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知能 用語解説

2006-10-14 | Weblog
4.1.1 知 能
    →知能検査の開発史と種類,特別支援教育と個別知能検査【本事典の執筆項目との関連】
海保博之・筑波大学・教授
【知能研究のはじまり】知能研究の歴史は,近代心理学の1世紀余の歴史とともにあるといってよい。その嚆矢は,F.ゴールトン(1822-1911)にある。民族や個人の知的優秀性を実証しようとした彼の試み(優生学)は,知能は遺伝か環境かをめぐっての議論を巻き起こし,知的能力を計測しようといた彼の試み(測定学)はテスト開発と統計的データ解析手法の開発を促し,さらには知的能力モデルの構築へとつながっていった。
【知能の定義と測定】目で見ることのできない、構成概念である知能を測定するには,方法論が必要である。それが間接測定の論理である。知能を定義したうえで,知能がある(高い)とするなら,それは,こうした場面や検査問題でこういう行動として具現化するはずとする仮定を置いたうえでの測定である。その仮定の「妥当性」が絶えず問われるのが,知能の測定に限らず,多くの心的特性の測定の宿命である。
 さて、その定義であるが,研究者の数だけあるといってもよいほど多彩である。松原達哉は,知能の13の定義を列挙したあとに,「高等な抽象的思考能力」「学習能力」「新しい環境への適応能力」の3つが,知能の定義の鍵になっていると指摘している。
 知能の定義がこれほど多彩で広範に及ぶことは,測定上だけでなく,後述する他の領域での論議にも強く影響してきた。ただ,知能検査を作成するにあたっては,「知能とは,知能検査で測定したもの」(F.N.フリーマン)との操作主義的な考え,さらに「存在するものはすべて測定できる」(E.L.ソーンダイク)とする楽観的な測定観を共有することで,過去1世紀にわたり次々といろいろの定義と目的にかなった知能検査が開発されてきた。
【知能モデルの構築】知能モデルの構築は,20世紀前半は,知能検査の得点の相関分析・因子分析によるボトムアップ的なアプローチに基づいて提案されてきたが,20世紀後半の認知心理学・認知科学の隆盛の影響を受けて,モデル論的な(トップダウン的アプローチによる)知能モデル構築の試みもいくつか提案されてきた。
?相関分析・因子分析によるモデル化:C.E.スピアマンが1920年代に提案した2因子モデルを軸に展開されてきた。2因子モデルの特徴は,どんな問題を解くにも有効な一般因子gがベースにあって,そのうえで,それぞれの検査問題(群)を解くのに固有な特殊因子sがあるとするものである。
 これ以後に提案されたサーストンの多因子説(言語理解,語の流暢性,計算力,空間認知力,記憶力,知覚の速さ,推理力)は一般因子gの存在を否定して特殊因子をより精選したもの,キャッテルの流動性知能(問題解決にかかわる知能)と結晶性知能(言語的な知識にかかわる知能)は,多因子をさらにまとめあげたもの(群因子,2次因子)と考えることができる。
?認知心理学・認知科学におけるモデル論的アプローチ:そのねらいは,知的課題を解くときの頭の内部での情報処理プロセスがどうなっているか,さらに,それぞれのプロセスの性能(容量と効率)と処理様式とがどうなっているかを明らかにすることであった。それが知能検査として具現化したのが,K-ABC検査であった。
 なお,これら以外にも,神経心理学の知見を踏まえた知能モデルも提案されている(例えば,Das,J.P.ら)。
