鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

ネズミ捕りの問題:①“巣箱に蜂が来ない”問題、②“ネズミが捕まらない”問題(GLASS8-9)

2010-01-19 23:01:49 | Weblog
 白の騎士は役に立たない箱を捨てようとしたが、何か新しい考えが浮かんだらしく、それを注意深く樹に逆さにつるした。彼が「なぜこうしたか分かるか?」とアリスに言う。彼女が首を横に振る。「蜂が箱の中に巣を作ってくれることを望む。そうすれば蜂蜜が手にはいる」と騎士が説明。

 PS1:ここまでの騎士の行動とその説明は合理的である。ところがアリスが別の事実を発見し疑問を持つ。

 「でも、すでにもうミツバチの巣箱をあなたは持っていて、それを鞍にくくりつけてる!」とアリスが言う。騎士が「そうだ、これはとてもよいミツバチの巣箱だ、最上だ!」と答える。だが、どこか不満そうである。

 PS2:アリスの疑問は当然である。蜂蜜を手に入れるため、すでにミツバチの巣箱があるのなら、さらにもう一つ巣箱を用意する必要はない。とすれば別の理由があるはずである。騎士がどこか不満そうなのが、それを示唆する。

 「蜂が一匹もまだ来ない」と騎士が言う。

 PS3:確かにこれは騎士には不満だろう。最上の巣箱に蜂が一匹も来ないのだから。ところが騎士にはミツバチの巣箱の問題のほかに、もう一つ別の問題がある。

 「もうひとつはネズミ捕りだ。思うにネズミが蜂を来させないのだ」と騎士が言う。

 PS4:騎士がここで言いたいのは何か?ネズミが蜂を来させないので馬の鞍にネズミ捕りをつるしネズミを捕まえようとした。ところがネズミはつかまらない、だから蜂が来ないと騎士は述べる。これがネズミ捕りの問題①(ネズミが捕まらない→巣箱に蜂が来ない)である。「ネズミが蜂を来させない」という命題を前提すれば騎士の推論とそれにもとづく行為は妥当である。

 「あるいは思うに蜂がネズミを来させない」と騎士が言う。

 PS5:ここでの騎士は、蜂がいるからネズミが来ない、そのためネズミ捕りにネズミが捕まらないと推論する。これがネズミ捕りの問題②(蜂がいるからネズミが来ない→ネズミが捕まらない)である。「蜂がネズミを来させない」という命題を前提すれば騎士の推論は妥当である。

 PS6:ネズミ捕りの問題は①“巣箱に蜂が来ない”問題、及び②“ネズミが捕まらない”問題と二重である。問題が二重になるのは前提となる命題が異なるからである。命題①「ネズミが蜂を来させない」を前提すれば問題①が発生する。命題②「蜂がネズミを来させない」を前提すれば問題②が発生する。

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