生体肝移植が選択できた幸福

B型慢性肝炎から肝硬変・肝臓癌となり生体肝移植を受けることとなった医師によるブログ

血管造影+塞栓+抗がん剤動注治療 パート1

2008-12-17 09:18:20 | 移植までの検査・治療

連休明けの検査が終わり内科に入院、血管造影と肝癌に対する化学塞栓療法を行いました。上の写真は、肝右葉内の腫瘍の血管造影とCTAPとリピオドールをつめたあとのCTです。

治療当日、”尿管フォーレをどうしますか?”といわれたので、”どちらでもいいです”といったところ、気を使ったのか”じゃあ、なしでやってみましょう”と・・・

治療は点滴をしながらになるので、尿量はマックスへ・・・

 

最初は、右の足の付け根の部分を剃毛・消毒し、表面麻酔をした後シースという短いカテーテルを押し込みます。

このとき、圧迫感が強いのですが、これを入れるとカテーテルの入れ替えがスムースで、血管を保護できます。

まず、足の付け根の動脈から腹部の大動脈へカテを進めますが、血管には痛覚神経がないので、痛みはありません。

このときは、ポーっとする薬と痛み止めが入っていたので、少しラリッていたので感じなかったのかもしれませんが・・・

上腸管膜動脈の入り口にカテーテルを引っ掛け、血管拡張剤を投与し血管を広げ造影剤を機械で入れます。

拡張した動脈から腸管を回った造影剤が、静脈つまり門脈に帰ってきますので、門脈造影を撮影します。

これで、肝癌の門脈進展や、副側血行路(バリックス)などを確認します。動脈に直接造影剤を入れるので、この時にCTをあわせて撮影すると、より細かな情報が得られ、CTAPという検査になります。別な項目にアップします。

次に、カテーテルを腹腔動脈幹から総肝動脈に進め肝全体の造影を行います。

血管の走行が大体わかるので、左右を分けて造影したり、腫瘍周囲のみ造影したりします。

 

このころになると、私の膀胱は破裂直前に・・・・    看護師さんにお願いして尿瓶をいただきました。

先生方が、足の付け根のところで一生懸命治療しているのに、そのそばでジョロジョロ・・・・   すいません。治療中これを3回しました

肝癌は、肝動脈によって栄養されているので、これに抗がん剤を直接注入し、そのあとに小さなゼラチンでふた(塞栓)をしてやることによって、腫瘍を治療します。

だいたい、詰める血管がきまりました。ここまでは、何事もなく進行し、薬剤で気持ちよい世界にいましたが・・・

つづく


散髪してきました

2008-12-16 14:29:53 | 退院後

体調が改善し、座位で1時間程度座れるようになってきたので、ぼさぼさだった頭をさっぱり切ってきました。

いつも通っていた、理容店ですが、肩周りの筋肉低下を指摘されました。体重が10kg以上低下したので、筋肉が落ちていたのです。

おなかのプヨプヨはあまりなくなっていないのに、筋肉はごっそり落ちていました。

風呂に入ったとき、鏡に自分の顔にどっかのおじいちゃんの体が合成写真のように移っているのをみて、がっかりしました

下半身は、散歩などで少し戻ってきたのですが、上半身はほとんど使わないので、まだガリガリ状態・・

少し、上半身も鍛えなくちゃ

 

帰りに、学生時代によく言っていた喫茶店によって昼ごはんを食べてきました。この喫茶店は、子供の同伴がだめなので久しぶりでした・・・

お昼のランチを注文すると、病院食に慣れていた私にとって鬼のような量の焼肉が・・・

無理無理・・・と 思いながら食べていくと、あれっ あれっ・・

全部、食べてしまいました

苦しかったのですが、術後、こんなに普通の生活をしていなかったので、うれしくてうれしくて・・・

でも、安心すると大変なこととなりそうなので、明日からは自重します・・


散歩に行ってきました。退院後11日目

2008-12-15 17:11:27 | 退院後

退院して、11日たちました。

週末より、抗生剤が中止となり、免疫抑制剤が半量となりましたが今のところ胆管炎の症状は落ち着いています。

今日は、非常に天気が良かったので、2km程度の散歩に行ってきました。

2回目の退院時に、300m程度の散歩に行ったときは、ハカハカして帰ってきたらすぐに横になっていましたが、今回は余裕をもっていくことができました。

明日、筋肉痛かもしれませんが・・・

明日は、ぼさぼさに伸びてしまった頭を散髪に行こうと思っています。

今回の移植で、前から気になっていた白髪が一気に増えたように感じます

 

精神的なストレスが、白髪を増やすのでしょうか?

