いつかX橋で 著者 熊谷達也
《内容》
土屋祐輔は、貧しいながらも大学進学を夢見て勉強に励む学生だった。しかし、空襲で一夜にして母と妹、父が残した家を失ってしまう。仙台駅北のX橋付近で靴磨きを始めた祐輔は、特攻隊の生き残り「特攻くずれ」の彰太と出会う。戦争がなければ出会うはずのなかった二人は、しかし互いにとってかけがえのない存在となっていく。パンパン・ガール、GI、愚連隊、人々で賑わう闇市―終戦直後の仙台で、絶望から必死で這い上がろうとした少年たち力強さを謳う青春長篇。
(紹介文より)

―――遺体のそばからすすり泣きは聞こえるものの、遺族の誰もが嗚咽を押し殺し、真綿を呑み込んだみたいに慟哭を抑えつけている。
―――ふたりの面影に少しづつ霞がかかっていくことを申し訳ないと思う反面、さっきのように、徳さんと他愛もない会話をして笑えるようになったことが、ありがたくもある。
ともあれ、人の心はそんなふうに、辛い記憶を時間とともに和らげるようにできているのかもしれない。でないと、毎日を生きていくことが難しい。
《内容》
土屋祐輔は、貧しいながらも大学進学を夢見て勉強に励む学生だった。しかし、空襲で一夜にして母と妹、父が残した家を失ってしまう。仙台駅北のX橋付近で靴磨きを始めた祐輔は、特攻隊の生き残り「特攻くずれ」の彰太と出会う。戦争がなければ出会うはずのなかった二人は、しかし互いにとってかけがえのない存在となっていく。パンパン・ガール、GI、愚連隊、人々で賑わう闇市―終戦直後の仙台で、絶望から必死で這い上がろうとした少年たち力強さを謳う青春長篇。
(紹介文より)

―――遺体のそばからすすり泣きは聞こえるものの、遺族の誰もが嗚咽を押し殺し、真綿を呑み込んだみたいに慟哭を抑えつけている。
―――ふたりの面影に少しづつ霞がかかっていくことを申し訳ないと思う反面、さっきのように、徳さんと他愛もない会話をして笑えるようになったことが、ありがたくもある。
ともあれ、人の心はそんなふうに、辛い記憶を時間とともに和らげるようにできているのかもしれない。でないと、毎日を生きていくことが難しい。