値上がりや労務費の上昇や消費税率の引き上げを加味して、総工費「3088億円」とする見積もりをJSCに提出した。
「屋根工区」で「1248億円」、「スタンド工区」で「1840億円」としている。試算条件は2015年1月単価、消費税8%である。巨大アーチや開閉式屋根など特殊構造のため、資材調達や技術者の確保で総工費が膨らむとの内容だったとされている。
文科省とJSCが主導して積算し、当時の公表されていた「1625億円」の約2倍近い見積もり額である。また工期も「50か月程度」と、2019年3月の完成予定も8か月程度延びるとして、ラグビーW杯に間に合わない可能性がり、関係者に衝撃が走った。
新国立競技場の総工費「3088億円」が明らかになると、余りにも膨れ上がった建設費に世論の激しい批判が集中して、文科省と日本スポーツ振興センター(JSC)は計画の見直し追い込まれていく。

(ザハ・ハディド案 国際デザインコンクール 日本スポーツ振興センター[JSC])
総工費「2520億円」 屋根を支えるアーチ構造などが原因で経費膨張
世論の激しい批判を受けて、文科省とJSCは、「3088億円」の建設経過の縮減に乗り出し、2015年7月7日、新国立競技場建設の事業主体であるJSCは「有識者会議」を開き、総工費を「2520億円」に縮減し、最大8万人収容の“見直し”基本設計案を決定した。
基本設計案によると、周辺に配慮して高さは当初案より5メートル低い70メートルとし、延べ床面積は立体型の通路を見直し、当初案の約29万平方メートルから25%程度縮小して21万1000平方メートルとした。
外観は、ザハ・ハディド氏の流線形のデザイン案を踏襲し、地上6階地下2階。。
今回示された整備費「2520億円」は、前回の基本設計案の「1625億円」より約「900億円」増え、大成建設が担当するスタンド工区は「1570億円」、鹿島建設が担当する屋根工区は「950億円」とした。
「3088億円超」が、世論の集中砲火を浴びる中で、「3000億円」を約「500億円」下回る縮減建設計画案に調整されたである。
JSCは、この“見直し”基本設計案案で、一両日中にも大手ゼネコンと契約を結び、2015年10月に着工、2019年5月の完成を予定し、2019年9月開幕のラグビーW杯の開催に間に合わせる方針を堅持しようとした。
見直しを決めた有識者会議には、安西祐一郎氏(日本学術振興会理事長)と安藤忠雄氏(建築家)が欠席した。新国立競技場のデザインを選定した国際デザイン・コンクールの審査員長を務めた安藤忠雄氏は、この日は大阪で所用があったとして会議には参加せず、余りにも“無責任”という激しい批判が浴びせられた。
縮減建設計画では、新国立競技場の斬新なデザインの象徴となる「キール・アーチ」は設置するが、開閉式の屋根の設置は大会開催後に先送りにしたり、可動式の観客席を着脱式の仮設席に変更したりして、「2520億円」の総工費から外した。
この結果、約「260億円」を削減し、スタンド本体の総工費を「1365億円」と見積もった。
一方で、「キール・アーチ」設置ための資材費や特殊な技術が必要な工費の負担増で「765億円」増えたとしたが、詳細な内訳の説明はない。
さらに、建設資材や人件費の高騰分が「350億円」(約25%増)、消費増税分が「40億円」、工費増加分は合わせて約「1155億円」となるとした。その結果、「260億円」の削減分を差引すると、総工費は「895億円」膨れ上がるとした。
JSCは「2520億円」は「目標工事費」としており、物価動向などでさらに増える可能性があるとしている。
大会後に設置予定の仮設の観客席1万5千席はこの日の有識者会議の要望を受けて再び大会に合わせて常設化を検討することになった。観客席1万5千席の設置経費は「2520億円」には含まれていない。
大会後に予定する施設整備費は、開閉式屋根や仮設の観客席1万5千席の経費は、現時点の試算で約「188億円」とした。
有識者として会議に出席した東京都の舛添要一知事はこの計画を了承したが、焦点の都の費用負担については明言しなかった。