【知能の遺伝規定性】双生児比較法,家系調査法,さらには,異なる年令集団の変化を経年(縦断)的に調査するコホート分析などの科学的な研究手法によって,心の諸特性についての遺伝規定性がどの程度あるかを同定しようとする試みが数多くなされてきているが,知能に限らず決着がついたものはないといってよい。それだけに,これまでさまざまな研究や問題提起が,その時々の社会情勢や時代思潮を反映しながら,なされてきた。
その代表的なものをあげると,1つは,1930年代ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺の悲劇につながった,ゴールトン流の優生学の復活がある。
近年では,1969年のA.R.ジェンセンの122ページの大論文での主張「IQの分散のうち,遺伝による分散は,8割を占める」「社会階層や人種による差は,遺伝的な差異によるところが大きい」「環境は遺伝的素質を発現させる低い閾値的な役割しか果たさない」が,公民権法が成立した(1964年)とはいえ,人種差別問題で苦悩していた当時のアメリカにおいて,ジャーナリズムも巻き込んでの大論争を引き起こした。
 いずれのケースでも,知的基盤能力の1つである知能が遺伝的に規定されているとすることで,差別の固定化,そして,教育的処遇を通しての差別の拡大へと突き進んでしまう危険性を含んでいることは注意する必要がある。かといって,遺伝の影響を過少視するのも,事態を見誤る可能性がある。
【知能の発達的変化と予測性】これに関しては,生涯を通してIQは恒常性かという古典的な問題がある。IQは,当該集団(コホート)のノルム(平均と標準偏差)を使う関係もあって,経年的に調べてもそれほど大きくは変化しない。
 しかし,知能の検査問題の正答率ベースで発達的な変化をみると,たとえば,帰納的推理力(流動性知能の1つ)は25歳あたりをピークに80歳くらいまで単調減少カーブをなすのに対して,言語能力(結晶性知能の1つ)は30歳あたりのピークが80歳くらいまで維持されることを示すような証拠もある。
また,知能の予測性に関しても,将来の職業的成功を予測できるとする証拠もいくつかある。しかし,これに関しては,学童期の知能から職業的な成功までの間に介在する環境的・教育的な影響も無視しえないので,決定的な言説には慎重さが必要である。
[知能の学習可能性]知能は教育・訓練によって変化するのかという問題は、幾度となく話題にされてきた。一番関心を呼ぶのは、学校教育が知能を高めるかということである。これについては、学校教育の長さとIQの高さとが関連していること示す証拠が多い。さらに、先進14か国平均でIQがここ30年間で15点も上昇しているとの証拠(Flynn効果)も、そのすべてが教育効果とは言えないが、注目される。
 ガードナー,H.は,もっと直接的に知能そのものの教育可能性に挑戦する理論と実践を行い注目されている。まず、知能を「特定の文化的状況あるいは共同体において重要な、問題を解決するあるいはものを作り出す能力」と定義する。具体的には、社会での職業上での成功(熟達化)を保証する知的能力を発掘し、さらにその神経心理学的な基盤にも配慮して,お互いに自律した7つの知能類型(多重知能モデル)を措定した。その7つとは,「音楽・リズム知能」「身体・運動感覚知能」「言語・語学知能」「内省的知能」「対人的知能」「論理・数学的知能」「視覚・空間的知能」であるが,さらに「博物学的知能」を追加するとの話もある。そして、これこそがガードナーの斬新な挑戦になるのだが、それれぞれの知能の教育訓練プログラム(プロジェクト・スペクトル)を実践している。(海保博之)
[参]東 洋『教育の心理学』有斐閣,1989.  Deary,I.J. 2001 Intelligence;A Very Short Introduction.(繁桝算男訳『知能』岩波書店,2004.) 
辰野千寿 新しい知能観に立った知能検査基本ハンドブック 図書文化 1995











