生体肝移植が選択できた幸福

B型慢性肝炎から肝硬変・肝臓癌となり生体肝移植を受けることとなった医師によるブログ

移植前の治療効果と移植費用 パート2

2008-12-19 16:23:06 | 移植までの検査・治療

医師になったばかりのとき、保険会社のお姉さんが新入生を狙って勧誘に・・・・・

そのころすでに発症していたので、まず健康保険には加入できないと思っていたこと、生命保険というのは人をだまして保険料をとって、いざというときに支払わないというマイナスのイメージを持っていました。

そのとき担当してくれた方が、熱心に勧誘してくれたことと、保険医と会社に掛け合ってくれて、肝臓以外の疾患であれば健康保険に入れる事となりました。

しかし、入って2年以内であると肝炎に関する疾患には保険が下りない内容です。

でも2年間、平穏無事でいられれば、普通の人と同じ内容になるという条件をつけてもらえました。

不思議なもので、保険に加入したとたんに、肝酵素は落ち着き、そこから10年以上の間、落ち着いてしまったのです。

 

保険に入って15年目に保険内容の見直しをしなければならなかったのが、今年の3月で、その知らせに対して、”保険料が変わらなければ内容変更はお任せします”と。

生命保険のほうで、癌に対する保険は有名な癌保険会社に変更し、死亡時の保険料を下げて変更しました。

そのすぐあとに、肝臓癌を偶然見つけてしまったのです。

先行していた、保険内容に癌と診断されたらその時点で○○○万円一括で下りますという古いタイプの保険が、幸運にも継続になっていました。

その保険が使用できるとわかり、今回移植へと方向性が決まりました。

保険会社のお姉さん(今は少し、御年召されたかな?)ありがとうございました。

ドナーに関しては、以前にアップしたように、兄が受けてくれることとなりました。

金銭面・ドナーが決まり、8/27移植予定となりました。

 


移植前の治療効果と移植費用 パート1

2008-12-18 15:50:15 | 移植までの検査・治療

肝臓癌に対する、抗がん剤の動脈注入と動脈塞栓の治療後の評価は、手術前1ヶ月でのCTで行われました。

写真は、治療時のCTで腫瘍に詰めたリピオドール(白い部分)が腫瘍の範囲で、2ヵ月後のCTでミラノ基準の移植適応内まで縮小しています

採血でも腫瘍マーカーが、AFP 33.9(0-8.5)・PIVKA 1021(0-40)と高かったものが、両方とも正常範囲内に下がりました

ミラノ基準は、保健適応内まで満たすようになったのですが、保健適応となるのは腫瘍の大きさだけでなく、肝硬変の状態がchild-Pugh分類でC(重度の肝硬変)でないといけないのです

したがって、今回の移植に関しては保健適応外(完全自費)で受けることとなったのです。

状況にもよりますが、一般的に800万~1500万円までの間のお金がかかる見込みでした。

家の借金もあり、移植後にどの程度復職できるのかもわからない状態でしたが、こののまま癌で死んでしまえば、家の借金は保険でチャラ、家族には保険金が入るのでお金に関しては安心・・・

移植を受けると、家の借金+手術の借金・・・

お金で命の方向性が決まるという問題に直面してしまいました。

つづく・・


血管造影+塞栓+抗がん剤動注治療 パート2

2008-12-17 09:39:44 | 移植までの検査・治療

上の写真は、肝左葉内の腫瘍の写真で左上が、血管造影、右上・左下がCTAP、右下が、塞栓物質で詰めた後のCTです。

治療すべき動脈も決定され、まず肝右葉の腫瘍に抗がん剤(シスプラチン)を動注しました。吐き気と腎障害が心配な薬剤ですが、少量なので何事もなく終了。

次に塞栓です。これも大きな問題なく終了しました。

なんだ、楽チンじゃん!と思っていました。

 

次に左葉内の腫瘍にも同様の治療を行うことになり、楽勝で構えていたら、薬剤を入れたとたんに、両方の肩がグーッと重くなってきて、すごい肩こりのような我慢できない痛みが一気に出てきました

動いてはいけなかったのですが、自然に両手で肩を押さえてしまいました(非常に悪い患者ですので真似しないように・・・むりですよね!)。

看護師さんが、背中に手を入れてくれて門でくれました。非常に楽になり、まさに天使の手によるマッサージで、治療後”ありがとうございました”と何回も言っていました。

薬剤が肝内だけでなく横隔膜のほうまで行ったりすると、関連痛といって肩が痛くなることがあるそうです。

肝自体も痛かったのですが、予想していた範囲内で我慢できましたが、肩の痛みは非常につらいものがありました。夜までベッド上安静でさらにか加速・・・

4時間後、食べていいですよといわれたので、スターバックスのコーヒーとサンドイッチを食べました(病院内にスタバがあります)。

非常においしくいただき満足感に浸っていると、胃の中に吐き気の妖精が出現し胸の中に・・・ そしてのどに・・・  あっという間にまずい状態に

近くにあった、ゴミ箱に一気にオエーッといってしまいました

治療で使用したシスプラチンによる急性嘔吐でした。これが抗がん剤による吐き気なのか?