でも、体調は順調に回復しているようなので、少しずつがんばります


アシアロシンチグラム

2008-12-15 09:25:34 | 移植までの検査・治療

肝の残存機能を画像で検査する方法に、アシアロシンチグラムという核医学検査があります。

写真は、治療前に撮影した自分の検査結果です。

左上のはじの写真が、時間の経過にあわせて撮影した画像から、心臓の部分と肝臓の部分の集積の比率を計算している写真です。そのとなりは、横断像と冠状断像です(画像小さくでわからないかも?)。

下の12コマは、正面から見た画像を矢印のように少しずつ回転させて一回転させた画像です。

肝硬変の形態集積で、肝癌の部分には正常肝細胞がないので集積していません。

残存機能の評価としては中程度の障害でした。

寝ていれば終わる検査(でも時間は長い)なので、苦痛はないです。すべての検査が痛みがなければよいのですが・・・

 

アシアロシンチ

正常肝細胞表面のアシアロ糖受容体に放射性同位元素が結合する性質を利用して肝臓の代謝・残存機能機能を検査する。

主に心臓の血液中に残存する同位元素と肝細胞に集積した同位元素の比を取ることにより、残存肝機能の評価を行う検査。


PET検査について

2008-12-14 11:21:59 | 移植までの検査・治療

関連病院で、PET検査を受けることとなりました。写真は自分のPET検査の結果です。

上段が、薬剤投与後休憩を挟んでとった早期像です。

左がCTに重ね合わせた断層画像で、温度と同じで赤いほど集積があることを示しています。右は、正面から腹部全体の集積を重ねてみている画像で、腎臓・膀胱に高い集積(正常像)を認めています。赤線が、肝臓癌のあった部位ですが、私の場合は集積しませんでした。

下段が投与後4時間後の、晩期像です。

やはり、腫瘍には集積しませんでした。

PET検査は、薬剤投与後刺激のないほの暗い部屋で、1時間程度じっとして脳の活性などを落ち着ける必要があり、この時間がまさに”ざんげ”の時間のようで、いろいろな心配がぐるぐる頭を駆け抜けます(ものすごくいやな時間でした)。

以下は検査についての説明です。

 

PET(positron emission cpmputed tomography):ポジトロン断層法

陽電子崩壊核種を体内に投与し、集積したRIが近傍の水の電子と反応し180度反対方向に2本の消滅放射線を放出するが、そのX線を2個の検出器で捕らえ断層画像を作成する方法。

しかし、出来上がってくる検査結果は、通常の断層画像と位置関係がわからなく位置情報に乏しい。よって、同時にCTを撮影しコンピューターで合成することにより正確な補正と位置関係が明らかになる(PET-CT)

一般的には、FDG(fluoro-deooxy-glucose)を使用しているが、これはブドウ糖に陽電子崩壊元素であるF(フッ素)をつけ、体内でブドウ糖を消費する細胞・組織に取り込まれるところを画像にする方法が使用されている。

一般的に癌細胞は、分裂活動が盛んなためブドウ糖の消費が多く、多くの集積を認める場合が多い(万能な検査ではない)。これを利用して、がん検診や転移の検索に用いられている。

しかし、肝細胞はリン酸化され細胞内に取りこまれたものをG6Pという酵素が脱リン酸化をおこし、細胞外に排出するため、取り込みが弱く集積は低い。

よって、高分化(悪性度が低い)な肝癌では集積せずに、肝癌においては転移などの検索には向いておらず、保険適応もない。しかし、低分化(悪性度が高い)な肝癌では、酵素が欠落し集積を認めるようになる。PET集積を認めると予後不良であるという報告が多い

 


3D-CT(かんぞうさんへの特別編)

2008-12-14 10:54:18 | その他

いつもコメントいただくかんぞうさんへの特別編です。

術後2日目に、肝静脈の血流異常疑いで、ダイナミックCTを撮影し、門脈と肝静脈を3Dで再構成(重ねて、立体表示させ、血管成分のみ抽出した画像)したものです。

赤い方のが立体的に3次元化した画像で、門脈の流れを見ています。

青いほうが肝静脈の3次元画像を、光で一枚の画像に投影したように再構成したMIP像です(少し見やすくなります)。

参考になったでしょうか?


