04/12/8海保
年明け校長あいさつ
「自分探し」「自分作り」をし続けるする若者の増加
●自分は一体何者、という疑問を持つのが高校2、3年生から大学1、2年生頃です。
この間、いろいろの体験や学習をしながら、自分探しをします。モラトリアム期(決断しなくともよい時期)として社会が諸君に与えている貴重な時間です。
この間に、自分の能力、性格、さらに自分を取り巻く環境についての妥当な認識を作り上げ、さらに自分にあった将来の職業イメージを作りあげていきます。
大学3、4年生くらいになると、「自分探し」は終わります。「自我アイデンティティ(自我同一性)」が確立したとして、青年期が終わり、大人の社会へと仲間入りをします。
●以上は、青年心理学の教科書に書かれているオーソドックスな青年像です。ところが、ここ10年くらいの間に、こうしたな青年像がやや怪しくなってきました。
いつまでもモラトリアムを続けてしまう若者が増えてしまったのです。
●家に引きこもったまま出られない人々の増加はやや話しが極端ですが、
フリーターとかニートとか称される人々がどんどん増えてしまったのです。
なお、ニート とは、「Not in Education, Employment or Training」の頭文字(NEET)です。
就職意思がない点でフリーターと区別されます。
15歳から34歳の若年層のうち、2003年度の
フリーターは前年比8万人増の217万人、
ニートは同じく4万人増の52万人
にのぼるそうです(厚生労働省2004年版「労働経済白書」より)。
52万人というと、大学センター入試を受ける人数にほぼ同じです。
いずれも、ここ数年、増加傾向にある点が気になります。
また若者の58%が、フリーターのような生き方を理解できる、としているのもまた気になります。
こうした人々をタイプにわけると
・目標がみつからないモラトリアム型 50%
・就職できない/したくたない型 40%
・作家などをめざす夢追い型 10%
になるそうです(文部科学省)。
●こんな状況をにらんでのことだと思いますが、最近、日本のいくつかの大学で、
「キャリアデザイン学部/学科」
「ライフデザイン学部/学科」
ができてきました。
あるいは、「キャリアセンター」「キャリア教育支援室」を設けたり、
学生時代に企業などで仕事を経験するインターンシップ制度
などもあちこちの大学で出来てきました。
大学を「自分探しを支援する場」「自分作りを支援する場」と位置づけて作られた学部です。
●あるいは、これをビジネスチャンスとして、若年専門のキャリアカウンセリングや適職紹介をする会社が出来てきました。そこで働いているカウンセラーの高坂さんがこんなことを言っています。(朝日新聞、04年12月7日)
「大人になるまでに身につけなきゃならないものがついていない。対人関係や意思決定、将来を想像する力も。」
●関連してもう一つ余談。
日本より見かけ上もっとひどい国もあります。イタリアです。
イタリアでも、25歳から29歳までの男性の60%もが、独立せずに親の家に同居しているそうです。豊かな生活を享受し続けたいからです。また母親がそれを望んでいるからです。なお、そうした女性は男性の約半分の34%だそうです。(内田洋子「破産しない国イタリア」平凡社新書より)
●それは、さておくとしても、諸君がこれから活躍することになる社会は、諸君の保護者の青春、青年時代と比較しても、格段に変化しています。たとえば、
・グローバル化しています
・軽薄短小と言われる、情報産業/知識産業が主役になってきました
・少子高齢化が進んでいます
・人との直接的なかかわりが希薄になってきています
●社会の基盤において、パラダイム・シフトが起りつつある社会になってきました。
既存の枠組が大きく変わろうとしています。
誰もが先行きがみえない社会が、諸君の目の前に立ちはだかっています。
フリーター、ニート、いずれも、こうした変化に恐れおののいてしまって、いつまでも自分探しに専念してしまっているようなところがあるようにもみえます。
●しかし、見方を変えれば、そんな社会だからこそ、
諸君の斬新な発想、
過去にとらわれない創造的、独創的な活動
が求められているところがあります。
人と社会との多彩なかかわりの中での「自分探し」
そして
こうと決めたら勇猛果敢に走り出しながらの「自分作り」
がこれかは求められています。
走り出してみてわかることがたくさんあります。
また、あれこれと考え過ぎるとかえって細部に捕われてしまって、本筋がみえなくなってしまうこともあります。
●
****************************
●青春の夢に忠実であれ(シラー)
●老年の欠乏を補うに足るものを、青年時代に身につけておけ(レオナルド・ダ・ビンチ)
●人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ(吉野源三郎)

年明け校長あいさつ