看護師さんに連絡し、抗がん剤用の吐き気止め(カイトリル)を点滴で使用すると、吐き気は一気に改善し楽になりました。

この薬によって、化学療法による吐き気がすごく楽になったと教科書では知っていましたが、自分の体で体験すれば、間違いはありません。

 

治療後は、肝酵素が順調に低下してきたので、週末に退院となり、1週間の休養後仕事に復職しました。


血管造影+塞栓+抗がん剤動注治療 パート1

2008-12-17 09:18:20 | 移植までの検査・治療

連休明けの検査が終わり内科に入院、血管造影と肝癌に対する化学塞栓療法を行いました。上の写真は、肝右葉内の腫瘍の血管造影とCTAPとリピオドールをつめたあとのCTです。

治療当日、”尿管フォーレをどうしますか?”といわれたので、”どちらでもいいです”といったところ、気を使ったのか”じゃあ、なしでやってみましょう”と・・・

治療は点滴をしながらになるので、尿量はマックスへ・・・

 

最初は、右の足の付け根の部分を剃毛・消毒し、表面麻酔をした後シースという短いカテーテルを押し込みます。

このとき、圧迫感が強いのですが、これを入れるとカテーテルの入れ替えがスムースで、血管を保護できます。

まず、足の付け根の動脈から腹部の大動脈へカテを進めますが、血管には痛覚神経がないので、痛みはありません。

このときは、ポーっとする薬と痛み止めが入っていたので、少しラリッていたので感じなかったのかもしれませんが・・・

上腸管膜動脈の入り口にカテーテルを引っ掛け、血管拡張剤を投与し血管を広げ造影剤を機械で入れます。

拡張した動脈から腸管を回った造影剤が、静脈つまり門脈に帰ってきますので、門脈造影を撮影します。

これで、肝癌の門脈進展や、副側血行路(バリックス)などを確認します。動脈に直接造影剤を入れるので、この時にCTをあわせて撮影すると、より細かな情報が得られ、CTAPという検査になります。別な項目にアップします。

次に、カテーテルを腹腔動脈幹から総肝動脈に進め肝全体の造影を行います。

血管の走行が大体わかるので、左右を分けて造影したり、腫瘍周囲のみ造影したりします。

 

このころになると、私の膀胱は破裂直前に・・・・    看護師さんにお願いして尿瓶をいただきました。

先生方が、足の付け根のところで一生懸命治療しているのに、そのそばでジョロジョロ・・・・   すいません。治療中これを3回しました

肝癌は、肝動脈によって栄養されているので、これに抗がん剤を直接注入し、そのあとに小さなゼラチンでふた(塞栓)をしてやることによって、腫瘍を治療します。

だいたい、詰める血管がきまりました。ここまでは、何事もなく進行し、薬剤で気持ちよい世界にいましたが・・・

つづく


アシアロシンチグラム

2008-12-15 09:25:34 | 移植までの検査・治療

肝の残存機能を画像で検査する方法に、アシアロシンチグラムという核医学検査があります。

写真は、治療前に撮影した自分の検査結果です。

左上のはじの写真が、時間の経過にあわせて撮影した画像から、心臓の部分と肝臓の部分の集積の比率を計算している写真です。そのとなりは、横断像と冠状断像です(画像小さくでわからないかも?)。

下の12コマは、正面から見た画像を矢印のように少しずつ回転させて一回転させた画像です。

肝硬変の形態集積で、肝癌の部分には正常肝細胞がないので集積していません。

残存機能の評価としては中程度の障害でした。

寝ていれば終わる検査(でも時間は長い)なので、苦痛はないです。すべての検査が痛みがなければよいのですが・・・

 

アシアロシンチ

正常肝細胞表面のアシアロ糖受容体に放射性同位元素が結合する性質を利用して肝臓の代謝・残存機能機能を検査する。

主に心臓の血液中に残存する同位元素と肝細胞に集積した同位元素の比を取ることにより、残存肝機能の評価を行う検査。


PET検査について

2008-12-14 11:21:59 | 移植までの検査・治療

関連病院で、PET検査を受けることとなりました。写真は自分のPET検査の結果です。

上段が、薬剤投与後休憩を挟んでとった早期像です。

左がCTに重ね合わせた断層画像で、温度と同じで赤いほど集積があることを示しています。右は、正面から腹部全体の集積を重ねてみている画像で、腎臓・膀胱に高い集積(正常像)を認めています。赤線が、肝臓癌のあった部位ですが、私の場合は集積しませんでした。

下段が投与後4時間後の、晩期像です。

やはり、腫瘍には集積しませんでした。

PET検査は、薬剤投与後刺激のないほの暗い部屋で、1時間程度じっとして脳の活性などを落ち着ける必要があり、この時間がまさに”ざんげ”の時間のようで、いろいろな心配がぐるぐる頭を駆け抜けます(ものすごくいやな時間でした)。

以下は検査についての説明です。

 

