へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

布川先生のダンナさん

2015-11-15 21:41:15 | へちま細太郎

こんばんは
副住職だ。

先日、くそじじいがギックリ腰になって藤川家の病院に入院した。
じじいのくせに、ガキを高い高いしたらなったんだと。
乳児相手に何やらかしてんだ。
で、担当は俺の族仲間の布川だ。当時のこの野郎の髪形はほうきでな、例えていうなら“るろ剣”の十本刀の張だ。
それが今はさらっさらの爽やか好青年オヤジに変化した。
女好きでだいぶ今の嫁さんに苦労かけたらしいが、一念発起して医者になりやがった。
俺が僧侶であいつが医者って、どんな族の集まりだったんだよ。そういえば、建築家もいたわ。
で、ナースや女性の患者にモテモテなんだが、野郎の前歴を知ったらどうなんだかね。
俺が、待合室を抜けようとしたら、どっかのクソガキが暴れている。親はどうかとみれば、二人揃ってスマホだよ。
日曜日だから診療はないが、急患もくる。だれが病気なんだか知らんが、ガキがベンチで飛んだり跳ねたりはダメだ。
受付も見ないふりを決め込んでいる。
これが、うちの一族の経営する病院か?と思ったら、ガキをしめたあとで受付を怒鳴ってやろうと、ガキのそばにいきかけたら、案の定ガキはベンチの背もたれを越えて後ろに落下。途端にぎえっと悲鳴が聞こえてきた。
次の瞬間、
「クソガキがっ
と怒声が…。
「病院で暴れるったあ、いい根性してんなっ
げっ、ベンチの向こう側から現れたのは布川だった。
いかにも寝てましたって顔だ。
「あ?親はどこだ、てめぇ」
スマホ夫婦は我が子が落ちたのも気づかなかったが、布川の怒声に何事かと振り返った。その瞬間、
「レオン」
と叫び、クビねっこをつかまれ宙づりにされた我が子に近寄った。
しかし…
「レオンだあ?ふざけたネーミングだな、ガキはペットじゃねえ」
と、そのまんま子供を慌てる親めがけて投げつけた。
母親が何やら喚いていたが、
「あなたの息子が何をしたか、拙僧から説明してさしあげようか」
と、僧服の自分がぬっと現れたもんだから、二人ともひええと悲鳴をあげて腰をぬかしてしまった。
「親なら、しっかり子供の行動を見ていないといけないな」
と、やにわに数珠で経を唱えてやると、子供を抱えて逃げ出してしまった。
「あれ、会計は?」
と、受付を見れば、
「済んでます」
と済ました答が返ってきた。
「あ?」
俺と布川が同時に凄んだ声を出したら、受付は首をすくめてしまった。
「てめぇなんざ、クビだ
俺の一喝に受付は奥へ泣きながらひっこんでしまった。
これは、やばかったかね?
「いいんじゃないですかあ」
と、布川はとぼけた声を出して、首をボキボキさせた。
う~む。
コイツ、ほんとに医者やれてんのか~?



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