「自分探し」「自分作り」をし続けるする若者の増加
●自分は一体何者、という疑問を持つのが高校2、3年生から大学1、2年生頃です。
この間、いろいろの体験や学習をしながら、自分探しをします。モラトリアム期(決断しなくともよい時期)として社会が諸君に与えている貴重な時間です。
この間に、自分の能力、性格、さらに自分を取り巻く環境についての妥当な認識を作り上げ、さらに自分にあった将来の職業イメージを作りあげていきます。
大学3、4年生くらいになると、「自分探し」は終わります。「自我アイデンティティ(自我同一性)」が確立したとして、青年期が終わり、大人の社会へと仲間入りをします。
●以上は、青年心理学の教科書に書かれているオーソドックスな青年像です。ところが、ここ10年くらいの間に、こうしたな青年像がやや怪しくなってきました。
いつまでもモラトリアムを続けてしまう若者が増えてしまったのです。
●家に引きこもったまま出られない人々の増加はやや話しが極端ですが、
フリーターとかニートとか称される人々がどんどん増えてしまったのです。
なお、ニート とは、「Not in Education, Employment or Training」の頭文字(NEET)です。
就職意思がない点でフリーターと区別されます。
15歳から34歳の若年層のうち、2003年度の
フリーターは前年比8万人増の217万人、
ニートは同じく4万人増の52万人
にのぼるそうです(厚生労働省2004年版「労働経済白書」より)。
52万人というと、大学センター入試を受ける人数にほぼ同じです。
いずれも、ここ数年、増加傾向にある点が気になります。
また若者の58%が、フリーターのような生き方を理解できる、としているのもまた気になります。
こうした人々をタイプにわけると
・目標がみつからないモラトリアム型 50%
・就職できない/したくたない型 40%
・作家などをめざす夢追い型 10%
になるそうです(文部科学省)。
●こんな状況をにらんでのことだと思いますが、最近、日本のいくつかの大学で、
「キャリアデザイン学部/学科」
「ライフデザイン学部/学科」
ができてきました。
あるいは、「キャリアセンター」「キャリア教育支援室」を設けたり、
学生時代に企業などで仕事を経験するインターンシップ制度
などもあちこちの大学で出来てきました。
大学を「自分探しを支援する場」「自分作りを支援する場」と位置づけて作られた学部です。
●あるいは、これをビジネスチャンスとして、若年専門のキャリアカウンセリングや適職紹介をする会社が出来てきました。そこで働いているカウンセラーの高坂さんがこんなことを言っています。(朝日新聞、04年12月7日)
「大人になるまでに身につけなきゃならないものがついていない。対人関係や意思決定、将来を想像する力も。」
●関連してもう一つ余談。
日本より見かけ上もっとひどい国もあります。イタリアです。
イタリアでも、25歳から29歳までの男性の60%もが、独立せずに親の家に同居しているそうです。豊かな生活を享受し続けたいからです。また母親がそれを望んでいるからです。なお、そうした女性は男性の約半分の34%だそうです。(内田洋子「破産しない国イタリア」平凡社新書より)
●それは、さておくとしても、諸君がこれから活躍することになる社会は、諸君の保護者の青春、青年時代と比較しても、格段に変化しています。たとえば、
・グローバル化しています
・軽薄短小と言われる、情報産業/知識産業が主役になってきました
・少子高齢化が進んでいます
・人との直接的なかかわりが希薄になってきています
●社会の基盤において、パラダイム・シフトが起りつつある社会になってきました。
既存の枠組が大きく変わろうとしています。
誰もが先行きがみえない社会が、諸君の目の前に立ちはだかっています。
フリーター、ニート、いずれも、こうした変化に恐れおののいてしまって、いつまでも自分探しに専念してしまっているようなところがあるようにもみえます。
●しかし、見方を変えれば、そんな社会だからこそ、
諸君の斬新な発想、
過去にとらわれない創造的、独創的な活動
が求められているところがあります。
人と社会との多彩なかかわりの中での「自分探し」
そして
こうと決めたら勇猛果敢に走り出しながらの「自分作り」
がこれかは求められています。
走り出してみてわかることがたくさんあります。
また、あれこれと考え過ぎるとかえって細部に捕われてしまって、本筋がみえなくなってしまうこともあります。
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●青春の夢に忠実であれ(シラー)
●老年の欠乏を補うに足るものを、青年時代に身につけておけ(レオナルド・ダ・ビンチ)
●人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ(吉野源三郎)

