むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

オニシバリ:鬼縛り(葉が落ちて残る果実)      

2015-06-25 14:55:44 | 植物観察記録
植物園にオニシバリ:鬼縛り(ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属)が赤い実をつけていました。
福島県以南の本州、四国、九州の山林に生えるジンチョウゲ近縁の低木で、高さは1m前後、直立してあまり分枝しません。樹皮が強く鬼をも縛るというのでこの名があります。
また枝先に集まって互生する長さ5~10cmの倒披針形の葉が秋に出て夏に落ちるのでナツボウズ:夏坊主の別名があります。
雌雄異株で4月ごろ枝の上部の葉脇に黄緑色の花が群がって咲きます(06年3月30日記事)。花弁がなく萼が筒状で大きく4裂し、雌花は雄花より小さくなっています。
果実は楕円形の液果で赤く熟し、辛くて有毒、夏の終わりに葉のない枝に新芽、つぼみ、赤い実が共存して独特の景色を作ります。
先年礼文島でよく似た同属のナニワズ:難波津(別名エゾナツボウズ)の花を見たことがあります。(写真下)

ナニワズ(礼文島にて)
こちらは本州新潟県以北、北海道、千島、サハリンに分布する落葉低木で、まばらに太い枝を分枝します。雌雄異株で、花は春、黄色花が枝先に集まってつきます。葉がオニシバリより大きいといいますが、見ただけでの区別は困難で、生育地で判断せざるを得ないようです。
礼文島でこの花をナニワズと教えてもらったとき、“難波津”と聞き、こんなところにある木がなぜ大阪に関係するような名前がついているのかと怪訝に思いましたが、調べてみると、この名はオニシバリに対する長野県の方言で、北海道で長野県人が本植物をこのように呼んだことに始まるという話があるほか、オニシバリの別名であるナツボウズ(夏坊主)が転訛してナニワズとなった説(深津正)などがあります。