Hello、ひさびさの温泉チャンネルです。
僕はね、なにが好きって温泉ほど好きなものはないんです。
でもね、諸事情から、去年の金沢行以来めぼしい温泉にはあんま行ってなかった。
それが、先月中盤、久々に休みが取れる運びとなりまして…
そうなればやることは決まっちょる---で、2014年の1月19日から22日にかけて、イーダちゃんは、骨休めもかねた温泉旅行にいってきました。
真冬の奥日光---泣く子も黙る、栃木の平家の隠れ里である、有名なあの「湯西川温泉」であります(^o^)/
実は僕、温泉巡りに燃えていたころに---前の仕事をしてるとき、それと、それ以前に友達なんかとで---かつて何回か、ここ、きてるんですね。
いま、nifty温泉さんの自分のクチコミを見直してみたら、それ、2008年の1月22日と7月21日とのことでした。
奥鬼怒の「加仁湯」さんなんかにいったときにもたしかお邪魔したりしてますから、ま、6、7度は湯浴みさしていただいている、勝手知ったる旧知の湯西って感じでせうか?
つまり、湯西川っちゅーのは、それだけ僕の心を魅きつけるモノをもってる、求心力のある、いい温泉地だってことですよ。
僕はねえ、湯西川温泉って超・好きなんだよなあ---。
かつて、平家の隠れ里だった、という秘密の香りのする歴史がまずいいっしょ?
それに、湯西川の流れに沿ってならんでいる家々の、藁葺き屋根のならび、あの古めかしく、またどことなく隠者めいた村全体の佇まいもいい。
さらに、とどめとなるのが温泉ね---あのねえ、こちらの温泉って出色なんっス。
基本は無色透明の単純泉なんですけど、こちらのお湯、底のほうにかすかな硫黄臭がほんのり香ってる感じなの。
僕的にいわせてもらうなら、ここのお湯、別府さんのとこのお湯をどこか彷彿させるものがあるんですよね。もちろん、別府のお湯に特有の、あのかすかな硫黄の芳香にまじった「別府臭」とでも名付けるしかない、あの独自の個性的な触覚は、そりゃあありませんとも。
でも、僕は、湯西川の湯につかるたび、なぜだか別府のことをつい連想してしまう…。
湯煙に目を細めながら、はるかなる別府を夢見つつ入る温泉ってのも、案外これはオツなもんなんですってば。
というわけで、1月の20日、ハマを出て、埼玉の春日部で用事をすましたイーダちゃんは、連休の残りを極上の温泉ですごそうと逸る気持ちを抑えつつ、栃木行きの電車にいそいそと乗りこんだのでありました。
クルマでいくと<ヨコハマ---栃木>間って結構あるように思うんですが、驚いた、浅草から電車を使えば超・スグではないですか。
浅草から東武のスカイツリー特急に乗り鬼怒川温泉まで100分→んでもって、鬼怒川から東武鬼怒川ラインに乗りかえて約19分。
龍王峡、川治温泉など懐かしの駅々をこえてようやく辿りついた湯西川の駅は、見事な雪国の様相でした。
川治とか龍王峡は、そんなに雪積もってなかったんですよ。
でも、湯西川前の長いトンネルを抜けたら、そこはまさに「国境の長いトンネルを抜けたら雪国であった」の世界でありました。
----ふわぁ、寒ィ…。
と、思わず身体を縮めて、両肩も抱えこんで。
口からたちのぼる息も、いつのまにかまっ白な冬の色。
そして、駅のまえの国道のむこうには、滔々たる鬼怒川の流れが見えていて。
旅情っスねえ…。
バス待ちのあいだ煙草をもつ指先が凍えてかじかむのも、ちょっといい感じです。
バスで30分ほどゆられて---いつもはクルマで走っていたこの道をバスでいくのは初めてで新鮮でした---6年ぶりに訪れた湯西川。
懐かしかった。
湯西川は、記憶のまんまの佇まいでした。
あたりまえの話だけど雪が凄い。
雪の湯前橋を注意しいしいゆっくり渡り、湯西川の全景をまず見てみます。
お。湯前橋下の湯西川公衆浴場も、対岸の橋下の野湯「薬研の湯(やげんのゆ)」も健在。
ただ、おめあての「薬研の湯」まわりの積雪がやたら凄いなあ。