PET(positron emission cpmputed tomography):ポジトロン断層法

陽電子崩壊核種を体内に投与し、集積したRIが近傍の水の電子と反応し180度反対方向に2本の消滅放射線を放出するが、そのX線を2個の検出器で捕らえ断層画像を作成する方法。

しかし、出来上がってくる検査結果は、通常の断層画像と位置関係がわからなく位置情報に乏しい。よって、同時にCTを撮影しコンピューターで合成することにより正確な補正と位置関係が明らかになる(PET-CT)

一般的には、FDG(fluoro-deooxy-glucose)を使用しているが、これはブドウ糖に陽電子崩壊元素であるF(フッ素)をつけ、体内でブドウ糖を消費する細胞・組織に取り込まれるところを画像にする方法が使用されている。

一般的に癌細胞は、分裂活動が盛んなためブドウ糖の消費が多く、多くの集積を認める場合が多い(万能な検査ではない)。これを利用して、がん検診や転移の検索に用いられている。

しかし、肝細胞はリン酸化され細胞内に取りこまれたものをG6Pという酵素が脱リン酸化をおこし、細胞外に排出するため、取り込みが弱く集積は低い。

よって、高分化(悪性度が低い)な肝癌では集積せずに、肝癌においては転移などの検索には向いておらず、保険適応もない。しかし、低分化(悪性度が高い)な肝癌では、酵素が欠落し集積を認めるようになる。PET集積を認めると予後不良であるという報告が多い

 


CTによる肝の画像診断について

2008-12-13 12:21:17 | 移植までの検査・治療

提示した写真は、発症時に撮影した私のCTです

肝癌の画像診断の方法として、CTは古くから使用されていますが、造影剤改善(注1)により副作用の減少・MDCT(注2)の発達により小さな病変の描出が可能となっています。

特に、生体肝移植において重要でと思われるのは、ミラノ基準(注3)合っているかどうかで保険適応が決定されることです。

小さな病変が複数見つかることにより、保険適応外となってしまう患者さんが増加し、新聞などで治療費の返還などを伝えていますが、私的にはミラノ基準以外の判断基準が必要と考えています。

肝癌の検出には、基本的にdynamic CTという、造影剤の投与を通常とは異なった造影方法で撮影します。

受けたことのある患者さんはご存知と思いますが、造影剤を急速に注入するため少し太めの針で点滴ラインを確保し、撮影直前に造影剤を一秒間に3-5ccの速さで急速注入します。

注入すると、まず胸に熱いものがこみ上げてくるような感じがします。注入された造影剤が、心臓から肺に回ってまた心臓に帰り全身にゆくためです。

次に、腹部に熱いものが回ってきます。肝臓から腸、最後には骨盤の中に行くのですが、このとき会陰部の辺りがぬれた感じになり、思わずお漏らしをしたような錯覚になりますが、実際には問題ないようです。

この間に、早期動脈相・後期動脈相・肝実質相・平衡相と4回の撮影があります。それぞれのタイミングにより腫瘍の有無・造影効果のパターンによって、診断が下されます。

基本的にはCTの造影剤は、動脈の発達具合により強く集まり、その後組織液に拡散・また血管に戻り腎から尿に排泄されます。

肝癌は、基本的に動脈により強く栄養されるので、早期動脈相~後期動脈相に正常肝よりも早く造影され、正常肝が肝実質相で造営されるころには造影剤が抜けてゆく像を示します(写真の赤丸部分参考)。

(注1)

造影剤の改善:昔はイオン性造影剤を使用していたので、現在の造影剤より2倍の濃さの造影剤を体内に投与され、嘔吐・熱感などの副作用が非常に多かったのですが、最近は非イオン性造影剤を使用するようになり、頻度は減少。

(注2)

MDCT(Multidetector-row CT)

昔のCTは、機械が一回転して断層画像が1枚撮影できた。それが回転速度の高速化とコンピューターの進歩により、一回転10秒だったものが、2秒・1秒・0.3秒となった。これ以上は遠心力の関係で不可能なため、一回転で撮影できる枚数を増加させ64枚撮れてしまう(最近は128枚まで製品化)。その結果、短時間で薄い写真をたくさん撮影できるようになった。ミラノ基準が作成された時代のCTと比較すると小さな病変が発見され、適応外になってしまう患者さんが増えてしまう。

(注3)

ミラノ基準:①病変が3個以内ですべて3cm以下である。または、5cmの以下一個のみ。

②遠隔転移なし

※生体肝移植保健基準:以下の2項目に該当

    移植前1回月以内でのCTでの評価がミラノ基準に該当

肝硬変による残存機能がchild -Pugh C分類(下記参考)

child -Pugh分類

腹水(なし:1、軽度:2、中等度:3

血清総ビリルビン値2.0<:1、2.0-3.0:2、3.0>:3)

血清アルブミン値3.5>:1、3.5-3.0:2、3.0<:3)

プロトロンビン時間70>:1、40-70240<:3)

栄養状態(良:1、可:2、不可:3)

     A5-6 B7-9 C10-15 上記合計点数により算出