※F.Galton(1822-1911)→F.ゴールトン
F.N.Freeman→F.N.フリーマン
E.L.Thorndike→E.L.ソーンダイク
C.E.Spearman→C.E.スピアマン
L.L.Thurstone……L.L.サーストン
R.B.Cattel……R.B.キャッテル
A.R.Jensen……A.R.ジェンセン

投資信託は危険

2006-10-14 | Weblog
もとより、リスクはありますよ
と言われての購入である
皆が買うなる投資信託、というわけで
ちょっとだけ我が家も買ってみた
車を買うので解約しようとして、とんでもない金融商品であることがわかった

配当なし、手数料や税金などもあり、
購入価格を2割も下回る額しか戻らない

しかもいくら説明されても、意味不明
目論見書に説明してありますで終わり
そもそも目論見書って、ひどいネーミングだと思う
内容も、それがわかったら、購入しない、という
ひどいしろもの

解約を決断した。

わけのわからない金融商品
自分でコントロールできない金融商品
情報が手にないらない金融商品
には、絶対、手を出さないこと

これをわからせてくれた投資信託、
授業料は高かったが、お礼をいう

それにしても、膨大な金額が郵便局や銀行経由で投資信託に流れているらしい

そろそろ、自分と同じようなことを悟る人が続出して
郵便局、銀行の信用不安が起こるのではないか
金の恨みは怖いぞー



看護における目標管理とヒューマンエラー

2006-10-14 | ヒューマンエラー

05/1/21海保 「看護」(日本看護協会出版会/北川)
2005年5月臨時増刊号特集
******************************
「目標管理とヒューマンエラー」
筑波大学大学院教授(心理学) 海保博之

はじめに
 目標管理と言う時には、2つの視点がある。
 一つは、組織など外部での目標(使命)管理である。本特集で使っているのが、もっぱらこれである。
 もう一つは、外部で設定される目標に従って仕事をする人々の「頭の中での」目標管理である。
 両者の間に微妙なギャップが存在するのが普通であるが、そこに目標を取り違えてしまうエラーの種が播かれてしまう。それをミスや事故につなげないための指針を提案するのが本稿のねらいになる。

指針1 安全と仕事に関する目標とを葛藤させない 
 日常的な家事や車の運転、病院での業務などおよそどんな仕事をする時でも、それに安全がからんでくると、頭の中が「あちら立てればこちらが立たず状態(トレ-ドオフ状態)になってしまうことがある。
 仕事の目標を達成しようとしてがんばれば、安全がおろそかになり、逆に、安全を第一にすると、仕事のほうの目標達成に支障が出る。極端な場合は、仕事の放棄さえありうる。
 たとえば、遅刻しない(仕事上の目標)ためには車のスピードを上げなくてはならない。しかし、スピードが限度を超えると、事故の可能性が高くなってしまう(安全上の目標違反)。あるいは、緊急の手術が必要な患者が運び込まれた。しかし、自分の技量では無理とはわかっていても(安全上の目標)、緊急病院の使命(仕事上の目標)のためには、今ここで手術をしなければならない。さてどうする。
 こうしたトレードオフ事態を解決するには、仕事上の目標か安全上の目標のいずれかを優先するか、何もしないかしかない。
 前者に関しては、安全上の目標より仕事上の目標を優先させてしまうと、目標の取り違えエラーが発生する可能性が高まる。いくつか例を挙げてみる。
 ・患者の無理な要求に負けて外出許可をしたら、外出先で患者が失神
 ・有能さをみせたい、あるいは、同僚に負けたくないために、無理な手術をして失敗
 ・極端な合理化をしたため、ミスが続出
 トレードオフ問題の根本的な解決策は、その状況の中からは出てこない。せいぜいが、図に示すように、安全というパンドラの箱を開けさせない目標管理の重要性を認識するしかない。「事故を起こすより遅刻したほうがまし」であることを知ってもらい、組織としてもそれで良いとのメッセージを絶えず送る必要がある。

図1 安全というパンドラの箱を開けさせるもの

 大きくはリスク管理の枠組の中で解決していくしかないであろう。病院でのこうしたリスクが具体的にどのような場面で発生するのか、またその発生の高さと危険度を正当に見積もり広報する、最後は、保険でのカバーということになるであろう。
 トレードオフ問題のもう一つの解決策は、実は何もしないことである。もっと正確に言うなら、トレードオフ状態を抜け出て(事態を一時的に停止させて)、解決を状況の外に求めることである。上司や同僚などに解決策をゆだねるのである。
 ただ、これが習慣的な解決になってしまうと、まずいことも起こる。
 目標の取り違えエラーを引き起こさせる(パンドラの箱を開けさせる)背景要因の中には、職業人なら誰しもが兼ね備える好ましい特性、親切心、有能感、自己顕示欲、向上心、競争心などがある。これを極端に押さえ込んでしまうのは、人間にロボットになれと言うに等しい。技能向上への意欲を削いでしまうこともある。
 「角を矯めて牛を殺す」ことになってしまうのは避けたい。