CTによる肝の画像診断について

2008-12-13 12:21:17 | 移植までの検査・治療

提示した写真は、発症時に撮影した私のCTです

肝癌の画像診断の方法として、CTは古くから使用されていますが、造影剤改善(注1)により副作用の減少・MDCT(注2)の発達により小さな病変の描出が可能となっています。

特に、生体肝移植において重要でと思われるのは、ミラノ基準(注3)合っているかどうかで保険適応が決定されることです。

小さな病変が複数見つかることにより、保険適応外となってしまう患者さんが増加し、新聞などで治療費の返還などを伝えていますが、私的にはミラノ基準以外の判断基準が必要と考えています。

肝癌の検出には、基本的にdynamic CTという、造影剤の投与を通常とは異なった造影方法で撮影します。

受けたことのある患者さんはご存知と思いますが、造影剤を急速に注入するため少し太めの針で点滴ラインを確保し、撮影直前に造影剤を一秒間に3-5ccの速さで急速注入します。

注入すると、まず胸に熱いものがこみ上げてくるような感じがします。注入された造影剤が、心臓から肺に回ってまた心臓に帰り全身にゆくためです。

次に、腹部に熱いものが回ってきます。肝臓から腸、最後には骨盤の中に行くのですが、このとき会陰部の辺りがぬれた感じになり、思わずお漏らしをしたような錯覚になりますが、実際には問題ないようです。

この間に、早期動脈相・後期動脈相・肝実質相・平衡相と4回の撮影があります。それぞれのタイミングにより腫瘍の有無・造影効果のパターンによって、診断が下されます。

基本的にはCTの造影剤は、動脈の発達具合により強く集まり、その後組織液に拡散・また血管に戻り腎から尿に排泄されます。

肝癌は、基本的に動脈により強く栄養されるので、早期動脈相~後期動脈相に正常肝よりも早く造影され、正常肝が肝実質相で造営されるころには造影剤が抜けてゆく像を示します(写真の赤丸部分参考)。

(注1)

造影剤の改善:昔はイオン性造影剤を使用していたので、現在の造影剤より2倍の濃さの造影剤を体内に投与され、嘔吐・熱感などの副作用が非常に多かったのですが、最近は非イオン性造影剤を使用するようになり、頻度は減少。

(注2)

MDCT(Multidetector-row CT)

昔のCTは、機械が一回転して断層画像が1枚撮影できた。それが回転速度の高速化とコンピューターの進歩により、一回転10秒だったものが、2秒・1秒・0.3秒となった。これ以上は遠心力の関係で不可能なため、一回転で撮影できる枚数を増加させ64枚撮れてしまう(最近は128枚まで製品化)。その結果、短時間で薄い写真をたくさん撮影できるようになった。ミラノ基準が作成された時代のCTと比較すると小さな病変が発見され、適応外になってしまう患者さんが増えてしまう。

(注3)

ミラノ基準:①病変が3個以内ですべて3cm以下である。または、5cmの以下一個のみ。

②遠隔転移なし

※生体肝移植保健基準:以下の2項目に該当

    移植前1回月以内でのCTでの評価がミラノ基準に該当

肝硬変による残存機能がchild -Pugh C分類(下記参考)

child -Pugh分類

腹水(なし:1、軽度:2、中等度:3

血清総ビリルビン値2.0<:1、2.0-3.0:2、3.0>:3)

血清アルブミン値3.5>:1、3.5-3.0:2、3.0<:3)

プロトロンビン時間70>:1、40-70240<:3)

栄養状態(良:1、可:2、不可:3)

     A5-6 B7-9 C10-15 上記合計点数により算出


退院後1週間たちました

2008-12-12 15:17:37 | 退院後

今日退院して1週間目の外来受診してきました。

外来では、同じころに移植した患者さんも受診していて、皆さん元気なようでした。

採血行い、肝酵素は変化なし。

胆道系酵素は高めであるが、炎症反応低いのでいいでしょう。と・・・

免疫抑制剤である、プログラフが1日4mgから2mgへ、プレドニンは1日2.5mgのまま行きましょうと。

全体的には、良い結果でした。

 

