ウオーキングの途中で見つけた 松ぼっくり
眼科受診のため、近くなので自転車で出かけたじいや。
最近は脚力低下、途中に登り坂があり、こぎ辛くて何度も自転車を押して歩くそうだ。
「今日は、こンなもん拾ったバイ!」
高齢者用の老眼鏡らしくて、使い慣れたような眼鏡が薄紫のケースに入っていた。
「あら、困っていなはるよね、この人・・・」
中をみたら名前の記入はなく、眼鏡拭きの布にS◎堂と店の名がはいっていた
「あ、この店ならわかるから警察よりも、店に届けておいたほうが早いよね」
その日のうちに店に電話をして、翌日に届けに行った。
店の番頭さんらしき人の云うことには
「これは随分古い型ですから、もうデーターもないし、たぶん予備用に持ってあったのでしょうね
ケースは新しいので、確かにうちの店の品ですが・・・まだ届けでもありませんしね」
困った顔をされたが、一応預かってくださったのでホッとした。
・・・あ、思い出した。
昨年末頃だったか、JR列車で熊本へ行った時のことだ。
ちょうど寒い季節、列車内では膝がとても寒く感じていた。
亡き母へプレゼントしたショールだったが、母は2~3度位は身につけただろうか?
今は形見となってしまったが、まだ新しい大巾のロングショールを膝にかけていた。
目的の駅で下車したあと
「あれ!ショールがない!」気ずいた時はもう遅かった!
列車は目の前をすーっと通過していった。
慌てて駅乗務員室にかけこみ、忘れものありの届けを受け付けてもらった
多分降りるときに、膝からすべり落ちたのに気がつかなかったようだ。
あちこちの駅を探していただいたが、とうとう出てこなかった。
終点の駅まで、ほんのわずかの時間だったのに、薄紫色のショールは
いったい誰の手に?
再び、わたしの元にもどることはなかった。
こんな思いがあったから・・・
はたして眼鏡は、無事に落とし主に戻る日が来るのだろうか。