ここ、入れるかしら? と一瞬心配になっちゃった。
人気は、なし。
対岸の雪に埋もれた、あの有名な藁葺の平家集落の家々は閑散としてる。
まえに食したことのある有名な会津屋豆腐店さんも斎藤商店さんもみんな閉まってる。
あとで聴いたら、1/25からかまくら祭りっていうお祭りがあるから、お客は25日以降に集中してて、僕の訪れた1/20なんかは、年度でも有数の閑散期だとのこと。
すわ、ラッキー、とかじかんだ胸奥で心がちょいと踊ります。
湯西川駅からあらかじめ℡で予約を入れていた、懐かしの「金井旅館」さんにむかいます。
こちら、以前から立ち寄りではそーとーお世話になってるお宿なんですけど、正直、泊りは初めてなんです。
ひとのよさげなおかみさんにこんにちはーって挨拶して、お喋りして、宿帳なんかも書いて、お茶飲んで、ぼーっとして、部屋の窓からの真冬の湯西川の風景をしばし堪能タイム…。
では、このあたりで僕が宿泊した湯西川温泉「金井旅館」さんのご紹介、いってみませうか---
◆湯西川温泉「金井旅館」
〒:栃木県日光市湯西川温泉822
℡:0220(98)0331
先にあげた写真が「金井旅館」さんの正面玄関であります。
いかが、こじんまりとしてて、なかなかいい感じでしょ?
高級志向なお方からしたら、なんだい、こんなオンボロ宿は? となるのかもわかりませんが、ここ、温泉が極上なんですって。
下の写真の左手---湯前橋のこっちにある、囲いで隠されてる露天---が、こちら「金井旅館」さんの露天です。
湯前橋の左手の袂のとこにある小屋が、有名な混浴の「湯西川公衆浴場」。
その反対側の橋の袂の下手にあるのが、イーダちゃん贔屓の混浴露天「薬研の湯」---。
こちらの野趣たっぷりの野湯、「金井旅館」さんの管理されてるお湯なんですわ。
僕は何度かこちらの湯を湯浴みさせていただいたことがあるんですけど、今回のイーダちゃんのお目当ても、やっぱりこちら「薬研の湯」だったんですね。
何度入っても極上湯は屋上湯ですモン。(源泉は、天楽堂乃湯といいます)
ですから、案内されたお部屋でくつろいで、少々身体があったまってきたら、さっそくこちらのお湯に入りたい旨を、宿のおばちゃんに伝えます。
----お客さん、「薬研の湯」はいいですけど、寒いですよ…。それに、川へ下る階段が雪まみれだから、滑ってちょっとアブナイよ…。
----いや~ 僕はまえからここのお湯のファンでしてねえ、日が暮れるまでになんとしても「薬研の湯」に入りたいんですよ…。ええ、なんとしてもね(思い入れをこめて)…。
すると、宿のおばちゃんにも僕の熱意が伝わったのか、おばちゃん、それならばと雪歩き用の長靴とプラスティク籠とを貸与してくれました。
「薬研の湯」には、着替処も景観を覆おう柵もな~んもないんです。
だから、長靴とプラ籠とは、宿なりの酔狂客へのサービスだってこと。
嬉しかったなあ---この心づくしを無にしちゃいかんでせう---長靴履いて、イーダちゃんはしっかり雪まみれの階段を下りましたとも---足まわりを一歩一歩たしかめて、それでもときどき滑り落ちそうになるから、必死こいて階段の手すりに掴まりながら(後背筋ずいぶん使ったな)…。
で、だいたい夕の4:30頃から5時すぎまで、イーダちゃんは湯西川きっての極上湯「薬研の湯」を堪能させていただいたってわけ----
もー これは、はっきりいってコトバでどーのこーのいえるレベルじゃなかったな。
めっちゃ…(5秒ほど沈黙)よかった…。
というか、よすぎた。
湯西川の「薬研の湯」は、黙って噛みしめるしかないタイプの、稀有の名湯でありました。
だって、すぐ目の前を流れているのは真冬の湯西川の清流よ---ふっと顔の向きをかえれば、目に入ってくるのは、雪化粧をした平家の里のアンテックな歴史的家並---そんでもって、川沿いの小ぶりな僕の湯船に滔々と流れこんでくるのは、源泉掛け流しの湯西川の天然湯でしょ…?