(国立競技場将来計画有識者会議 新国立競技場設計概要 段階的整備について 2015年7月7日)
猪瀬前東京都知事は、日本テレビの「うえいくアッププラス」(2015年7月25日)に出演して、「2520」億円の内訳について、屋根工区の工費の詳細を明らかにしている。
▼ スタンド工区
直接工事 1247.7億円
土工事 86.1億円
鉄筋工事 42.3億円
鉄骨工事 208.7億円
木工事 22.1億円
金属工事 104.7億円
電気設備 135.3億円
空調工事 100.3億円
直接仮設・仕上げ工事・設備工事等 548.6億円
共通費 205.7億円
工事価格 1453.4億円
消費税 116.3億円
工事費 1569.7億円 (スタンド工区合計額)
▼ 屋根工区
直接工事 727.9億円
土工事 44.3億円
鉄骨工事 427.8億円
防水工事 5.7億円
電気設備 30.3億円
直接仮設・仕上げ工事・設備費 219.8億円
共通費 152.0億円
工事価格 879.9億円
消費税 70.4億円
工事費 950.3億円 (屋根工区合計額)
「2520億円」の積算は、ゼネコン2社の試算「3088億円」を根拠にした
総工費「2520億円」の内訳から、ゼネコン2社の試算「3088億円」を検証してみよう。
本体工事費は、2015年5月に文科省とJSCが公表した「1365億円」に、可動式屋根と電動式観客席、芝生養生システムで「260億円」、約25%の床面積削減分の約「300億円」、それに物価上昇分の約25%、「350億円」、消費税増加、「40億円」を加えて、「2300億円程度」と推定する。
そして可動式屋根を設置するためのキール・アーチの設置費などで「765億円」を加えると、「3065億円」となり、ゼネコン2社の試算「3088億円」とほぼ一致する。
つまり、「1625億円」の積算も、「2520億円」の積算も、ゼネコン2社の試算「3088億円」の積算を根拠にしているのである。
新国立競技場は「1550億円」でも高すぎるのはないかという批判がある。果たして、「1550億円」が適切な水準なの検証はされていない。
「1625億円」を「2520億円」に見直した際は、延べ床面積を約25%削減し、高さを5メートル低くして70メートルにするなどダウンサイズして、屋根の設置、電動可動席や芝生育成補助システムの取り止めで「260億円」を削減する一方で、「キール・アーチ」の設置の増分など「765億円」、物価上昇約25%分の「350億円」、消費税増分「40億円」など加えて計算しただけなのである。
「2520億円」を「1550億円」の削減した際は、延べ床面積を更に約13%削減したり、「キール・アーチ」(約700億円)の設置や観客席の冷房装置の設置(100億円)を取り止めたりして、約「1100億円」を削減した。
ここでも、建設積算の基本はゼネコン2社の試算「3088億円」が生き続けているのある。
新国立競技場の総工費「1550億円」 決定

(出典 新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議 2015年7月17日)
政府は関係閣僚会議を開き、総工費を「1550億円」とする新しい整備計画を決定した。
再検討後の建設計画がポイントは次の通りである。
▽総工費の上限は、「2520億円」に未公表分を加えた「2651億円」と比べて、約「1100億」円余り削減して「1550億円」とする。
▽基本理念は、「アスリート第一」、「世界最高のユニバーサルデザイン」、「周辺環境等との調和や日本らしさ」。
▽観客席は6万8000程度とする。
▽サッカーのワールドカップも開催できるように、陸上トラック部分に1万2千席を設置し、8万席への増設を可能にする。
▽屋根は観客席の上部のみで「幕」製とする。
▽「キールアーチ」は取りやめる。
▽観客席の冷暖房施設は設置しない。
観客の熱中症対策として休憩所や救護室を増設する。
▽陸上競技で使用するサブトラックは競技場の近辺に仮設で設置する。
▽総面積は旧計画の22万2000平方メートルから約13%減の19万4500平方メートルに縮小する。
▽VIP席やVIP専用エリアの設置は“最小限”にする。
▽スポーツ博物館や屋外展望通路の設置は取りやめて、地下駐車場も縮小する。
▽競技場は原則として陸上競技、サッカー、ラグビーなどのスポーツ専用の施設とする。但し、イベントでの利用も可能にする
▽災害時に住民らが避難できる防災機能を整備する。
▽工期は、2020年4月末とする
▽設計・施工業者を公募する際に2020年1月末を目標とした技術提案を求め、審査にあたって、工期を目標内に達成する提案に評価点を与えて優遇し、工期を極力圧縮することに努める。
▽財源については、“先送り”をして、多様な財源の確保に努め、具体的な財源負担の在り方は、今後、政府が東京都などと協議を行い、早期に結論を出す。
▽9月初めをめどに、設計から施工を一貫して行う「デザインビルト」方式を採用して、入札方式は「公募型プロポーザル方式」とし、応募の資格要件を課した上で、事業者を「公募」で募集する。
政府は「約1千億円の削減幅」をアピールして、国民の理解を得たいとしているが、「約1千億円」を強調したいがために、旧建設計画の「2520億円」は見せかけの“粉飾”経費で、計上すべき経費だが別枠にしていた「131億円」を組み入れて、実は「2651億円」だったと認めるという醜態を演じた。自ら杜撰さな予算管理をなりふり構わず認めたのには唖然である。
それでも、「1000億円超」とされているロンドン五輪や北京五輪のオリンピックスタジアムの建設費に比較しても、「1550億円」はまだ破格に高額で国民の批判が収まるかどうか不透明である。
また、削減幅「約1千億円にこだわったことで、周辺工事や関連経費などで、整備費に入れないで“隠した”経費があったり、労務費や資材費が値上がりするなどして、実際には「1550億円」が更に膨らむ懸念がどうしても残る。また焦点の「2015年1月」完成を目指した場合は、総工費は「1550億円」の上限は維持できるのだろうか? 不安材料は依然として残る。
飛びぬけて高額の建設単価 新国立競技場「1550億円」
安倍首相の決断で、「2520億円」から「約1100億円」削減して「1550億円」になったと聞くと、かなり建設費が削減されて適切になったと誤解する人が多いが、実はこれは“大間違い”である。
大規模な建造物の建設費が適正であるかどうかを全体として把握する最良の手法は、「坪単価」で見るとというのが常識である。
新国立競技場を他のスタジアムと「坪単価」で比較してみよう。
新国立競技場は、最終案の「1550億円」(延べ床面積19万4500平方メートル)とザハ・ハディド案を踏襲してゼネコン2社が積算した「3088億円」(延べ床面積22万4500平方メートル)の「坪単価」を計算した。 「1550億円」では、265.5万円、「3088億円」では、なんと453・9万円となった。スタジアム建設の「坪単価」では、唖然とする高額だ。
現在では国内最大規模の日産スタジアムの「坪単価」は155.7万円、サッカー専用スタジアムとては東アジアで最大規模のさんたまスタジアムは105.5万円、屋根を備えている京セラドーム大阪は122・8万円である。
可動式屋根や「キール・アーチ」を取り止め、電動式可動席や観客席冷房装置も設置を止めても、「坪単価」は破格の265.5万円、あきれるほどの高額なスタジアムである。
一体、どんなコスト管理をしたのだろうか?
「1550億円」やはっぱり納得できない。

