むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ナズナ:薺(意外な生活力)

2017-04-07 19:05:34 | 植物観察記録

桜守佐野藤右衛門さんの講話を、嵯峨野にある「植藤造園」で拝聴した後(むかごの高槻4月5日記事)
広沢の池から嵯峨野の田畑の道を大覚寺へ向かって歩いていると、畑一面見事に生い茂ったナズナ:薺(アブラナ科ナズナ属)が花をつけていました。
耕作地やその周辺でひっそり花をつけるナズナを芭蕉は「よく見れば薺花咲く垣根かな」と詠い、家などの荒れ果てた様をナズナの別名であるぺんぺん草が生えると形容するなど、概してひっそりとした、あるいは、荒廃したなどのたとえに使われるナズナも、ここ嵯峨野の休耕畑では、すさまじい生活力を見せていました。
このように茂っているのに、きれいな畝の形が残ったままなのは、休耕といってもこの冬だけだったと思われます。さすれば、1株につく種子は2千~4千粒もあるので、これが地下で眠るシードバンクとなって、たまたま肥沃な休耕地となったので一斉に発芽成長したものとおもわれます。
もともとナズナは、世界の温帯から暖帯に分布し、各地の道端や田畑にふつうに見られる多年草で、日本へは有史以前に大陸から渡ってきた史前帰化植物と考えられています。
和名のナズナは、かわいいので撫で菜、あるいは葉が地面に平たくなずむからなずむな、からなどの諸説があります。また別名のペンペングサ、シャミセングサ、バチグサ、ジジノキンチャク、学名の小種名羊飼いの財布などは3角形の果実の形からきているとされ、また多くの実をつけた果穂が風に揺れて音がすると連想する別名も沢山あります。
また、春の七草のうちで、現在の標準和名として残っているのはセリとこのナズナだけに過ぎません。