生体肝移植が選択できた幸福

B型慢性肝炎から肝硬変・肝臓癌となり生体肝移植を受けることとなった医師によるブログ

CTによる肝の画像診断について

2008-12-13 12:21:17 | 移植までの検査・治療

提示した写真は、発症時に撮影した私のCTです

肝癌の画像診断の方法として、CTは古くから使用されていますが、造影剤改善(注1)により副作用の減少・MDCT(注2)の発達により小さな病変の描出が可能となっています。

特に、生体肝移植において重要でと思われるのは、ミラノ基準(注3)合っているかどうかで保険適応が決定されることです。

小さな病変が複数見つかることにより、保険適応外となってしまう患者さんが増加し、新聞などで治療費の返還などを伝えていますが、私的にはミラノ基準以外の判断基準が必要と考えています。

肝癌の検出には、基本的にdynamic CTという、造影剤の投与を通常とは異なった造影方法で撮影します。

受けたことのある患者さんはご存知と思いますが、造影剤を急速に注入するため少し太めの針で点滴ラインを確保し、撮影直前に造影剤を一秒間に3-5ccの速さで急速注入します。

注入すると、まず胸に熱いものがこみ上げてくるような感じがします。注入された造影剤が、心臓から肺に回ってまた心臓に帰り全身にゆくためです。

次に、腹部に熱いものが回ってきます。肝臓から腸、最後には骨盤の中に行くのですが、このとき会陰部の辺りがぬれた感じになり、思わずお漏らしをしたような錯覚になりますが、実際には問題ないようです。

この間に、早期動脈相・後期動脈相・肝実質相・平衡相と4回の撮影があります。それぞれのタイミングにより腫瘍の有無・造影効果のパターンによって、診断が下されます。

基本的にはCTの造影剤は、動脈の発達具合により強く集まり、その後組織液に拡散・また血管に戻り腎から尿に排泄されます。

肝癌は、基本的に動脈により強く栄養されるので、早期動脈相~後期動脈相に正常肝よりも早く造影され、正常肝が肝実質相で造営されるころには造影剤が抜けてゆく像を示します(写真の赤丸部分参考)。

(注1)

造影剤の改善:昔はイオン性造影剤を使用していたので、現在の造影剤より2倍の濃さの造影剤を体内に投与され、嘔吐・熱感などの副作用が非常に多かったのですが、最近は非イオン性造影剤を使用するようになり、頻度は減少。

(注2)

MDCT(Multidetector-row CT)

昔のCTは、機械が一回転して断層画像が1枚撮影できた。それが回転速度の高速化とコンピューターの進歩により、一回転10秒だったものが、2秒・1秒・0.3秒となった。これ以上は遠心力の関係で不可能なため、一回転で撮影できる枚数を増加させ64枚撮れてしまう(最近は128枚まで製品化)。その結果、短時間で薄い写真をたくさん撮影できるようになった。ミラノ基準が作成された時代のCTと比較すると小さな病変が発見され、適応外になってしまう患者さんが増えてしまう。

(注3)

ミラノ基準:①病変が3個以内ですべて3cm以下である。または、5cmの以下一個のみ。

②遠隔転移なし

※生体肝移植保健基準:以下の2項目に該当

    移植前1回月以内でのCTでの評価がミラノ基準に該当

肝硬変による残存機能がchild -Pugh C分類(下記参考)

child -Pugh分類

腹水(なし:1、軽度:2、中等度:3

血清総ビリルビン値2.0<:1、2.0-3.0:2、3.0>:3)

血清アルブミン値3.5>:1、3.5-3.0:2、3.0<:3)

プロトロンビン時間70>:1、40-70240<:3)

栄養状態(良:1、可:2、不可:3)

     A5-6 B7-9 C10-15 上記合計点数により算出