これで染みなきゃ、そのひとってどうかしてるって。
お湯に身体を沈めていると、温泉効果で超あったかい湯舟内身体の部分と、真冬の吹きっさらしの空気をキンキンに感じる肩より上の裸の部分とに、身体が区分けされてね。
要するに、身体ぽかぽか、耳たぶキンキンってやつですか。
中国の故事のいう、いわゆる「頭寒足熱」の生の体感が、もー ひたすらたまんない。
目をつぶって、ちょっとしてまた目をあけて、そこにひんやり美しい湯西川の冬がおなじように広がっているのが、なんだかふしぎに感じられて、何度かまぶたをぱちぱちやりました---目をあけたら、ひょっとしてこの素敵すぎる光景が消えてるんじゃないかと思って。
でも、消えてない---それは、ちゃんとそこにある。
湯けむりと藁葺屋根の集落とが川の瀬音にあわせてゆらゆらしてる---現実が、目の玉に染みるほどきらめいて見える、夕暮れどきのこのふしぎな温泉手品。
----きて、よかったぁ…!
と、ひとりごちて、両手ですくったお湯を顔面にぽちゃっとやれば、ああ、鼻腔に散り砕ける淡い硫黄の香り…。(ToT;>
湯西川のお湯って透明湯なんですけど、底のほうにかすかな硫黄臭を隠しもっているんです。
お湯自体の鮮度も凄いしね、要するにただ者じゃないお湯なわけなんです。
僕ぁ、基本的に硫黄好きですからねえ---目をとじて、しばし恍惚として、湯西川の美しい冬と温泉とをゆるやかに堪能するしかなかったな……。
X X X
翌朝の21日、「金井旅館」さんで朝食をいただき、雪道をてくてく歩いて「平家の里」へ行きました。
朝イチ、10時からの入園です。
平日のこんな時間に入園する奇特な客は僕だけかと思ったら、ひとり旅の若い女の子が僕同様入園待ちをしてられるじゃないですか。
あまりの寒さに缶コーヒー買って両手でそれ握ってたら、グーゼン彼女もおんなじようにしてたんで、見知らぬ者同士つい顔を見あわせて「寒いですね」なんていって。
白い息を吐きながらまわった、ひとのいない平日朝の雪の「平家の里」は素敵でした。
ここってなにか、隠者の気配が土地自体に染みついているんじゃないのかな?
雪景色の上を流れるBGMの平家琵琶のべんべんいう音が、もの淋しくてよかった。
花の都暮らしから一転してこんな秘境の雪国に移ってきたんだもの---お嬢さん暮らしの上流の平家の女たちには、ここの暮らし、キツかったでせうねえ。
いったい、どれだけの数のドラマがあったんだろう?
この軒下から、氷の張った池を何人の女が泣いて眺めたんだろう?
そんなことを思うともなく思いながら、小1時間ばかり散策しました。
最後にはもちろん、こちらの氏神さまにご挨拶して---「平家の里」、とてもよろしゅうございました。
そんな感じで、イーダちゃんの奥日光放浪の第一日目は、つつがなく終了したのであります。
しかし、奥日光の旅・第二部は、さらなるドラマを懐中に隠しもち、イーダちゃんの訪問を待ち受けているのでありました……。(栃木篇Ⅱへ続く)