しかし、大学病院の弊害なのか、やはり待ち時間が長いのが気になります。

途中で背中が痛くなって、いらいらしていたのですが、次第に良くなり”結構段丈夫なものだなー”と感心しました。

来週のまた受診予約となりました。

今週はおとなしくする予定なので、来週からいろいろはじめてみたいと思います。

 


家族への説明

2008-12-11 10:05:48 | 移植まで

家族へ肝臓癌である事を、どう伝えたらよいか・・・

連休中は、家族で岩手県のけんじワールドへ旅行予定だったので、最後の旅行となってしまうかもしれないと思い、がんばって遊んできました

もともと、楽天的であったので、自分の気持ちの整理はついてきたのですが、家族にどんな風に説明したらよいか・・・

上の子は、説明すれば理解してくれるので、妻と一緒に説明してもよかったのですが、精神的に不安定にしてしまうので、妻だけに説明することに・・・

しかし、いつどのタイミングで言い出すかは、なかなか決まらなかった。

そうしているうちに、連休も終わりに近づいてタイムリミットが近づいてきました。

最後の日に、朝子供たちが寝ているときに説明を始めると、冷静でいようと考えていたのに、号泣しながら説明する状態に・・・

でも、”まず病院へ行って今の状態を把握してから考えましょう”と言われ、落ち着いたような気がします。 

連休明けに、消化器内科に受診し、採血・CT・シンチ・エコーなどを2週間かけて行いました。

病気を発見した関連病院でPETが始まり、ボランティアを集めていたので肝臓癌の症例として立候補し、撮影してもらえました。

 

その結果です・・・

S56にかけて約35mmの肝癌と思われる病変+その背側にも約17mmの娘結節

葉外側区背側辺縁にも約20mmの同様の病変を認める明らかな遠隔転移なし

 

腫瘍マーカー

AFP 33.9(0-8.5)

PIVKA 1021(0-40)

 

肝硬変の状態

child -Pugh分類 A

 

多発HCCの診断 T3N0M0 病期Ⅲ期 

 

となり、その時点で生体肝移植の選択肢が始めて出現してきました。 

治療法の選択肢として

①動脈塞栓術+抗がん剤の動注 または 外科切除

②動脈塞栓術+抗がん剤の動注後に、ミラノ基準を満たしたら生体肝移植

 

いずれにしろ現時点での移植は、困難とのことで、肝動脈塞栓術と抗がん剤

の動脈注入法を行うこととなりました 


医師15年目

2008-12-10 13:07:02 | 移植まで

お仕事を手伝いに生かせていただいている、県内の関連病院が今年の4月に、新規移転となり、放射線関係の機器がすべて新しくなりました

連休明けより、業務開始にむけて機器の調整や予行練習など行っているときに、事件は起こりました

放射線治療機器も、CTで患者さん情報を立体的に把握し、治療計画を行い、高精度名治療を行うようになっていたので、だれかボランティアになって流れを見てみることになりました。

自分も肝酵素は10年間落ち着いていたのですが、画像系の検査をしていなかったので、”俺のCTを使って試してみよう”ということに。

治療担当の技師さんが、それでは撮影します・・・・

検査が終了し、自分で撮影結果を見てみると、軽度肝硬変の状態かな・・・

あれっ・・・

肝臓に何か、4cmぐらいの灰色の物体が・・・

職業柄、それが何を示すのかは瞬間的に理解できました。

隣に居た技師さんが、”どうですか?OKですか?”と確認してきたのに、”あっああ”と上の空の返事を。

しばらく、パニック状態・・・

このとき、技師さんも”なんか急に応答が悪くなって・・・”といっていた。

放射線科のオーベンの先生に、少し体調悪いので早めに帰らせてくださいとお願いしたところ、”まだ調整業務なのでいいよ”といわれ、早退。

帰りの高速道路では、どうやって運転して帰ってきたか、思い返しても思い出せないような状態でした(危なかった・・・)。

そのまま、連休に突入してしまいました・・・