へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

たかのり、医学部受験を志す

2016-01-30 12:03:51 | へちま細太郎

新婚早々、妻にベッドから蹴りだされた哀れな久保田です。
毎日納豆じゃ、元気出ません。
せめて、ロイヤルゼリーにして、お願い

大学の入試の日の今日、特別出勤の俺。それを見計らったように、担任したうちのクラスの問題児がやってきた。
浪人中で、受験だっつ~のに学校に日参してくる細太郎。毎日毎日、片山教授のところで勉強するのはいいんだが、俺まで呼び出すなっつ~の。変人の片山教授のそばで過ごすこっちの身にもなってくれ。
なかなか国立の志望校が定まらない細太郎と違って、とつぜんたかのりが、
「医学部受ける。つくばった大学の医学部ならなんとかなりそうだ」
と、言い出した。
「ああ?気は確かか?」
思わず聞いてしまったが、本人はいたってまじめで、
「高瀬舟を読んで、決意した」
と、森鴎外が聞いたら感動しそうな言葉を述べたじゃないか。
「よし、いくつかの医学部をピックアップして…」
「いや、つくばった大学一本でいきます」
やけに強気なんだが、ダイジョウブカ?
「親に2浪は許さない、と言われましたが、医学部なら徹底的に勉強しろと言われました」
「あ~そ」
悲壮感を漂わすたかのりの向こうで、片山教授とネットの心理テストをして遊んでいる細太郎は、受験を放棄したとしか思えない。
「どうすんだ?おまえは」
「あ~?」
細太郎に声をかけてみれば、気のない返事だ。東山先生いわく、
「ここ数日、こうやねん、なんかあったんとちゃう?」
らしい。
「なんかあったのか?」
「ない」
即答かよ。
もう、2浪決定だな、こいつ。
俺はまた来年もこいつの受験指導かよ、と大きくため息をついたのであった。