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細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

天切り松闇がたり  残侠  浅田 次郎

2009-12-20 20:56:47 | 読書メモ 

《内容》
時は大正。粋でいなせな怪盗たちの胸のすく大活躍を描く! 留置場の雑居房に一人の老人が入ってきた。彼こそは希代の名盗、通称「天切り松」。六尺四方にしか聞こえない夜盗の声色、闇がたりを使って始めた彼の身の上話に、留置人はもちろん、看守さえ引き込まれて……。きっぷのいい江戸弁で語られる、天衣無縫なピカレスク・ロマン。
           (紹介文より)

K
―――人間は人間であるかぎり、けっして親を憎んではいけない。たとえどのような親であろうと、けっして恨んではならない。親に対する恨み憎しみは、おのれの血を蔑むことだ。おのれを蔑めば、人間のただひとりも生きていけない。


―――あの人は他人に情けをかけても、けっして恩は着せない。人を好いても、好かれようとはしない。義というものを知っている。あれは男の中の男だ。


―――おとっちゃん。
おいらを許してくれろ。孝行もせず、恨みやつらみばかり言っていたおいらを、どうか許してくれろ。
おいらは馬鹿でも犬畜生でもねえ、人間だ。嬉しけりゃ笑うし、切なけりゃ涙も出る。そんなことをおいらはずっと忘れていた。