藤井聡太王位に豊島将之九段が挑戦する、お~いお茶杯第63期王位戦(主催者:新聞三社連合、日本将棋連盟)。第3局は20日と21日に行われた。
ここまで藤井王位の1勝、豊島九段の1勝。第3局は、藤井王位はともかく、豊島九段は絶対負けられない一戦である。なぜなら負けると、「勝率8割男」を相手に、残り4局を3勝1敗で乗り切らねばならないからだ。
将棋は豊島九段の先手で、角換わり相腰掛け銀となった。ホント、おふたりともこの戦法が好きである。
お互い▲7九玉、△3一玉と囲う。以前は玉が5八や5二に浮遊する展開が多かったが、両対局者はこのシリーズで深く囲っている。どうも腰掛け銀は、この位置の玉が最善のような気がする。
第1図から藤井王位は△6五歩と仕掛ける。▲同歩に△7五歩を入れるかと思ったが、藤井王位は単に△6五同桂。とはいえ7筋に歩を立てたくなるところで、この手順でよいなら、将棋界の常識が変わりそうだ。もっとも令和の将棋は、常識もへったくれもないが。
ここで豊島九段は▲6四歩。△同金は▲7三角だから藤井王位は△6二金と引くよりないが、その前に△7七桂成の銀桂交換が利いた。
素人目には先手が痛いように思われるが、豊島九段はのちに▲6六桂と銀取りに打ち、駒損の回復を図った。
だがこれでは藤井王位の駒が捌けただけである。私がこんな手を指したら植山悦行七段や大野八一雄七段に叱られそうで、このあたり、豊島九段に誤算があったのではないかと思った。
しかも藤井王位がそのあと、自陣の駒損を甘受して、△2二玉と収めた。私はこの手にホトホト感心した。
藤井王位にはときどきこういう手があって――具体的には、多少駒損をしても玉を安全地帯に逃し、ギリギリの一手勝ちを収めるというものだ。
この「見切り」が、藤井王位は他の棋士より数手早い。いったいどれくらい前からこういう構想を描いていたのかと、舌を巻くのである。
将棋は藤井王位の勝勢。どう決めるかというところで、と金(歩)を取る△6三飛(第2図)が決め手になった。
大して利いてない歩を取る手など通常では考えられないが、先手玉を詰ますのには、あと1歩が必要なのだ。この類の手は、第13期竜王戦で藤井猛竜王が羽生善治五冠相手に防衛を果たした一局「一歩千金」が有名だが、私は、1982年6月10日に指された第21期十段戦挑戦者決定リーグ・▲谷川浩司八段VS△大山康晴王将戦の投了図を思い出した(参考図)。
いずれにしても、相手の駒が持駒として使える。将棋がチェスより面白いといわれるゆえんがここにある。
話を戻し、私なら第2図で投げるが、▲6三同成桂と取るのがプロのたしなみ。以下は藤井王位が、豊島玉を綺麗に詰ました。
これで藤井王位の2勝1敗である。あぁ、こうなってはまた、藤井王位の防衛濃厚である。
第4局は8月15日、16日。
ここまで藤井王位の1勝、豊島九段の1勝。第3局は、藤井王位はともかく、豊島九段は絶対負けられない一戦である。なぜなら負けると、「勝率8割男」を相手に、残り4局を3勝1敗で乗り切らねばならないからだ。
将棋は豊島九段の先手で、角換わり相腰掛け銀となった。ホント、おふたりともこの戦法が好きである。
お互い▲7九玉、△3一玉と囲う。以前は玉が5八や5二に浮遊する展開が多かったが、両対局者はこのシリーズで深く囲っている。どうも腰掛け銀は、この位置の玉が最善のような気がする。
第1図から藤井王位は△6五歩と仕掛ける。▲同歩に△7五歩を入れるかと思ったが、藤井王位は単に△6五同桂。とはいえ7筋に歩を立てたくなるところで、この手順でよいなら、将棋界の常識が変わりそうだ。もっとも令和の将棋は、常識もへったくれもないが。
ここで豊島九段は▲6四歩。△同金は▲7三角だから藤井王位は△6二金と引くよりないが、その前に△7七桂成の銀桂交換が利いた。
素人目には先手が痛いように思われるが、豊島九段はのちに▲6六桂と銀取りに打ち、駒損の回復を図った。
だがこれでは藤井王位の駒が捌けただけである。私がこんな手を指したら植山悦行七段や大野八一雄七段に叱られそうで、このあたり、豊島九段に誤算があったのではないかと思った。
しかも藤井王位がそのあと、自陣の駒損を甘受して、△2二玉と収めた。私はこの手にホトホト感心した。
藤井王位にはときどきこういう手があって――具体的には、多少駒損をしても玉を安全地帯に逃し、ギリギリの一手勝ちを収めるというものだ。
この「見切り」が、藤井王位は他の棋士より数手早い。いったいどれくらい前からこういう構想を描いていたのかと、舌を巻くのである。
将棋は藤井王位の勝勢。どう決めるかというところで、と金(歩)を取る△6三飛(第2図)が決め手になった。
大して利いてない歩を取る手など通常では考えられないが、先手玉を詰ますのには、あと1歩が必要なのだ。この類の手は、第13期竜王戦で藤井猛竜王が羽生善治五冠相手に防衛を果たした一局「一歩千金」が有名だが、私は、1982年6月10日に指された第21期十段戦挑戦者決定リーグ・▲谷川浩司八段VS△大山康晴王将戦の投了図を思い出した(参考図)。
いずれにしても、相手の駒が持駒として使える。将棋がチェスより面白いといわれるゆえんがここにある。
話を戻し、私なら第2図で投げるが、▲6三同成桂と取るのがプロのたしなみ。以下は藤井王位が、豊島玉を綺麗に詰ました。
これで藤井王位の2勝1敗である。あぁ、こうなってはまた、藤井王位の防衛濃厚である。
第4局は8月15日、16日。