へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

みかんは、焼くとうまいんだ

2014-12-09 16:01:56 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

「みかんは、焼いて食うとうまい」
スクールバス待ちをする間、久しぶりに大学の温室に遊びに行った。
そしたら、院生の(仮)嵐軍団1号さんの冒頭のセリフ。
「農協の木村(旧姓依田)さんがみかん持ってきてくれてね、で、その代わりに、奥の温室で育てている“ふくれみかん”を大量にもぎとっていきやがった」
ふくれみかんっていうのは、福来って書くんだけど、そんなに知られた品種じゃない。限られた地域でしかみられないみかんなんだ。中島教授が、茨城までいって盗んで…いや、いくつか食べたみかんに入っていた種から大切に育てたものらしい。だから、ナイショのものなんだけど…。
どこからか嗅ぎつけた木村さん(旧姓依田)は、毎年ぶんどっていくんだとか。
「一応、ムコの立場としては、女房の家族に食べさせてあげないとさあ」
縁起ものだしね、といいつつ、さらにりんごだの、なしの新興・にっこりも盗んでいく。
毎年、果物がみのるころは、木村(旧姓依田)さんとのバトルになるらしい。
「藤川家のコメの品種の“田吾作”米の種もみを融通してあげてんのに、何だよなあ」
(仮)嵐軍団1号さんは、そういってドラム缶の横に空いた窓から中をひっかきまわして、
「もうすぐイモ焼けっから待ってろ」
と、入口付近に置いてあったみかんを取り出した。
「ほれ、くうか?みかん、ほどよく皮が焦げてっと」
ぼくは、焼いたみかんは嫌いじゃないので、ありがたくもらっておいた。
「え~、焼いたみかん、食べるの?」
はるみは、微妙な表情でみかんを受け取ったけど、
「おまえね、栄養に行くんだろ、だったら、オレンジソースってあるのくらいわかるだろう」
(仮)嵐軍団1号さんは、はるみに金ばさみでみかんを差し出した。
「勉強しろよ、少しは、おまえのことは、小学校でも有名だったろうが」
「え~?美都二小だったんですか?」
「いとこがおまえたちと同級生だったんだよ」
なんか、嫌な予感…。
「え~、誰だろ」
言うな、嵐1号さん。。。言わないでくれ、嫌な予感しかない。。。
「・・・きょうすけって知っている」
ちらっとはるみの目がこちらを見た。
「知らねえ」
ぼくは、みかんをむいて皮をドラム缶の中に放り込み、ほどよく甘く温かいみかんを口の中にほおり込んだ。
「ん?」
(仮)嵐軍団1号さんは、ぼくを見上げた。
今頃になって、何だよ、くそ。。。






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