五輪終了後の収支計画はどうなっているのか?
「2520億円」の建設計画を決めた際に、日本スポーツ振興センター(JSC)では、可動式屋根設置後という“条件付き”で、年間で、収入40億8100万円、支出40億4300万円、3800万円の黒字という収支見込みを公表している。世論の批判をかわすための“帳尻合わせ”だという批判も多い。
旧国立競技場の維持費は約7億円、この建設計画では約6倍近くの40億円超に膨れ上がる。
実は、「3800万円の黒字」はすでに破たんしているのが明らかになっている。
日本スポーツ振興センター(JSC)では、完成後50年間に必要な大規模修繕費が約1046億円に上るという試算を公表した。年間約21億円の巨額な経費である。大規模修繕費は、建築物を維持管理するために必須の経費、なんとこの経費を別枠にしているのである。杜撰な収支計画には唖然とさせられる。
「1550億円」の仕切り直しの建設計画では、収支見込みはどうなっているのか、まだ不明である。可動式屋根の設置は取りやめたことで当初の目的であったイベント開催も可能な“多機能スタジアム”は挫折した。五輪後の収入の目論見は白紙撤回されているはずだ。一方、施設全体を縮小したので経費は多少、削減されているだろう。ともあれ新しい建設計画を評価するためには、五輪後の収支見通しが必須だ。
それとも新国立競技場の運営は「民間に委託」としているので、政府としては、収支のメドは関知しないというだろうか? しかし、仮に五輪後の新国立競技場の収支が赤字を余儀なくされたら、そのツケは、国民に回されるのだろう。


新国立競技場 整備完成時(開閉式遮音装置等設置後)収支見込み 日本スポーツ振興センター(JSC) 2015年7月7日
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)第一号か?
2020年東京大会のキャッチフレーズは「Discover Tomorrow(未来をつかむ)」である。
そしてそのコンセプトは「コンパクト」、繰り返し強調しているキーワードである。過去からの資産を大切にしながら明日に向かって進んでいく都市の姿を世界に伝えていくとしている。
2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会での2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致演説は何だったのだろうか。
“新国立競技場”のキャッチフレーズ、「『いちばん』をつくろう」は新建設計画で実現できるのか?
新国立競技場が“負のレガシー(負の遺産)”になる懸念は未だに拭い去れない。
再検討に当たっての基本的考え方(案) 再検討のための関係閣僚会議
(2015年8月14日)

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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)
2015年12月23日
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廣谷 徹
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国際メディアサービスシステム研究所
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