指針2 安全に関する目標は適度に具体的なレベルで明示する
 どの職場にも、安全衛生標語を見かけることが多い。定番は、「安全第一」「清掃、清潔」、「うがい 手洗い 感染予防の基本です」などなど(中央労働災害防止協会ポスターより。以下*は同じ)。
 これは、安全衛生に関する外部の目標管理の具体例であるが、ここで取り上げたいのは、そうした目標の表現内容の具体性についてである。
 安全衛生の領域に限らないが、どんな目標でもそれは、一つの階層構造をなしている。
 
図2 医療現場における階層構造の例

 上位には、「安全第一」という目標があり、それを達成するための下位目標(より上位の目標を達成するための手段になる)があり、さらに、その下位目標がある、というような構造をなしている。階層が下になるほど、末広がりになる。
 こうした構造を想定した時に、安全上の目標管理に関して2つの問題がある。一つは、目標の具体性(抽象性)のレベルの問題、もう一つは、目標構造の複雑さの問題である。後者については、指針3で考えてみる。
 目標の具体性のレベルとは、たとえば、最上位にある「安全第一」という目標は、非常に抽象的である。では、「きちんと休息 目・首・肩のコリをほぐそう」(*)はどうであろうか。こちらは極めて具体的な行動目標になっている。
 このように、目標構造は、抽象から具体という次元で上から下へと配列されているのが一つの特徴である。
 問題は、「安全第一」と言われても、やるべきことがたくさんありすぎて一体何をすれば、その目標が達成できるか皆目見当がつかない。そうかといって、休息に関する具体的な行動目標は、休息の仕方をガイドするが、それ以外についてはあまり役に立たない。
 このように、目標の抽象度(具体度)によって、それぞれ目標の持つ機能に違いがある。
 抽象的な目標も意味がないわけではない。「安全第一」をみたとたん、自分のするべき具体的な行動目標をあれこれ思い出し、それによって自分の行動を律することができる。また、具体的な目標もそれを見て、そこから「休息」の大事さを思い起こすこともできる。ただし、これができるのは、安全意識の高い人や安全知識の豊富な人の場合である。
 そこで提案する指針が、「適度に具体的なレベルの目標を提示する」である。
 階層構造の中間レベルにある目標を提示することで、それより上位(抽象)、下位(具体)両方の目標を思い起こさせる。ミドルアウト(真ん中から上下に思いをはせる)処理を期待するのである。
 「交通事故ゼロ運動」ではやや抽象的、「制限速度の遵守」では具体的過ぎる(間違いということではない。念のため)。「交通法規の遵守」あたりが適度の具体性のレベルになる。

指針3 目標構造を単線型にする
 目標構造には、図2に示すような複線型のものと、上位から下位まで単線になっているものとがある。安全に関しては、単線型が望ましい。
 それでなくとも、指針1で述べたように、安全の目標単独で機能しているわけではなく、仕事上の目標と、並行して、あるいは、混在して頭の中では存在している。したがって、安全の目標を機能させるためには、それがあまり複雑ではまずい。うっかり忘れた、どれがどれとどう関係しているのかがわからないような状態になってしまう。
 そこで、せめて安全の目標のほうは、単線型にしておく。
 単線なら、仕事上の目標も含めて全体を思い浮かべることもできるし、どの目標がどの目標より上かがすぐにわかる。「患者を喜ばす」ことより「患者の安全を守る」ほうが大事であることが考えるまでもなくわかるような構造にすることが大事になる。

おわりに
 組織に主要な原因があると思われる事故や違反が多発している。言わずもがなの暗黙のルールが支配していた日本の組織のたがが弛んできているきざしがある。
 仕事上の目標も安全上の目標も、暗黙の状況の中に自然に埋め込まれていると思っているととんでもないしっぺ返しをくらう時代趨勢になってきていることを認識する必要があるように思う。
 目標管理、とりわけ、安全上の目標管理は、組織としてはっきり、きちんと提示し、そしてその徹底をはかっていくことが今求められている。
 そのためには、目標が働く人々にとってどのように機能しているかを知る必要がある。その一助に、本稿が少しでもお役に立てれば幸いである。