眼 振


テレビを見ていて
ソファから立ちあがった瞬間
フロアーが左に傾いている
目のまえの壁を見ても 天井を見ても 左に傾いている・・・ゆらゆら ゆらゆら
「あ~ 目がまわるぅ・・・」
夫があわてた
「杏子はそれがあるけん 心配たいね 貧血たい

はよ 横にならんね」と腕を支えた
ベットにフラフラと体をあづけた
横向きのまま体を沈めた
枕がづれている
直そうとしてわづかに頭を上げようとした
できなかった
まるで船が左に傾いて沈んでゆくように・・・
目をつぶった
ねむればよくなるだろう・・・
・・・どれくらい眠ったのだろうか ふっと目が覚めた
家の中は しーんとしている
時計にゆっくりと目をやる
21時 あれから 2時間は眠っていたことになる・・・
まだ少し ゆらゆらしてはいるが ずいぶんと楽になっていた
そうだ足を高くしてみようと 手もとの毛布を丸めて足元にずらした
そしてまた 眠りの中に・・・
以前にもあった”眼振”の症状だった
この夏 もう2度目だ
最近ちょっと がんばりすぎたかなぁ・・・
と思い返してみる
暑かったしねぇと自分に言い聞かせている
目がさめた 窓辺が明るい
そっと立ってみた
もうフラフラはしない よかった・・・
明日は、病院へいってみよう・・・
窓をすこしあけてみる
はげしく せみの声がとびこんできた
もう、夏もあとすこしね・・・
明日は 立秋・・・
